第1267話 祝福による加護を授かったみたいでした



 レオに聞いた、加護による魔力的な繋がりと従魔契約の関係だけど。

 祝福による加護は、他の魔力と干渉する事はないのだとか……シルバーフェンリルの魔力は、何かしら特殊な性質を持っているのか?

 ともあれ、レオ曰く……離れている時に何かあったら、察知して駆け付けるくらい? なんてレオが言っていたから、もしもの時に助けを呼びやすいと考えておけば良さそうだ。

 それにしても……離れていてピンチに駆け付けるって、ジョセフィーヌさんの話に繋がる気がするな。


 戦争中、懇意にしていたシルバーフェンリルが危ない時に駆け付けたとかなんとか。

 まぁ、あちらもシルバーフェンリルとはちゃんと意思疎通ができていたらしいから、同じ祝福がされていても不思議じゃないけど。


「それと、ついでって言っていたフェンリルの祝福の方は、何かあるのか? レオと同じく、もし何かあったら察知できるとか」

「ワウワウ。ガウ、ワフワフ……」


 ずっと、俺とクレアにお腹を撫でられて気持ち良さそうにしつつ、レオが教えてくれる。

 フェンリルの加護の方には、レオのとは違ってそんな効果はないらしい。

 ただ、本当に微々たる魔力の繋がりができてはいるとか。


 それでフェンリルの祝福は、本来群れのリーダーに対して行う事らしく、フェンリル達が俺とクレアに従う……というような儀式に近いのだとか。

 こちらは、お祝いをしようとしたレオがフェリーから聞いたと。


「って事は俺とクレアは、フェンリル達のリーダーになったって?」

「タクミさんならともかく、私もですか?」


 いやクレア、俺はともかくって……。

 俺はフェンリル達のリーダ―になるつもりはないんだが。


「ワフワウ。ワーフワフ……」

「ふむふむ……」


 俺とクレアの問いに、完全にリラックスしきってへそ天状態でだらけているレオが首を振る……締まらない格好だけど、深刻な話というわけでもないからいいか。

 フェンリル達に対しては、あくまで群れのリーダーはフェリーであり、俺達がリーダーになったというわけではないらしい。

 ただ俺達は敵じゃなく味方で、特別理不尽な事でない限りはその指示に従うという意思表示みたいなものなんだと。

 あと、他の群れのフェンリルと出会った時、フェンリル全体の種族として敵ではないと判断され、ほぼに襲われなくなるんだとか……まぁ、こちらから攻撃をしたりなど、敵対的な行動をしたら話は別らしいが。


 微妙にほぼというのが気になったけど、それはフェンリルが興奮状態でそういった繋がりなどの気配がわからなければ、その限りではないという事だとか。

 なんにせよ、初めて会うフェンリルでも、レオがいなくともそれなりに仲良くなれそうなのは、悪くないな。


「シルバーフェンリルとフェンリルの祝福……それに伴う加護。本当に私が受けていいのでしょうか?」


 祝福に関して聞き終えたクレアは、真剣な表情になってレオに聞く。

 ……表情は真剣だけど、お腹はまだ撫でているしレオは気持ち良さそうだしで、中々シュールな光景だなぁ。


「ワフワフ。ワフー、ワフ!」

「気にするなってレオは言っているみたいだ。まぁ、余計な事も言っていたけど、レオがしたかった事だからありがたく受け取っておく、でいいんじゃないかな?」

「余計な事ですか?」

「それは気にしないでおこう、うん」

「そうですか?……わかりました」


 誤魔化す俺に、少し戸惑いながらも納得するクレア。

 番になって、子供をとかごにょごにょとか……まぁレオも獣類方面の考え方なんだなぁと、妙に納得する事を言われただけだ。

 さすがに俺の口からクレアに言うのは憚られる。

 それらの理由も含めて、大事な体だから……みたいな事も言っていたのは、伝えて良かったかもしれないけど。


「レオ様、本当にありがとうございます」

「俺からも、ありがとうなレオ」

「ワウワウ~!」


 クレアと俺から改めて感謝をし、お腹を撫でてやると嬉しそうな鳴き声を上げるレオ。

 レオから言われた事で妙に意識してしまい、目がクレアの体に向いてしまうのを意識を総動員して逸らしていたのは、ここだけの話だ。

 何度目かわからないけど、顔が熱い……。


 その後、レオ達の遠吠えに驚き、セバスチャンさんやアルフレットさん、さらにライラさんや玄関ホールで待っていたミリナちゃんなど、複数の使用人さんと護衛さん達に事情を説明。

 話を終えてからは、レオが満足するまでお腹を撫でてやってから、俺とクレアからのお礼としてリーザと一緒にフェンリル達を撫でる事に。

 俺が順番にフェンリルを撫でるのを、興味深そうに眺めている……見世物じゃないんだけどなぁ。


「んー、ここかな?」

「ガァゥ~」

「あ、気持ち良さそうだよパパ!」

「フェンリルによって、撫でられる場所の好みがあるのですね」


 順番に撫でるフェンリルにも、撫でて欲しい場所の違いがある。

 それらを探って撫でてやると、必ず気持ち良さそうな鳴き声を漏らすんだけど、リーザの通訳もあって発見がしやすい。

 アルフレットさんは、俺の後ろから感心するように呟いていた。


「ふふふ、目を細めて……本当に気持ち良さそうです」

「タクミさんは、レオ様やフェンリル達が撫でて欲しい場所がわかるんですねー、凄いです!」

「探りながら反応を見ているだけだから、最初からわかるわけじゃないんだけどね」


 俺が探り当てた場所をクレアが撫でて微笑み、騒ぎを聞きつけて興味をそそられてやってきたティルラちゃんは、尊敬するような目を俺に向けた。

 フェンリルじゃないけど、ある程度犬や猫を撫で慣れているからなだけで、見てすぐ撫でて欲しい場所がわかるわけじゃない。

 マルチーズだった頃のレオと一緒にいた関係で、ご近所さんの犬や猫とも触れ合った経験があるってだけだ。


 まぁ、嫌がられるのは俺としても不本意なので、最初から強めに撫でないのは当然ながら、よく表情を見て好きな場所を探るようにしているうちに、できるようになったんだと思う。

 それでも、絶対に撫でられたくないのもいるし、あった事のある犬や猫が全部懐いてくれたわけじゃないけど。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る