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第1262話 誰かが乱入するのはお約束のようでした
第1262話 誰かが乱入するのはお約束のようでした
「ごめんごめん、あはは、あははははは!」
「むぅ……」
謝りつつも、まだ笑う俺にむくれるクレア。
真剣な雰囲気をぶち壊してしまった俺が考えるのもあれだけど、どうしよう……むくれて頬を膨らませているクレアをつついてみたい衝動に駆られる。
いや、さすがにここでそれをやったら、嫌われてしまうまで行かなくとも、怒らせてしまうだろうな。
「んっ……! すぅ……ふぅ……」
衝動に負けないよう気合を入れて、深呼吸。
クレアから漂う、俺には決して発せない甘い香りが鼻孔をくすぐられるが、それは意識しないように気を付けた。
「お互いが同じ事を考えた俺とクレアは、相性がいいのかもしれないね」
「相性ですか?」
「うん。お互いがお互いに相応しくなるように、頑張る。どうすればいいのか……まぁ、実のところ俺にもわかっていないんだけど。でも、お互い一緒に頑張れそう、と考えれば相性はいいと感じないかな?」
「それはまぁ……確かに……」
同じ考えや相性と聞いて、そちらに意識が向かったおかげでむくれるのを止めるクレア。
そんなクレアに、どう頑張るかは応相談として……お互いがお互いに相応しくなれるよう、頑張れるという思いを伝えると、頷いてくれた。
俺がクレアに、クレアが俺に、どうしたら相応しいと思えるのか、今でも既に相応しく見えるのかもしれないけど、それに甘えるだけではない。
ほら、なんとなく相性がいい感じがして来る……ちょっと、無理矢理かもしれないけども。
「じゃあ、私とタクミさんは相性がいいのですね……ふふふ」
強引だったかもしれないけど、クレアは喜んでくれているようだ。
俯いて俺の胸におでこを押し付けつつ、忍び笑いを漏らしている……聞こえないようになんだろうけど、距離が近いから聞こえているんだよなぁ。
まぁ、気付かないフリをするのが一番か。
「パパー! 朝食できてるってー、一緒に食べ……んにゃ?」
突然、部屋の扉が相手リーザが飛び込んできた。
朝の支度をしているうちに、目が覚めたようで今日も元気いっぱいだな……って!
「リ、リーザ!?」
「リーザちゃん!?」
「ワフゥ……」
抱き合っている俺とクレアを見て、首を傾げるリーザ。
驚きつつ、ババッと音がするくらいの勢いでお互い離れる俺とクレア……名残惜しいなんて、今は考えないでおこう。
リーザの後からライラさんと一緒に、のっそりと部屋に入ってきたレオは俺とクレアを順番に見て溜め息を吐いた。
くっ、レオに呆れられている気がする……!
「申し訳ありません、タクミ様、クレアお嬢様。朝食の支度ができたと報せを受けたリーザ様が、タクミ様を呼びに行くと駆け出しまして」
「いえ、ライラさんが悪いわけじゃないですから……」
「そうよ。もう少しとは思ってしまうけれど……仕方ないわ」
俺達の邪魔をしたと頭を下げるライラさん……悪いのはずっと抱き合ったままの俺達で、リーザもそうだけどライラさんも悪くはない。
朝食とは関係なく、朝の支度が終わったらリーザ達が戻ってくるのはわかっていたのに、クレアが言っているように俺も離れがたかったのが原因だ。
話し込んでしまったのもあるけど……いかんな、昨日の背中から抱き締めてしまった事といい、俺自身の理性のような何かが衝動に対して歯止めがきかなくなってきている気がする。
気を付けよう。
「んにゃ……パパ、私も抱っこ!」
「おっと! 抱っこしていたわけじゃないんだけど……まぁいいか」
俺とクレアが抱き合っていたのを目撃したリーザは、何を勘違いしたのか俺に抱き着いて来て抱っこをせがむ。
まぁ、何が違うのかを説明するのは恥ずかしいし、とりあえず場を誤魔化す事はできそうだから、受け止めたリーザを両手で抱きかかえた。
……女の子だから直接指摘しないけど、出会った時より重くなっている気がする。
これも成長か……でも、昨日寝ている状態のリーザをずっと抱きかかえていたライラさん、意外と力持ちなのかもしれない。
「んんっ! リーザちゃん、お腹空いたわね。一緒に朝食に行きましょう?」
「うん! パパやママも、ライラお姉さんもー!」
「ワフ!」
「ははは、皆で一緒だ。ライラさん、行きましょうか」
「はい、畏まりました」
咳払いをして、気持ちを入れ替えたクレアが問いかけて、元気よく答えるリーザ。
レオもお腹が空いているんだろう、尻尾を振ってリーザに答えた。
色々とうやむやになったような気はするけど、クレアは多分昨日の事が夢じゃないと実感して、確信してくれただろうし、もう大丈夫だろう。
あとは、さっきも二人でお互い決意したように、相応しくなるように努力する事にしよう。
それから、クレアをできる限り寂しがらせたりしないよう、頑張らないとな。
これは俺が心の中で決めた自分自身への約束だ……。
「ふふ、ふふふふ……」
「タクミさん、姉様が変です」
「……ティルラちゃん、直球だね」
裏庭で、ラーレやフェリー達と一緒に食べる朝食中、クレアは一口料理を口に入れては笑みを漏らす……というより、ずっとニッコニコの眩しいくらいの笑顔で、笑い声が勝手に漏れているといった感じだ。
それを見たティルラちゃんの反応は訝し気……を通り越して、嫌がっているような表情。
言葉も合わせて、俺は苦笑で返すしかない。
「そういえば昨日の夜、ティルラちゃんは庭園には来てなかったっけ……」
寝る前の鍛錬がある影響で就寝する時間的には少しだけ遅いけど、基本的に健康優良児という言葉が当てはまるティルラちゃん。
リーザも寝ていたし、かなり遅い時間だったからティルラちゃんが寝ていて気付かなくても当然か。
「昨日の夜は、鍛錬が終わった後すぐに寝ました。でも、庭園ですか……? 私が寝ているうちに姉様と遊んでいたとか、ですか?」
「遊んでいた……わけじゃないんだけどね」
一世一代は少し大袈裟かもしれないけど、それくらいの意気込みで挑んだクレアへの告白。
遊びと言われたら、少し昨日の俺が不憫に感じる……ティルラちゃんは何があったのか知らないから、仕方ないけど。
「遊びじゃなくて、昨日庭園でクレアと話をしていたんだ。ほら、ティルラちゃんと話した時のようにね? その時、セバスチャンさんとか屋敷の人達のほとんどが集まっちゃって……」
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