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第1146話 ウルフの怪我を治療しました
第1146話 ウルフの怪我を治療しました
「いえ、火傷もそうなのですが、何か鋭い物に刺された? 貫かれた? そのような跡が見られます」
「……本当だ。何かを浅くだけど突き刺して、その後に焼いたとか……ですか?」
「わかりません。ですがおそらく、魔法を使っての攻撃ではないかと……傷口が焼かれているので、出血がさほど多くないのではないでしょうか」
「そうですか……」
ヨハンナさんに言われた通り、よく見てみると刺されたような跡があった。
あばら骨の隙間に何かが差し込まれたような……? 火傷は見た目に酷いが、傷としてはそちらの方が酷いか。
血が出ているのはそこからって事だろう。
ヨハンナさんの見立て通りなら、火傷のおかげで出血量が少ないのが不幸中の幸いってところか……こんな酷い怪我で、幸いも何もないが。
「とにかく治療を。――少し沁みて痛いかもしれないけど、すぐに済むからな?」
「畏まりました」
いつまでも酷い怪我を見ていられない。
ヨハンナさんにロエを使うようにお願いしつつ、ウルフを押さえながら優しく声を掛ける。
痛いのは少しだけだから、今だけだから、我慢してくれ!
「ギャンッ! キューン、クゥーン……」
ロエが傷口に触れた瞬間、ウルフの悲痛な叫び声。
暴れなかったのはレオの注意が効いているからだろう。
けど、なんども甲高い助けを求めるような声を出しているウルフは見ていられない……でも、目をそらしちゃいけないと、グッとウルフが暴れないよう押さえる手に力を込めながら、治療の様子を見守る。
「キュー……バウ?」
数秒ほどで痛みがなくなったのか、不思議そうな声を上げるウルフ。
よしよし、よく我慢したな。
「……傷口も塞がれ、完全に治ったようです。もう痛みもないでしょう」
「良かった……はぁ……」
「もう、痛くないの?」
「みたいよ、リーザちゃん。――ヨハンナ、ご苦労様」
ロエを離したヨハンナさんの言葉通り、傷口は塞がり、もう血も出ていないし火傷の跡もなくなっていた。
とはいえ、黒くチリヂリになった毛などは元通りとはいかず、そこだけ毛が短くなってしまっているけど……元気になれば直に元に戻るだろう。
俺が安心して息を吐き、リーザの心配する問いかけに頷いたクレアも、ヨハンナさんを労いながらホッとした様子だ。
「ワフゥ……」
「良かったです、本当に良かったです」
「キャゥ」
レオも一安心と息を漏らし、真剣に様子を見守っていたティルラちゃんも、ギュッと抱き締められているシェリーも、安心したみたいだ。
視界の隅で、エルミーネさんもホッと息を吐いているのが見えた。
レオやシェリーは自分達の経験からだろうけど、俺の周囲にいる人達はウルフに同情的で優しい人達ばかりだな。
身近に犬……じゃない、フェンリル達などの動物的な存在が多いからかもしれない、魔物ではあるけど。
「お待たせしました。お水と食べ物を……何かありましたか、タクミ様?」
「ただならぬ雰囲気……の後のような気配を感じますな?」
ウルフの治療を終えたちょうどいいタイミングで、食べ物を買いに行っていたライラさんとニコラさんが戻ってきてすぐ、俺達の雰囲気から何かがあったと察した様子。
両手いっぱいに肉類を持ったライラさんに、一抱え程の樽になみなみと入っている水をニコラさんが持っている……けど、ちょっとというかかなり多くない?
ウルフよりもかなり大きなレオが食べる、一食分くらいあるけど……どれだけ買って来るか、とかは言っていなかったし痩せている分いっぱい食べて欲しいけど。
「ライラさん、ニコラさん。ありがとうございます。実は……」
食べ物などを受け取り、ウルフに食べてもらうよう勧めつつ離れていた二人に、怪我をしていた事などの状況を説明した。
ウルフの方は、最初俺達が差し出した食べ物を本当に食べてもいいのか、躊躇していたけど、空腹には勝てなかったのかすぐに勢いよく食べ始める。
ティルラちゃんとリーザが、特にお皿に乗った食べ物をウルフにあげるのに熱心だ……ここに至って、ようやくティルラちゃんがいつもの様子に戻った感じだな。
さっきまでの真剣な様子はなんだったのか、いつ教えてくれるだろうか?
クレアやエルミーネさんは、ウルフがガツガツと食べる様子をニコニコしながら見ていて、レオとシェリーは涎を……。
って、レオとシェリーはさっき食べたばかりだろうに。
まぁ予想通りウルフには多かったようなので、残った物をレオとシェリーが一緒に食べた……よく食べるなぁ。
「……お腹いっぱいになったか?」
「バウ!」
怪我が治ったおかげか、最初に見た時と違って大分元気になったウルフは、俺の問いかけに勢いよく尻尾を振りながら吠えて答えた。
水も食べ物も、予想以上に食べていたからな……かなり飢えていたんだろう。
しかし……。
「ハッハッハッハッハッ! バウバウ!」
「ははは、よしよし……レオは、後で撫でてやるから」
「ワゥ……」
俺が怪我を治したとわかっているのか、随分懐かれたようで尻尾を全力で振って舌を出しながら、体を擦り付けられたりしている。
レオがやきもちを焼いて、不満そうな表情をしていたのでウルフを撫でながらも、そちらに声を掛けるのは忘れない。
放っておくと、ウルフを威嚇しそうだったからな。
「それにしても、こんな所でウルフが怪我をして放っておかれる、ですか……ここは人通りが少ない通りですから、レオ様が発見するまで誰も通らなかった可能性はあります」
ウルフやレオの相手をしている俺の後ろで、ライラさんがクレアやニコラさんと話しているのが聞こえた。
少なくとも俺達がここに来てからは、誰も人が通っていないのでライラさんの言う人通りが少ないというのはわかる。
大きな通りから建物を挟んですぐ隣だけど、そういう場所こそ人があまり来ないって事も往々にしてあるからな。
「そうよね、こうしていてもまだ誰も通りがかっていないわ。でも、怪我をして他から来たというよりは、ここで怪我をしたという感じね。ニコラ、衛兵達に動きは?」
クレアはライラさんに頷き、推測をしながらニコラさんに問いかけた――。
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