第989話 ハインさんとの相談を終えました



 ベッドなど、大きめの家具などはハインさんの店で扱っていない物もあったりするので、別の店から仕入れてくれるとの事だ。

 ただ、扱っている店をそれぞれ回って行くのは手間がかかるため、今回のように多くを注文する際は何処かへ頼む事がおおいのだとか。

 頼まれた人……今回はハインさんが、商人仲間などの伝手を使って一括で仕入れ、それを俺達に販売するという方法だ。



 ちなみに大型の家具などを扱っていない理由は、単純に大きいのでお店に展示できないかららしい。

 カレスさんのお店、雑貨屋のイメージらしく所狭しと商品が並んでいるから、大きな物を置くとなると改装する事になりそうだしな。

 食器を入れるための物も必要だし、服吊るして収めるラックのような物や椅子と机、女性用に鏡付きの鏡台……ドレッサー等々だ。


 カーテンや布製の物はそれなりに扱っているようだけど、それは個人の趣味による部分なので、少数を買っておいて雇った際に選んでもらい、注文する事にした。

 住み込みで雇う事になるから、家具などをこちらが用意するのは当然だが、細かい部分を選ばせるのは珍しいと言われたけど。

 まぁ、本来は住んでいる本人が、自分で給金をやりくりして少しずつ整えたりする物らしい。

 住み心地は人それぞれだし、仕事への意欲にも繋がると思うからと言っておいた。


「一部を除いて、納品はランジ村にお願いします。ですよね、セバスチャンさん?」

「はい。ランジ村で作っている家で使うものですので」

「畏まりました。見積もりなどは、タクミ様に届けるようにし、品物はランジ村に運んで納品いたします。時期についてですが……」


 大きな家具もそうだけど、時計などを大量に屋敷に持って来られても、使うのはランジ村なので運び込むのに手間がかかってしまう。

 保管しておくのも場所を取るしな。

 なので、納品時期を相談して、選んでもらうカーテンなどの少なく場所を取らない物以外、ランジ村へ直接届けてもらうようにお願いする。

 現在建設中の家だけど、仕入れなどの期間を考えれば、家具を入れられるくらいになっている頃の予定となった。


「助かったよクレア。俺だけじゃさすがに、女性に必要な物とかわからなかったから」

「いえ……」


 相談も終わり、店員さんに淹れてもらったお茶を飲みながら、クレアにお礼。

 女性用のドレッサーや、服を収めるためのラックの案は、クレアが出したものだ。

 男の俺は、適当に畳んで服をしまえればいいと考えていたんだけど、一部の服に必要だし女性は気にする……と言われた。


 スーツとかでもそうだけど、吊るして置かないと皺になったりするからなぁ。

 ドレッサーなんかは、男じゃ出づらい家具だ……俺なんて、鏡があればそれで十分と考えていたしな。


「タクミ様、クレアお嬢様。ただいま戻りました」

「あぁ、ライラさん」

「お帰りなさい、ライラ。ティルラやリーザちゃんが、欲しがるものはあった?」


 少しだけのんびりしていると、ティルラちゃんとリーザについて行っていたライラさんが、部屋に戻った。

 後ろには、店員さんと一緒に、買った物だろう袋を抱えた二人が見える。


「あるにはあったのですが……いえ、見てもらった方が早いでしょう。ティルラお嬢様、リーザ様、皆様に買った物を見てもらいましょう?」

「はい!」

「うん!」


 クレアさんの問いかけに、少しだけ困った表情をするライラさん。

 何か変な物でも欲しがったかな? と思っていると、二人を促した。

 欲しい物が買えたからだろう、元気よく返事をした二人が、それぞれ持っていた袋をテーブルに置いて、中を開く。


「私は、これを買いました!」

「へぇ~、小物入れ……宝石箱かな? 狼があしらってある意匠かぁ、ティルラちゃんらしいね」


 最初はティルラちゃんが買った物。

 木製で簡素ではあるけど、丈夫に作られていて蓋の部分と正面に、狼の意匠がある。

 多分、レオやシェリー、フェンリル達を思い浮かべて買ったのだろう。


「キャスケットですね。妹ながら、女の子の趣味と言えるかは疑問ですけど……私もティルラと同じ物を選びそうですね」

「ははは、最近はウルフをかたどった物が人気でしてな。様々な物にウルフなどに見立てた商品が出ております」


 狼……ウルフの意匠は勇ましさを表しているようにも見え、細かな装飾がない簡素な物なので、確かに女の子向けっぽくはない。

 ハインさんの店でも、ウルフ関係が人気らしいのは、レオの影響によるものだろうなぁ……。


「前に、タクミさんからもらった、レオ様のネックレスを入れようかと思ったんです。それから、これもです!」

「ウルフの宝石箱に、ウルフのネックレスか。確かに丁度いいね。それからこれは……鳥?」


 宝石箱だから、アクセサリーを入れるにはちょうどいいし、ウルフの宝石箱からウルフのネックレスというのも面白い。

 次にティルラちゃんが出したのは、高さ二十センチくらいになる、木彫りの鳥だった。


「ラーレに似ていました!」

「まぁ、似ていると言えばにているのかな?」

「ティルラの趣味は、レオ様やラーレに寄っているのね……はぁ」


 木彫りだから茶色だし、鳥の形は確かにラーレに似ているので、ティルラちゃんが欲しがるのもよくわかる。

 クレアは溜め息を吐いているし、確かに女の子っぽくないけど、ティルラちゃんらしくていいと思う。


「次は、リーザちゃんの番ですよ?」

「うん! えっとね、私は……」

「……色々と買ったんだな」

「布に、石? それから……また布、ですね」


 ティルラちゃんが買った物のお披露目が終わったようで、リーザを促す。

 元気よく頷いて、テーブルに置いた袋から次々と出して見せるリーザ。

 大きめの布……ちょっと、縫い目が細かいくらいの無地だ。

 他には、二つで一組になった石が複数、さらに細長くて毛糸のように棒に巻かれた白い布……。


 欲しい物を買っていいとは言ったけど、用途がわからない物ばかりだ。

 女の子らしい趣味に偏らないのは、なんとなく予想はしていたけどこれは……。


「えっとね、この布があれば、服を汚さなくてもお水が飲めるんだよ!」

「水を? 服を汚さないって、どういう事だ?」


 水をこぼした時に備えて、前掛けみたいに使うのだろうか?

 


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