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第972話 急遽ラクトスへ向かう事になりました
第972話 急遽ラクトスへ向かう事になりました
セバスチャンさんも昨日遊んでいた時の事を思い出して、頷いている。
ティルラちゃんはレオだけでなく、リーザやフェンリル達、ラーレ達とも遊ぶ事が大好きだから、何かしら参加したがるものだと思う。
実際に遊んでいた時は、クレアに投げ方を教えたり他の事に気を取られていて、ティルラちゃんの事まで気が回らなかったから、今思い出してようやく気付いたくらいだけど。
ラーレに乗ってからは、はしゃいでいる様子だったし夕食の時や、レオを風呂に入れる時もおかしな様子は見られなかったから、もしかするとあの時に考えて決めていたのかもしれない。
「とにかく、ティルラちゃんを追いかけて本人から聞くしかなさそうだね」
「はい。ラーレがいるので、滅多な事にはならないと思いますが……」
「レオ様でしたら大丈夫でしょうが、ラーレはラクトスに入った事がないので……騒ぎにはなっていそうですな」
「そのために、今急いで準備しているのでしょう?」
「ほっほ、そうですな」
ここで本人がいないまま考えても仕方ないので、ティルラちゃん本人から聞く事にする。
シェリーやフェリー達のおかげでラクトスへと向かったのはわかったし、とりあえずはそれで十分だろう。
ラクトスの上空を飛ぶ事もなかったはずで、いつも通る時は迂回させていたから、慣れていないラクトスの人達がラーレを見たら騒ぎになっているのは間違いなさそうだ。
早朝に大きな鳥の魔物が、街中に飛んで入って来たら慣れていても驚くだろうし……門から入ってくれれば、多少マシかもしれないけど。
騒ぎになっているのは確定として、屋敷内を使用人さんがバタバタとしていたのは、色んな準備をしているためらしい。
聞いてみると、ティルラちゃんの部屋を調べたり、シェリーと一緒にフェンリル達からもう一度飛んで行った時の事を聞いたり、ラクトスへ急いで行くためだったりだな。
俺が玄関ホールに来た時、ヨハンナさん達とクレアが話していたのも、追いかける人や捜索する人など、屋敷から出る護衛さんについての話だったらしい。
フィリップさんとニコラさんは、予定だと今日明日にでも馬を連れて帰ってくるはずだけど……今はいないからちょっと人手が少ないみたいだけども。
「……すみません、タクミさん、レオ様。フェリー達に人を乗せてもらうよう、頼んでもらえますか?」
「俺から? 多分、クレアが頼んでも乗せてくれると思うけど……食べ物を用意したら、むしろ喜ぶんじゃないかな?」
屋敷からラクトスへ向かう人員を決め、準備が進む中で、クレアから頭を下げられて頼まれる。
でも、俺じゃなくても食べ物を用意したら、フェリー達は喜んで引き受けてくれると思うんだけど……レオ程じゃないが、人を乗せて走るのもそれなりに好きそうだし。
「タクミさんの言う通り、私や屋敷の者達がお願いしても頷いてくれるでしょうけど……フェリー達は今のところ、タクミさんやレオ様の管轄と考えています。というより、タクミさんとレオ様がいて下さるおかげで、おとなしくしてくれているという認識ですから」
「シェリーもいるので、話しはできます。ですが、おとなしく人を乗せて走ってもらえるのは、レオ様という強大な存在がいるから、と。駅馬などで、正式に公爵家と協力してくれるまでは、シルバーフェンリルがいるからとしておいた方が良いでしょう」
「そういうものなんですね。わかりました、断られる事はないと思いますが、とにかくレオを連れていて来ます。――レオ、行こうか」
「ワフ!」
「はい、よろしくお願いします」
「あ、パパ私も行くー! フェリー達にも朝の挨拶する!」
シルバーフェンリルとか、公爵家とか、俺にはわからない周囲への何かがあるのかもしれない。
とにかく、今ここで細かい事を聞いている時間も惜しいので、レオを連れて裏庭へ向かう事にした。
挨拶をしたいらしいリーザも一緒に――。
「準備はいいですか?」
「「「「「はい!」」」」」
「「「「「はっ!」」」」」
「こちらは大丈夫です、タクミさん」
「大丈夫だよ、パパ」
少し後、まだいつもなら起きていないくらいの時間に、屋敷の玄関ホールを出てすぐの場所で、レオに乗って他の皆に声をかけて確認をする。
フェリー達へのお願いは、食べ物を用意する事で承諾してもらった……むしろ尻尾を振って、喜んでいる様子でもあったな。
ティルラちゃんを追ってラクトスへ向かうのは、俺とリーザ、クレアとセバスチャンさんの他に、護衛としてヨハンナさんと屋敷の兵士さん四人、ライラさんと使用人さん四人の、総勢十四人だ。
レオには俺とクレアとリーザで、フェリー達にも分かれて乗っている……さすがに全員は乗せられなかったので馬に乗っている人もいるが、そちらは無理せず後続としてラクトスに向かう事になっている。
これが現状で準備を終え、ひとまず出られる人達だ。
さらに後詰めとして、騒ぎになっていると予想し、それらを収めるためだったり俺達がティルラちゃんを見つけられなかった場合に、捜索を広げるために他の使用人さんや兵士さん達も、馬や馬車で出発する手筈だな。
ちなみに、ラーレと一緒にいる事が多いコッカーやトリースからも、フェリー達と同じように話を聞こうと思ったんだけど、ティルラちゃんが連れて……というよりラーレが足で掴んで行ったらしい。
まぁ、コッカー達は巻き込まれた形なんだろうな、またラーレに空から放り出されていなければいいけど……。
「クレアお嬢様、タクミ様、レオ様。全員の準備が整ったようです」
「わかりました、じゃあラクトスまで行ってティルラちゃんを探しましょう」
「お願いしますね、レオ様?」
「ママ頑張ってー!」
「ワフー!」
皆からの返事と共に、確認をしてくれていたセバスチャンさんが、リルルに乗ってクレアや俺に伝えて頷く。
後ろから聞こえるクレアの声や、リーザの応援を受けて、一鳴きした後先頭を走り出すレオ。
屋敷の門を出て、すぐに馬との距離が離れていくのはさすがだ。
とにかく今は、馬の速度に合わせるのではなく、レオに付いて来られるフェンリル達と一緒に、ラクトスへ行くのが先決。
騒ぎとかもそうだけど、できるだけ早くティルラちゃんを見つけないといけないからな――。
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