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第949話 二日連続ハンバーグでも皆楽しそうでした
第949話 二日連続ハンバーグでも皆楽しそうでした
多くの人やフェンリルが集まっているので、一つの場所で固まって食べるのではなく、それぞれ思い思いの場所で食べている。
その中でシェリーとリーザ、デリアさんとティルラちゃんは俺やクレアとそう離れていない場所で、楽しそうに食べていた。
ラーレも一緒にいるんだけど、フェンリル用に作った大きめのハンバーグがちょっと食べにくかったらしく、ティルラちゃんが解したり小さく切ったりしてお世話していた。
リーザもデリアさんに懐いているようだし、向こうは大丈夫そうだな。
あと……フェンリル達の方は……。
「ガフガフガフ!」
「おぉ……さすがと言うのか、勢いが凄いなぁ」
「グルルゥ!」
「うぉっと! すみません……」
「親方さん、食べている最中に手を出すと食いちぎられますよ?」
「フィリップさん、フェリーはそんな事しませんよ。ですけど、食べている邪魔をするのはいただけません」
「す、すまねぇ……」
「ふむ、やはりパンにハンバーグを挟んで食べると、腹持ちも良さそうです」
「ガウ」
「ガウゥ」
フェルがハンバーグにがっついているのを、感心した様子で見る村の人達。
その隣では、フェリーが食べるハンバーグに手を近付けて、怒られる親方さん。
思わず丁寧に頭を下げて謝る親方さんに、注意するフィリップさんとヨハンナさんだったり、感心しながら食べるニコラさんと、意外にも落ち着いた様子で食べるフェンとリルルがいた。
あっちはあっちで、受け入れられて仲良さそうだ。
他の場所ではセバスチャンさんやペータさん、ライラさんや屋敷の使用人さん達が、村の人達に混じっている。
お爺さんとお婆さん達は、相変わらず言い合っていたりするけど、全体的に和やかに宴会というかお祭りというか、ハンバーグ会のようなものは過ぎて行った。
ハンバーグを三種類作った感想を後々聞いてみると、村の人達や屋敷の人達の多くは合い挽き肉が良かったとの事。
レオとリーザ、フェルやフェンは肉々しい牛挽き肉が好みで、フェリーやリルル、シェリーとティルラちゃんは味や食感が柔らかめの豚挽き肉が好みだとか。
人もそうだが、フェンリルもそれぞれ好みが違っていて少し面白い。
……面白いと言えば、デリアさんに好みを聞いたらどれも美味しくて、選びきれないと唸っていた。
付け合わせに添えた野菜や、スープはあまり手を付けていなかったようなので、デリアさんの好みは肉全般と記憶しておこう……役に立つかわからないけど。
「では、タクミさん。おやすみなさい」
「おやすみ、クレア」
ハンバーグ会も終わって、レオやフェンリル達は森の近くの野営地へ向かい、俺やクレアは貸してもらっている家へと戻る。
屋敷へは明日戻る予定なので、今日は少し早めの就寝だ。
なんとなく、部屋の入り口でクレアとおやすみの挨拶をするのに、新鮮さや照れくささも感じる。
いつもは食堂とか客間で別れる事が多いからなぁ。
「お、服が……ライラさんがやってくれてたのか」
部屋に入ると、洗濯後の綺麗な服が畳まれて置かれているのに気付いた。
昨日、ライラさんに頼んでいた物だろう……よく見ると、ほつれていた場所も縫われていて、新品とまでは言わなくとも顔に近付けて目を凝らさないと、繕われているのがわからないくらいだ。
謙遜していたけど、裁縫も得意なんだな。
「パパー、フェリー達凄かったねー。私も、あんな風にいっぱいパパの役に立てるかなぁ?」
「いや、あれは真似しなくていいと思うぞ? リーザは役に立ちたいとか考えずに、自分のやりたい事をやればいい」
ティルラちゃんはクレアと一緒の部屋だが、リーザは俺と同じ部屋だ。
そんなリーザが、ベッドに腰かけて足をぶらぶらさせ、二本になった尻尾を揺らしながら話す。
確かにフェリー達は凄かったけど、あれはフェンリルだからできる事だし、リーザが真似をしなくていいと思う……できるかどうかという問題もあるけど。
リーザにはリーザがやりたい事をやって欲しいし、俺の役に立つためとかはあんまり考えないでいいんだけどなぁ。
「それよりも、村の子供達とは仲良くなれたのか?」
なんとなく、話しがおかしな方向に行きそうだったので、リーザの気を逸らすために子供達との話へ誘導。
あのまま突き詰めると、エッケンハルトさんと森へ行った時みたいに、自分も狩りをしたいとか言い出しかねないからな。
「うん、パパとママのおかげだよ!」
「ははは、俺やレオはちょっと協力したけど、リーザが仲良くなりたいと思った結果だよ」
嬉しそうに頷くリーザは、近い年の子達と遊べて楽しかったのだろう、尻尾の揺れが激しくなった。
俺は注意をして、リーザの尻尾を狙うのを止めはしたけど、許して仲良くなろうとしたのはリーザだし、レオはアトラクションみたいになっていただけだからなぁ……。
「ふわぁ……お腹いっぱいだし、楽しかったし……来て良か……たぁ……」
「はは、横に倒れて寝ちゃったか。……よい、しょっと……ゆっくり寝るんだぞー?」
「くー……すー……」
少し話していただけなのに、あくびをしたリーザが体を横に倒し、そのまま寝入ってしまった。
無意識なのか、倒れる体を片方の尻尾が受け止めていたけど、痛くなかったのかな? まぁ、痛みを感じるくらいだったら起きているか。
変な恰好になっていた体勢を直してやりながら毛布を掛け、ぽんぽんと優しく起こさない程度に叩く俺に、リーザは安らかな寝息で応えた。
慣れない場所に来て、子供達に追いかけられたり遊んだり、終始はしゃいでいたからな……疲れたんだろうな。
「あ……ふ……俺も、特に大変な事があったわけじゃないけど、眠くなって来たな。さっさと寝よう」
気持ち良さそうに寝るリーザを見ていると、あくびが出て眠気が自覚できたので、リーザを起こさないように同じベッドで横になり、目を閉じた。
屋敷のベッドより小さいため、スペースが少なくリーザがすぐ横にいるので、尻尾でわさわさと体をくすぐられている。
リーザの規則正しい寝息と、尻尾でくすぐられる感触に眠気を誘われて、薄れる意識。
そういえば、リーザと一緒に寝るのも屋敷を出て以来だったなぁ、なんて考えながら完全に意識を手放した――。
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