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第945話 セバスチャンさんから募集方法を聞きました
第945話 セバスチャンさんから募集方法を聞きました
「公爵家が行う人員募集では、全てではありませんが……まず領内で範囲を決めます」
「範囲ですか?」
「はい。当然ながら、広く募集をする程に集まる人は多くは成ります。ですが、公爵家が治める領内全てで募集をするには広すぎます。それに、応募されて雇用するかを見定めるのも、距離が離れていればそれだけ時間がかかり、難しくもなります。もちろん、全域で募集する事もあります」
今回は、ラクトス周辺で募集したからな。
公爵領全体で募集した場合、こちらから募集している事を伝えるのにも、離れている場所には時間がかかってしまい、向こうからの応募も同様。
広く募集する事で人は多く集まるけどその分、時間がかかるし、ラクトスでやった面談のように実際に会って話を……というのも難しくなるだろう。
もしかしたら、全体で募集していたらまだまとめる段階で、応募者のリストもできていなかったかもしれないのか。
全体で募集するのってどういう……と聞こうと思ったけど、すぐに兵士とかだろうと思い当たった。
随時募集なのかは知らないけど、兵士に関しては衛兵など街での現地採用もあると思うので、公爵領全体……それか国全体で募集していてもおかしくない。
なり手が少ないわけじゃなく、こちらは時間をかけてでも厳選する必要もあるかもしれないからな。
「範囲を決めた後は、もちろんその範囲内にある村や街に通達する事となります。これは、住民一人一人に通達するのは手間がかかり過ぎますし、費用もかかります」
「まぁ、さすがに一人一人にというわけにはいきませんよね」
求人を住民全員に報せる、なんて不可能じゃないけど現実的じゃない。
それこそ、既に働いていて別の仕事をと思わない人だって多いだろうし、そんな人に向けて募集を書けても無駄になる事が多いしな。
日本だと……求人は出して集めて、求める人が閲覧したり話を聞いたりできる場所を作るようなものだろう。
あらゆる方法を使って、全国民に報せると言うのもできるだろうけど、費用が掛かり過ぎてできる事じゃないからな。
「はい。ほとんどが、村や街の代表者への通達となります。一か所に対し一度の通達で、広く知らせる事のできる方法です。大きな街などは、街中にお触れも出してとなりますがな」
「この村だと、村長さんですか?」
「そうです。代表者や、周辺の住民たちをまとめる者などに、通達し広めてもらいます」
「私達、ブレイユ村の者達も村長が集めて、皆に報せました。とは言っても、私は畑の拘わりがあったので一応という程度。老人達と子供達は集められません」
「子供達はわかりますけど、老人達……お爺さんやお婆さん達もですか?」
「はい。そういう者達は、ほとんどが次の代に仕事を任せておりますから」
まぁ、そうか。
子供や孫がいれば、そちらの代に引き継いで自分達は悠々自適な老後……という程ではないだろうけど、多少手伝いをするくらいで、表立って働く事は少なくなる。
定年退職みたいなものだな、多分。
自分で希望しているペータさんはともかく、さすがにご高齢な人を働かせようとは思わないので、最初から外れるのも当然か。
「どういった者に、通達を報せるかは受け取った者に任せております。とは言っても、領主貴族からなので働ける者へは大体伝えていると確認しております。ただ、村などでは特にですが……村の重要な仕事をしている者や、これからを担ってもらう人員には報せず……としている所もあるようですな」
「それはまぁ、仕方ないですかね。村から出て行かれたら困る人だっているでしょうし……」
「はい。強制力のない募集なので、通達する者に任せております。そこで話される内容にもよるでしょうが、大体の場合、現在仕事をしていない者や、村から去っても問題ない者……と言うのは語弊があるでしょうが、そういった者を募ります。そして、代表者がまとめてこちらへと報せる手筈になっておりますな」
「そうですか……こちらが報せを受け取った後、調べたりは?」
「公爵家で雇う者となれば、おかしな者を雇うわけにはまいりませんので、身辺調査を致します。ただし、直接会ったりはせず、代表者に聞き取りをしたり、名前から過去に間違いを犯していないか……といった具合ですな。ラクトスのような街の場合は、身近な者にそれとなくどういった人物かを聞く事もありますし、離れた所から行動を見る事もあります」
「まぁ、公爵家で雇ってから悪さをされるわけにはいきませんからね」
身辺調査とかは、上に立つ貴族が雇うからこそ特に必要なんだろう。
誰でも彼でも雇って、規律どころか治安まで悪くなったら目も当てられないからなぁ……領民に信頼されている公爵家だから、特にそこは念を入れていると思われる。
さらにセバスチャンさんが楽しそうに説明する内容のうち、孤児院で雇用をする事についても少しだけ教えてくれた。
以前に、公爵家が運営しているのと、孤児院で育った者は忠誠心が高く尽くしてくれるから、と言っていたが、孤児院で教育が施されている事なども理由としてあるそうだ。
孤児になるまでの事情はともかく、孤児院に入ってからは監視ではないけど、大人達によって見守られているので基本的に犯罪歴もない。
身元としても良し悪しはともかく、はっきりしているので調査をする手間も省けるのだそうだ。
まぁ、ラクトスで言えばアンナさんに聞けば、孤児院にいる子供達の事は大体わかるからな。
「えーっと、それで……ペータさんは村長さんには? さっき行っていましたけど、あんまり詳しく話を聞いていないような感じでしたが」
「念のため、村の者達へ報せる場にはいました。詳細もその時に村長から伝えられていますが……先ほども言ったように、老いた私が積極的に応募するのは……と考えました。それに、ある程度の年齢の者達は既に仕事でそれなりの役目があります。若い者達への話だと考えていましたので、自分には関係のない話だと……公爵家からで、惹かれはしてもです」
「そうですか……成る程」
要は、最初は自分とは関係ない話だと思っていたから、興味を失ったわけじゃないけど自分とは切り離して考えていたんだろう。
だから、募集では名乗り出なかったと言う事か。
でも新しい事への興味や、公爵家のクレアを実際に見て、さらに不満ではないんだろうけどブレイユ村での必要性があまりなくなったから、今回村長とセバスチャンさんに頼み込んだらしい――。
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