【大感謝!520万PV突破!】異世界転移したら飼っていた犬が最強になりました~最強と言われるシルバーフェンリルと俺がギフトで異世界暮らしを始めたら~【Web版】
第832話 クレアの提案は却下されました
第832話 クレアの提案は却下されました
「私も、タクミさんの考えに賛同し、一緒にブレイユ村に行こうと思います」
「……というわけで、タクミ様の村訪問の予定はなくなりました」
「ちょっとセバスチャン!?」
レオやリーザと話した後、送りだけでもレオに乗って……という相談をしようと臨んだ夕食時。
俺やティルラちゃんが鍛錬をしている時に、裏庭でこちらを見ながら何かを考え込んでいたクレアが、夕食が始まった途端に発言、即セバスチャンさんに却下されていた。
セバスチャンさんは、考え込んでいるクレアの隣でやれやれと言った雰囲気を隠さずにいたので、こういった発言が出るのを予想していたんだろう。
なんだか、以前シェリーを見つける前に森の中へ行くと言った時の事を思い出すなぁ……っと、いけないいけない、このままだとブレイユ村行きがなくなってしまう。
「えっと……さすがに訪問そのものがなくなるのは……行く気でいましたし、レオやリーザにももう話しましたから……」
「ほっほっほ、さすがに予定がなくなったというのは冗談ですがな。しかしクレアお嬢様、思い付きでタクミ様について行くのはいけませんよ?」
「お、思い付きなんかではない……わよ?」
セバスチャンさんなりの冗談だったのか……少し心臓に悪い。
まぁ、おかげでクレアの勢いが削がれたようだから、ある意味効果があったのかもしれない。
クレア自身反省していたから、以前と同じ事はないとは思うけど、森へ行くと言い出した時のようにクレアが怒らないよう、あの時の反省からなのかもな。
勢いで決められなかったクレアは、思い付きと言うのが図星だったと見える反応だ。
「タクミ様は今後のために、ブレイユ村へ行ってただの訪問者として、人々の生活を見ようとなさっているのです。それをクレアお嬢様が同行してしまうと……その考えそのものが無駄になるでしょう」
「まぁ、すぐにバレなくても、隠し切れないかもしれませんからね……」
「タクミ様の目的はセバスチャンから聞いたけど……そういうものかしら?」
せっかくデリアさんに頼んで、俺がただラクトスから訪ねてきただけとするんだから、クレアが一緒にいると公爵家との拘わりがバレてしまうからなぁ。
クレア本人は意識している部分としていない部分があるようだけど、美人な事を差し引いても、時折高貴な雰囲気を醸し出している事がある。
意識的には公爵家としての身分を使う時だが、それ以外でも一般の人間ではない、と思わされるような所作がそこかしこに見られたりもするから、目ざとい人にはわかってしまう可能性が高い。
「それに、クレアが行くとなると護衛の人も多く付かないといけなくなるから……」
「当然ですな。ブレイユ村が危険な場所と言うわけではありませんが、クレアお嬢様にもしもの事があってはなりません。まさか、護衛も付けずに行けると思ってはおりませんよね?」
「そこはさすがにわかっているわよ。レオ様もいないし、ラクトスでも護衛を付けて行動しなければいけないものね」
クレアが屋敷を離れてどこかへ行く場合、もしもに備えて護衛が付く……これは公爵家とか貴族のご令嬢として当然の事だろう。
ラクトスの街でも、必ずヨハンナさんなどの護衛が付くからな。
ブレイユ村は危険な村とかはないけど、移動中も合わせて護衛を付けないなんて事はないから……そこからクレアが一般人とは見えなくなってしまうだろう。
ちなみに、レオが一緒に村へ入れないという事に関して、実は部屋で話す前にセバスチャンさんから言われた事だ。
クレアの護衛と同様に、レオと一緒にいるのを見て、そこらの人間だと思うのは無理があるからな。
最初は一緒に行く気でいたんだが、セバスチャンさんに言われてそうだったと思い直し、今更レオがいないから止めるとも言えずに、部屋でレオやリーザの会話になったというわけだ。
「ワフゥ……」
「ママ、元気ないよ?」
「リーザちゃん、元気が出るようにいっぱい食べてもらいましょう」
「そうだね、ティルラお姉ちゃん! はいママ、私のも食べていいよ?」
「ワフ、ワウワフー」
俺達の会話が聞こえていたんだろう、やっぱり一緒に行けないと落胆して溜め息を吐くレオに、心配したリーザとティルラちゃんが自分達の食べていた料理を、レオに食べてもらって元気付けようとしていた……優しい子達だ。
ただ、元気がない理由は空腹だとかではないので、慌ててレオはテーブルに置かれた料理をリーザ達に鼻先で押し戻した。
そんな微笑ましいリーザ達がレオを励まそうとする光景を見ながら、クレアの話へと意識を戻す。
「でしたら、どうやってタクミ様やクレアお嬢様の事を明かさず、村に行って一般の暮らしというのを見るつもりだったのですかな?」
「……」
怯んだクレアに対し、ここぞとばかりに畳み込むセバスチャンさん。
今回ばかりはちょっと無理な部分が多いので、俺もセバスチャンさん側だけど……さすがに一緒になって追い込む事はしない。
けど、最終手段としてクレアが強引に進めたら、結局セバスチャンさんは反対できない……クレアもさすがにそこまで強引に進めようとまではしないだろうけど。
「そもそも、何故クレアお嬢様までタクミ様と一緒に、ブレイユ村を見る必要が?」
「私だって、民の生活を見ておかないとと思ったからよ。ラクトスには何度も行っているし、ランジ村だけでなく、他の村にも行った事はあるわ。お父様に付いて、領内の街や村を訪ねた事もね。でも、ちゃんとした村の生活というのも見ておきたいの」
「ふむ、理由としてはわかります。おそらく、夕食までの間に考えたのでしょうけど……嘘ではないのでしょう」
「くっ!」
さすがセバスチャンさんと言うべきか、考えている事はある程度お見通しらしく、指摘されて悔しそうにするクレア。
まぁ、クレアの性格からすると、今言った事を以前から考えていたら先に提案していただろうからなぁ……。
いや、セバスチャンさんの言う通り、嘘ではなく本心からなんだろうけど……エッケンハルトさんと一緒なら視察のようなものだろうし、滞在時間も短くて暮らしをじっくり見られないかもしれないから。
なんて理由を、俺やティルラちゃんが鍛錬している間に、裏庭の隅で考え込んでいたんだろうと思う――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます