【大感謝!520万PV突破!】異世界転移したら飼っていた犬が最強になりました~最強と言われるシルバーフェンリルと俺がギフトで異世界暮らしを始めたら~【Web版】
第817話 セバスチャンさんはなんとか無事でした
第817話 セバスチャンさんはなんとか無事でした
「ワウ!」
「ガウ!? ガウー!」
少しの間レオがかなりの速さで走り、かなり遠くまで行っていたフェンに追いつく。
後ろから、追いついたぞ! と言うようにレオが吠えると、走りながらも器用に後ろを見たフェンが驚きの声を上げた。
こういう反応は、リルルやフェリーと似ているな……まぁ、馬で追いかけるのも難しいくらいの速さで走っているから、追いつかれると驚くのも無理はないのかもな。
前回馬車を曳いて走った時、ヨハンナさんが目印になって引き返すようにしていた場所と、同じくらいの場所だな。
屋敷からラクトスへの距離にすると、約三分の一程度だが、数分程度でその距離を移動できるのは凄いな……。
このまま走れば、ラクトスまで二十分もかからないだろうし、レオやフェンが全力で走ったら十分程度で行けそうだな。
「おぉ、タクミ様、レオ様! これでようやく助かります!」
「あーいや、セバスチャンさんを助けに来た訳じゃ……」
俺とレオの姿を見て、フェンにしがみ付いていたセバスチャンさんが、救われたような表情で叫ぶ。
けど……目的はセバスチャンさんを助けに来たり、フェンを止めるためだったりはしないので……。
「ガウ!」
「ワウー!」
「え……そんっ……!」
俺が話し終わる前に、フェンが吠えてさらに加速……それに対し、レオも負けずに吠えて加速をした。
なんとなくこうなるんじゃないかと予想していたため、備えていた俺は大丈夫だが、セバスチャンさんは悲鳴とも取れる声を途中で途切れさせて、フェンにしがみ付くので精一杯の状態になる。
「レオ、ちょっとだけ走ったら、フェンに止まるよう言ってくれ。さすがにそろそろ、セバスチャンさんがかわいそうだ」
「ワフ」
顔色も悪かったし、ちょっとだけレオやフェンに走らせたら十分だろう。
そう思って、レオに声をかけて頷くのを見届け、少しの間かなりの速度で走るレオから落ちないように気を付ける。
以前レオが言っていたが、走っている時は前面に風避けの魔法だったかを使っているのが、なんとなくわかる。
まぁ、教えられないとわからなかったんだが……ともあれ、前方からの風があまりなく、左右から吹き付ける風だけなので息がしづらいという事はない。
確かにこれなら、走る時に空気の抵抗があまりなくて速度が出るのかもなぁ……全くないわけじゃないけど。
正面からの空気抵抗っていうのは結構影響があるものだし、速度が出れば出る程きつくなってしまう。
これなら、向かい風とかも気にしなくて良さそうだ。
走る時もそうだけど、自転車だとペダルを漕ぐのもあって向かい風が強い時は、かなりきついもんな……。
「ワフ?」
「あぁ、そうだな。そろそろいいと思うぞ? それに、レオもそれなりに走って満足しただろ?」
「ワウー」
フェンと並んで走っているレオの背中で、ある程度慣れてきたので思考する余裕ができていた俺に、レオからの問いかけ。
それに頷き、毛を掴んでいる片方の手でレオの体を撫でておいた。
満足そうな声を出すレオは、それなりに体を動かせて本当に満足そうだった……フェンリル三体に追いついたり追い越したりしても、全力じゃないところが、シルバーフェンリルの凄いとこだな。
できれば全力で体を動かして、もっと満足して欲しくもあるが……その際には何かを犠牲にしなければいけない気がする……主に、セバスチャンさんとかフィリップさんとか……。
「ワウワウー!」
「ガウ? ガウー」
益体もない事を考えている俺を余所に、レオがフェンに対して吠えて速度を落とす。
レオの声が聞こえたフェンは、一度首を傾げた後同じようにゆっくりと速度を落とし始めた。
速度が速度だからな……急ブレーキをかけて止まると、乗っている俺やセバスチャンさんが放り出されかねない……その辺りは、フェンもわかっているようで少し安心した。
まぁ、単純に急に止まれないだけかもしれないが……車と違って足を使っているからな。
車は急に止まれない、ならぬ、フェンリルは急に止まれない……なんて標語が頭に浮かんでしまった。
街中ならともかく、地平線すら見える広い場所で飛び出しがあるとは思えないけど……。
「ぜぇ、はぁ……や、やっと止まって下さいました……」
「大丈夫ですか、セバスチャンさん? あ、これを食べて下さい」
「大丈夫、とは言いかねますが……なんとか無事でございます。おぉ、ありがとうございます。またこれのお世話になりますな……」
「ははは、ラーレに乗った時は役に立ったようですからね」
「ワウ、ワフワフ」
「ガウ……ガウ!」
完全に止まったフェンの背中から、一旦セバスチャンさんが降りて荒い呼吸を吐く。
俺も同じように、レオから降りてセバスチャンさんに近付きながら、懐に入れておいた薬草を取り出して渡した。
薬草は、疲労回復の薬草で、ラーレに乗った時にセバスチャンさんが食べて乗り切った物だ。
まぁ、あの時は乗り物酔いのような状態で、今回は酔ってはいないようだが、息切れをしているしむしろ今回の方が役に立ってくれるだろう。
お礼を言って受け取ったセバスチャンさんは、すぐに薬草を口に含んで飲み込んだ。
レオの方は、フェンの正面から何やら指導するように鳴いている。
……多分、もっと乗っている人の事を考えろとか、走り方が荒っぽいとか言っているんだろうけど、今回のレオも相当なものだったぞ?
体が振り回されたりとか、荒っぽい走りではなかったけどな。
「ワウワウ。――ワフ、ワフ?」
「何やら、レオ様が私に聞いている様子ですが……?」
「あー……なんというか、もう一度フェンに乗れるかどうかを聞いているみたいですね。まぁ、結構屋敷から離れたので、乗って帰らないと時間がかかりますから、仕方ないかと……」
「え、えーと……わかりました……ですが、少々手加減をして頂ければ……と思います」
「ワフ!――ワウ!」
「ガウ!」
フェンに何事かを話したレオは、俺ではなくセバスチャンさんの方に顔を向けて首を傾げる。
声と雰囲気から、レオが言いたい事をセバスチャンさんに伝えると、一瞬だけがっくりと肩を落とした後、力なく笑いながら承諾をしてくれる。
セバスチャンさんは、疲労回復の薬草の効果はあったようで、すぐに呼吸も整っていたのに……またさっきのようになると想像したのか、顔色が悪くなってしまった――。
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