【大感謝!520万PV突破!】異世界転移したら飼っていた犬が最強になりました~最強と言われるシルバーフェンリルと俺がギフトで異世界暮らしを始めたら~【Web版】
第760話 デリアさんは混乱の極みに達しているようでした
第760話 デリアさんは混乱の極みに達しているようでした
「た……たたたくくくみささささ……」
「……デリアさん、もう少し落ち着いて下さい」
「で、ですが……め、目の前にシルバーフェンリル様がい、いらっしゃいますので……」
「ワフ」
「あれ、この人も耳と尻尾がありますよ?」
「あぁ、この人はね……」
後ろから声をかけられたが、その声は震えすぎていて、かろうじて俺を呼んでいるというのがわかるくらいだった。
とりあえず振り向きながら、落ち着くようデリアさんに声をかけたが、あまり効果はなさそうだ……視線をデリアさんのさらに後ろに向けると、セバスチャンさんとライラさんが首を振っているので、これ以上落ち着かせるのは無理そうだ、仕方ない。
デリアさんの耳や尻尾を見て首を傾げるティルラちゃんに、獣人である事を説明しつつ、ゆっくりとデリアさんに近付いて右手を持ち上げる。
「た、タクミ様……な、何を……?」
「大丈夫です。緊張する必要も、怖がる必要もないですから……ほら、レオ?」
「ワウー」
「くぅーん……」
大丈夫だと声をかけながら、右手を引っ張ってレオの前に立たせつつ、俺の声と視線で察したレオがデリアさんの前に鼻先を近付ける。
そんなレオに向かって、デリアさんの右手を頬のあたりに這わせて、撫でるようゆっくり動かす……なんというか、孫の手で撫でている気分だ。
レオに触れたからか、それとも緊張が極限に達したからか、デリアさんから聞き覚えのある気のする声が漏れた……って、レオが鼻から音を鳴らすのと似ているから、聞き覚えがあるように感じるのか。
耳と尻尾、瞳からは猫にしか見えないのに、やっぱり中身は犬っぽいんだなぁ……。
「レオ、この人はデリアさんと言って、見た通り獣人だ。さっきの面接……というより面談か、そこに来ていたんだけど、レオに会いたいのが一番の理由らしい」
「ワフ?」
「あぁ。シルバーフェンリルの噂を聞いたらしくて、別の村から来たらしい。まぁ、詳しい事は後で話すよ」
「ワウ。……スンスン、ワウー」
「あ、あばばばば……」
レオにデリアさんを紹介すると、さらに鼻先を近付けて匂いを嗅いだ後、ぺろりと舌を出してデリアさんの顔を舐めた。
さらに緊張やら恐怖やら、様々な感情が溢れている様子のデリアさんは、もはや言葉にならない声を上げるだけになってしまった。
うーん、もう少し落ち着いてくれると、ちゃんと話せるのになぁ。
レオが襲ったりするわけはないし、獣人だからレオが何を言っているのかわかるはずだし、リーザと同じとは言わなくとも、仲良くなれると思うんだが……。
「デリアさん、そこまで喜ばなくても……」
「いえ、喜んでいるわけではないと思いますよ? 顔から血の気が引いておりますし……」
「まぁ、冗談ですけど。レオなりの挨拶でしょうから、安心して下さい」
おっと、セバスチャンさんに突っ込まれてしまった。
デリアさんを和ませる冗談のつもりだったんだが、本人にはまったく聞こえていない様子……どうしたものかなぁ?
「タクミさん、お疲れ様です!」
「パパー、連れてきたよー!」
「あぁ、クレア。そちらもお疲れ様。ありがとうリーザ。カレスさん、お久しぶりです」
「お久しぶりです。ですがこれは……どういう状況ですかな?」
デリアさんをどうやって落ち着かせようかと考えていると、リーザがクレアとカレスさんを連れて戻ってきた。
どうやら話が長引いているとかではないようだ。
「こちら、クレアさんです。――クレア、カレスさん、こちらはデリアさん。見ての通り獣人なんです……けど……レオに会ったらこの調子で……」
「レオ様を見て、緊張してしまっているのですね? ともあれ挨拶をしないといけませんね。えっと、デリアさん? 私、クレア・リーベルトです」
「クレア……リーベルト、という事は……まままままささささかかかか!! こここ、公爵家の!?」
「えぇ、お父様が公爵をしておりますよ」
「っ!?」
「……さらに混乱というか、緊張が増したようだね……これは失敗だったかな?」
クレアとカレスさんに、デリアさんを紹介し、簡単に状況を説明する。
とりあえず自己紹介を、とクレアが名乗ると体をピシッと固まらせて、叫ぶデリアさん……先程よりは言葉になっているけど、結局驚かせてしまったみたいだな、無理もない。
「ししし、失礼しました! こここんな、私なんかがシルバーフェンリル様のみならず、公爵家のお嬢様とお会いするなんて……」
「ワフ?」
「いえ、いいんですよ。失礼な事なんてありませんから。それにしても獣人、ですか……」
「す、すみません……獣人です。人間でない私が、公爵家のお嬢様の前に立つ事は許されないのかもしれませんが……」
「そんな事はありませんよ。獣人も人間も、見た目に多少の違いがあるだけで許されないなんて事、あるわけがありません。――タクミさん、この方はもしかして面談に?」
「えぇ。レオと会う事が一番の目的ではあるみたいだけど、働くために面談会場に来たんだ。最初は隠していたけど、なんとなく違和感を感じて聞いてみたら、獣人だったんだよ。それで、リーザに合わせてみようかなぁと思ってね。レオにも会えるし、ちょうどいいだろうから」
「そうですか……確かに同じ獣人なら、リーザちゃんと会わせたいと思いますよね。私も、他で獣人と会ったとしたら、同じ事を考えると思います」
レオから手を離し、クレアに対の方へ体を向けてガバッと頭を下げるデリアさん。
緊張してしどろもどろになりながらも、撫でる手を止めていなかったのだが、急に手を離したのでレオが首を傾げていたから、俺が代わりに撫でてやる。
クレアに恐縮するデリアさんだけど、俺やセバスチャンさんが予想していたように、獣人だからといって嫌悪の感情はなく、微笑みながら対応している……少しは、デリアさんの方も安心してくれたようだ。
デリアさんの事をクレアに説明すると、向こうも俺と同じようにリーザと会わせたいと考えるだろうと頷いてくれた。
「ねぇねぇ……お姉ちゃん?」
「はい? え、この子……もしかしてどころかもしかしなくても、獣人、ですか!?」
「うん、そうだよー。それでね、パパとママに助けてもらったの!」
「パパ、とママ……?」
はて? という様子で俺を見るデリアさん……まぁ、そこは引っかかるよなぁ――。
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