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第715話 ラクトスで面接会場を開く事になりました
第715話 ラクトスで面接会場を開く事になりました
セバスチャンさんから提案された面接をするという話、本当に俺が雇ってもいいのかどうかというのは、書類を見ただけではわからないから、この提案はむしろありがたい事だ。
仕事をしてた時も、人事部や採用担当になった事はないし、部下を持つという事も含めて全てが初めてなんだから、顔を合わせて話しておいた方がいいだろう。
「ですけど、俺に人となりがわかるかどうか……というのが少し不安ですね……」
「その点はご安心を。私や他の者達が最大限フォローさせていただきます。それと……」
「タクミさん、私も一緒にいますのでご安心くださいな」
「クレアが?」
「以前、タクミ様にも話したと記憶しておりますが、クレアお嬢様の人を見る目は確かです。それもあって、実際に会って話てみるというのは効果的かと」
そういえば、何度かそういった話を聞いた事があったっけ。
確か、現在この屋敷で働いている人や、本邸で働いている人も含めて、クレアの見出した人が多いとか……。
ライラさんだけでなく、ゲルダさんもそうだったはずだ。
ミリナちゃんも本当ならクレアが見出してこの屋敷で、という方向だったと思うけど、ミリナちゃん自身が考え過ぎていた事もあって、断ったんだったか。
結局、俺が雇う事になって屋敷に連れてきたし、ライラさんに色々教わっているから、あんまり変わらない状況になっているみたいだけど……頑張ってくれている所を見ると、クレアの見る目というのは正しいんだろうと思える。
「それなら安心ですね。俺自身こういった事は不慣れなので、よろしくお願いします、セバスチャンさん。――もちろん、クレアも」
「はい、お任せください」
「えぇ。でも、私の方でも人を見極めて雇わなくてはなりませんから、タクミさんもちゃんと見て下さいね?」
「ははは、俺が見て役に立てるかわからないけど、頑張るよ」
セバスチャンさんとクレアが付いてくれるのなら安心と、二人に頭を下げてお願いしておく。
面接に挑む際の心構えや、考えておくべき事……なんていうのは就職する時に散々経験したが、こちらでそれが通用するかはわからない。
それどころか今回は面接する側、面接官なのだから、ちゃんと相手を見て判断しないといけないだろう……まぁ、クレアやセバスチャンさん達がいてくれるから、なんとかなるはずだ。
楽観的過ぎるかもとは思うけど、構えすぎてもいけないからな。
「ワフ、ワフ!」
「レオ、もう食べ終わったのか……でも、レオはさすがに一緒に見る事はできないんじゃないか?――セバスチャンさん、どうなんでしょう?」
「レオ様は……少々難しいでしょうか。予定している場所は、レオ様が入るには狭いでしょうし……入れるような広い場所を用意したとしても、シルバーフェンリルが目の前にいる状態で、というのは相手を威圧しかねません。ラクトスに住んでいる者なら、レオ様の事を知っていますが、そういった者ばかりではありませんから」
「今回は、相手の人となりを見るのが目的なので……ただでさえ私を含めて公爵家に連なる者が見ると、緊張せてしまいますから、これ以上は。申し訳ありません、レオ様」
ハンバーグを食べ終わったレオが、俺達の話を聞いていたのか自分も見て確かめる! と言うように鳴いて主張するが、さすがにそれは難しいとセバスチャンさんクレア。
レオの体は大きいからなぁ……さすがに走り回ったりはできないが、自由に行動して部屋の出入りができるこの屋敷が大きすぎるだけだ。
街にあるどこかの建物で面接をするんだろうし、レオが入れたとしても他にも人がいる事を考えると、部屋がいっぱいどころかはみ出したとしてもおかしくない。
今回は残念ながら、レオはお留守番かな。
「ですよね。――レオ、そういう事だから、すまないがお留守番しててくれないか? まぁ、ラクトスまでなら一緒に来ても構わないだろうけど……」
「そうですな、ラクトスまでなら問題ないでしょう。カレスの店で待っていただければと思います」
「ワウゥ……」
「まぁ、雇う事になった人には、ちゃんと紹介するからその時見て確かめてくれ?」
「……ワウ」
ラクトスに住んでいる人ならレオの事を知っている人が多いし、カレスさんの店ならむしろ歓迎されるだろうから、そこで待っていてもらえばいいかと思い、残念そうに鳴くレオを撫でて宥める。
「そうだ、久しぶりに以前カレスさんの店に集まっていた子供達を呼んで、一緒に遊んだらどうだ? レオも、子供と遊ぶのは好きだろう?」
「そうですな。カレスから聞きましたが、子供からレオ様がまた来ないかと聞かれる事もあるとか。レオ様が遊び相手になって下さると、助かります」
「ワウ……ワフ」
以前薬草販売を始めた当日、客寄せも兼ねて子供達とレオの触れ合い場のような事をした。
その時レオと触れ合った子供達から、カレスさんがまた来ないのかと聞かれる事もあったようだし、この機会にまた遊ぶのもいいだろう。
少しだけ落ち込んだ様子を見せていたレオは、仕方なさそうに頷いたが……尻尾がゆっくり揺れているから、喜んでいるのは丸わかりだぞ?
「では、五日後に……会場の用意を進めておきます。それと、追加の資料はまとめ次第タクミ様へお渡しいたします」
「はい、よろしくお願いします」
「私も、今のうちに資料を見ておかねばなりませんね」
こうして、五日後に面接をする予定が決まり、それまでに今回話をする人達の分も含めて、追加の資料を後で渡される事となった。
自分で雇って部下にする人なんだから、今のうちに資料をしっかり読み込んで、ちゃんと判断できるようにしておかなきゃな……頼りになるクレアや、セバスチャンさん達にばかり任せるわけにもいかないだろうから。
さらに、面接の前後で孤児院にも寄って、ランジ村で働く事に関する話もする予定だ。
こちらは、事前にセバスチャンさんの方から連絡をして、孤児院の全員に話を通して希望者を募っておく事となった……まぁ、五日しか時間がないので、その後も希望する人がいれば話を聞く事となった。
とりあえず、力が入り過ぎて圧迫面接のようにならないようには、注意しないといけないな。
……レオがいたら物理的にも圧迫される面接だっただろうなぁ、なんて考えながら、食後のティータイムを終えた――。
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