第461話 森の予定確認を始めました



「なに、気にするな。ロエを市場で買うよりも安いうえ、それで救われる兵士を思うと、これくらい安い物だ。……さすがに、今度からは予定を考えて作って欲しいがな?」

「そうですな。どこの兵士達にどれだけの数を貯蔵させるか、分配する予定や時期も考えておりますので、その時に数や納品時期を相談させて下さい」

「わかりました……」


 これは本当に反省しないとな。

 公爵家にだって無限にお金があるわけじゃない。

 ロエをある程度市場に出して売り、利益を得るとしても、それは先の話になる。

 今あるお金で商品を買い、それを市場で売って初めて利益というのは生まれるものだ。


 先行投資という言葉もあるが……それでも借金をしなければ、今あるお金で対処しないといけないし、公爵家は領地を持っているのだから、予定というものもあるだろう。

 公爵家に借金をさせたいわけじゃないし、損をさせたいわけでは絶対にないからな。

 もっとよく考えて薬草を作らないといけないな……契約をしているのだから、特にだ。

 簡単に薬草が作れるからと、少し調子に乗っていたのかもしれない……気を引き締めないと。


「では、ロエはまた相談させて頂きますので、よろしくお願いします、タクミ様」

「はい」

「うむ。タクミ殿の用件は終わりのようだ。……そうだな、まだ時間もあるようだし、ついでに明日からの事も話しておこう」

「そうですな」

「明日から……というと、森での予定ですか?」

「うむ」


 ロエの話が終わり、一度食堂を見渡したエッケンハルトさんが、時間を確認。

 まだ夕食までの時間がありそうだったので、ついでに明日以降の事を話すようだ。


「明日森へ向かうのは、私とタクミ殿、レオ様とティルラだな」

「はい。執事を代表して、私ともう一人、そして世話役としてメイドを二人、連れて行く事になります」

「うむ。護衛は……確か、以前クレアとタクミ殿が森へ行った時は、三人だったか?」

「そうですね。フィリップさんとニコラさん、ヨハンナさんが付いて来てくれました」


 まずは森へ行く人達の確認。

 セバスチャンさんと、もう一人の執事さんが付いて来るようだ。

 エッケンハルトさんもいるのだから、以前よりも多いのは当然か。

 メイドさんの方は誰になるのかわからないが、前回ライラさんだけだったのに対し、今回は二人のようだ。


 これも、エッケンハルトさんがいるからというのもあるだろうし、前回よりも人数が増える事もあるんだろう。

 前回は食事の用意とか、ほとんどライラさんがやってて大変そうだったからな。

 本人は、喜んでやっていたようでもあるけれど。

 さらに、護衛さんを連れて行くのに、前回付いて来てくれたフィリップさん達の事をエッケンハルトさんに伝えた。


「そうか、三人か。ならば、人が増える今回は四人といったところか?」

「いえ、今回は戦えない者も増えているので、五人と致しましょう。レオ様がいて、二度目の森とはいえ、万全を期すべきかと思われます」

「そうか。まぁ、そこは任せよう。前回森へ行ったフィリップ達は、経験もあるだろうから、参加だな」

「はい、そのように」


 護衛さんを一人加えて四人と考えたエッケンハルトさんに、セバスチャンさんが反論。

 今回は、執事さんとメイドさんがそれぞれ一人多くなってる。

 戦えない人の安全のためにも、護衛さんが増えるのは仕方ない事か。

 また、馬車や馬の面倒を見るため、そちらの方の護衛さんも一人か二人増えそうだな。


 森へ行く事が決まったフィリップさんやニコラさん、ヨハンナさんは、前回森へ行った経験があるため、強制的に参加のようだ。

 今回とは目的が違うが、一緒に探索をしていたため、ある程度地理もわかるだろうし、心強い。


「日程としましては、明日は前回同様、森への移動から、川を目指します。そこで野営の準備を行い、翌日からオーク探しとなります」

「うむ。まぁ、途中でオークと遭遇するかもしれんが、初日はそれでいいだろう。実戦を経験するためとはいえ、無理をする必要もあるまい」

「そうですね。移動中にオークを見つけても、レオや護衛さんに任せます」


 移動にも時間がかかるし、体力も必要だ。

 今回も川のほとりで野営をする予定のようだから、それなりに歩くし……無理をする事もないのだから、初日はそれで終わりだな。

 途中でオークに遭遇する事もあるかもしれないが、その時はレオや護衛さんに素直に任せる事にする。

 エッケンハルトさんの言う通り、無理をする場面でもないだから、実戦を経験するのは体制を整えてからでもいい。

 川の傍ならまだしも、森の中だと木々が邪魔になるし、ティルラちゃんはそういう所で戦う事に慣れていないだろうしな……俺もそうだけど。

 

「今回は前回と違い、探索をする必要がありませんので、日中はオークを探す事。そして誘導する事になります」

「それでいい。あまり奥に行く必要もないだろう。最初はオークを開けた場所に誘い出す事だな。木々が生い茂っている場所で戦う経験をさせたいとも思うが……これはティルラ次第だな。開けた場所でどう戦うかを見てからになる」

「……あの……俺は?」

「タクミ殿は、どちらでも大丈夫だろう。オークと比べると危険は低そうだったが、以前建物の中でも、周囲を見て戦っていたからな。ティルラが戦うか、タクミ殿が戦うかはその時次第だが、タクミ殿は森の中でも構わないと考えているぞ」

「建物の中と森では、勝手が違いそうですが……なんとかやってみます」


 オークを挑発するなりなんなりで、近場まで連れて来て戦うという事はわかる。

 初めての実践で、慣れない森の中ではなく、まずは開けた場所でティルラちゃんが戦ってもらうというのもわかるが、俺の事に触れられなかったので聞いてみると、エッケンハルトさんとしては俺の心配はあまりしていないようだ。

 確かに以前、例の店に乗り込んだ時、武器を持った男達三人を相手にした事があるから、狭い中や障害物がある中で戦うという経験はしていると言える。

 勝手は違うだろうから、それで十分と言えないかもしれないが、エッケンハルトさんは大丈夫と考えているのだから、それを信じようと思った。



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