第462話 リーザがどうするか確認する事になりました



「旦那様、トロルドなどを始め、オーク以外……いえ、オークより強力な魔物が出た場合は……」

「そういえば、以前はトロルドも発見したのだったな。……レオ様に任せるか、護衛達に任せる事にする。今回は実戦というものを経験するためだからな。危険を冒す必要はないだろう」

「畏まりました」


 前回はシェリーを囲んで、痛めつけていたトロルドがいた。

 フェンリルはレオがいれば大丈夫だろうが、それ以外にトロルドも含めたオーク以外の魔物がいないとは言えない。

 オークよりも強力な魔物がいたって、なんら不思議はない。

 その場合は、無理をせずレオや護衛さん達に対処してもらう、という事だな。

 魔物との戦闘を経験させる事が第一なのだから、わざわざさらなる危険に挑もうとしなくても良さそうだ。


 セバスチャンさんやエッケンハルトさんに見えないよう、少しだけ安心して息を吐く。

 オークはランジ村で何体か倒した経験があるが、他の魔物はなぁ……。

 トロルドとか体も大きいし、俺の胴くらい太い腕だ。

 あれで殴られたら、簡単に骨が折れたり体が弾き飛ばされたりするんだろうな……と考えると、あまり戦いたいとは思わないからな。


「タクミ様も安心されているようですな」

「そうなのか? ……今回は、無理な事や危険な事を進んでやるために、森へ行くわけじゃないからな。わざわざトロルドや他の魔物に向かって行く必要はないだろう」

「そうですね。はい、ありがとうございます」


 隠れて息を吐いたつもりだったのに、セバスチャンさんにはバレていたようだ。

 ……この人に隠し事ってできそうにないなぁ……するつもりもあまりないけど。


「さて、タクミ殿。レオ様を呼んでくれるか? それとリーザもだな」

「レオとリーザですか?」

「うむ。レオ様はこの機会にシェリーも鍛えるつもりのようだから、どういう方法を取るのか聞いておきたい。リーザは……タクミ殿、屋敷に置いて行くつもりか?」

「シェリーに関しては、確かにそうですね。リーザは、安全な屋敷に居てもらおうと考えていましたけど……いけませんか?」


 ある程度、森での行程を確認したり、予定を立てていた時、エッケンハルトさんからレオとリーザを呼んで来るように言われた。

 レオにはシェリーをどうするのか聞くつもりらしい。

 リーザは、危険な目に遭わせたくないから、この屋敷でのんびりしていてもらおうと思ったんだが、何かあるのかな?


「屋敷に居る事は構わん。が……リーザがそれで納得するかどうかだな。タクミ殿やレオ様への慕い具合を考えると、森へついて行きたがるかもしれん。まぁ、無理に納得してもらって屋敷に置いておく事もできるだろうが……寂しがるかもしれんからな。レオ様の近くにいれば危険は少ないだろうし、本人が希望するのであれば、連れて行ってもいいと考えているぞ?」

「そうですか……そうですね。確かにリーザは俺やレオに懐いてくれているので、ついて来たがるかもしれません。それに、俺がスラムへ行った時も、寂しがって結局部屋で寝ていましたから」


 森へ行ったら、数日は帰る事ができない。

 その間リーザが、この屋敷で安全に過ごす代わりに、寂しい思いをさせてしまう事になる。

 本人がどう考えるか次第だが、あまりリーザには寂しい思いはさせたくない。

 ディームを捕まえにスラムへ行った時も、ライラさんが付いているにも関わらうず、寂しくなって俺の部屋に来ていたくらいだから、数日も我慢できるとは思えないしなぁ。


 エッケンハルトさんの言う通り、もしリーザが森へ行く事を希望するなら、レオの近くにいる事を条件に連れて行ってもいいかもしれないな。

 ……パパと呼ばれてる俺じゃなく、ママと呼ばれてるレオの近くが一番安全というのは、少し情けないし、レオに頼り切りな気がして、少し気が引けるけども。

 娘一人簡単に守れるようになるくらい、もっと頑張らないとな。


「そういう事だ。せっかく安心できる居場所を得たのだ、それは屋敷ではなく、タクミ殿やレオ様の傍だろう? 我慢させるのも気が引けるが、本人が納得するかどうかだな……経緯を考えると、遠慮して平気なフリをしそうだが……」

「そうですね……リーザなら年齢に似合わず、大人に遠慮して我慢してしまいそうです。なるべく、しないでいい我慢はさせたくありません」


 リーザは、スラムで散々我慢して生きてきた。

 やっと遠慮がなくなって、楽しむ事を覚えたくらいなんだから、ここで我慢を差せるのは良くないと考えるのは、俺やエッケンハルトさんがリーザに甘いせいなのかもしれない。

 とはいえ、リーザは七歳とは思えないくらい、大人に対して遠慮をする事が多いから、自分が邪魔になるかもと考えたら、我慢して屋敷で待ってると言う可能性が高そうだ。

 リーザが邪魔という事はないし、我慢させたくもないから、話す時は気を付けないとな。


「だろう? ティルラと年が近いせいか、私も甘いと思うのだが、少し気になってな」

「ありがとうございます。それじゃあ、レオとリーザを呼んで来ます」

「うむ、頼む」


 エッケンハルトさんに断って、食堂を退室し、裏庭にいるはずのレオ達の所へと向かう。

 道すがら、リーザはどちらを選ぶだろうと考えて見たが、ついて来たいと答えそうだなぁという結論。

 屋敷にはよく懐いているクレアさん達がいるし、寂しく思うこと以外は問題なく過ごせるはずだが、遊び相手のティルラちゃんはいないしな。

 それに、大人に囲まれる事になるので、周囲の雰囲気や接し方は全く違っても、スラムにいた時の事を思い出すかもしれない。


 ともあれ、森に行く事は危険な事もあると伝えたうえで、リーザがやりたいようにやらせてやりたい……と思うのは、甘すぎなのだろうか?

 さすがに、レオがいなかったら無理な事だから、いつも必ずというわけではないけども。

 ……そもそも森へ行く事自体が、そこまで多くないか。



「……結局、全員集まったんだな」

「すみません。皆で一緒にいたので……」


 裏庭にいたレオ達を呼びに行って食堂に戻り、皆で席に着く。

 食堂には、裏庭にいた皆が付いて来ており、レオやリーザだけでなく、クレアさんやティルラちゃん、シェリーやアンネさんもいる。

 エッケンハルトさんから話があると聞いて、気になったクレアさんが一緒に来る事になり、レオやリーザが移動するのならとティルラちゃんが……そして、シェリーとアンネさんは皆が行くならと、結局全員で集まる事になった。



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