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第456話 まったりお昼寝タイムになりました
第456話 まったりお昼寝タイムになりました
ロザリーちゃんがリーザと同じ帽子を欲しがってる事に、セバスチャンさんが伝令をラクトスに送って、ハルトンさんに至急用意するよう伝えてくれるらしい。
何から何まで、お世話になったと恐縮しきりのハンネスさん。
帰りにしっかりロザリーちゃんを連れて、仕立て屋に寄る事にしたらしい。
仕立て屋の場所はニコラさんが知ってるから大丈夫だし、これでロザリーちゃんもリーザとお揃いの帽子を被る事ができる。
……村に戻ったら、男の子達に人気が出そうだな。
ハルトンさんに言って、商売のチャンスと耳隠しではなく、耳付き帽子として売り出す事を相談してみようか……。
いや、これを考えるのは俺じゃなく仕立て屋の人達だな。
お世話になってる店だが、商売の提案とかはさすがに素人が口を出す事じゃないな。
少しだけ、サラリーマンだった時の癖が出そうになってしまった。
あの頃は、こういった提案を出す事も多かったから……大体は苦し紛れの案で、上司に馬鹿にされて終わってたけどな。
「では、そろそろ……」
「はい。お気をつけて」
「「「「お気をつけて、お帰り下さい!」」」」
「っ!?」
挨拶や準備も終わり、玄関を出ようとするハンネスさんとロザリーちゃん。
俺が見送るように声をかけると、それに続いて後ろから使用人さん達が声を揃えて挨拶。
初めてそれをされた俺や、リーザと同じように、体をビクッとさせたロザリーちゃんが微笑ましかった――。
「気持ち良さそうに寝てるなぁ……」
「ふふふ、ティルラも一緒になって。幸せそうですね」
ハンネスさんを見送って、いつものように鍛錬を開始しようとしたのだが、今日はエッケンハルトさんの指示によって、鍛錬は中止となった。
明日森へ行くのだから疲れを残してもいけないだろうと、明日に備えてゆっくり休むべきだとの主張。
確かに、森へ行ったらすぐオークを発見できるわけでもないため、森の中を歩く必要がある。
俺やレオ、エッケンハルトさんや護衛さん達は大丈夫だろうが、森に慣れていないティルラちゃんの体力が少し心配だ。
もしもの場合は、俺の作った疲労回復の薬草の出番だが、エッケンハルトさんの指示であまりそれに頼り過ぎないようにするとの事。
薬草に頼ってばかりでは、成長もできないからという理由だったが……それなら安眠薬草は? と聞くと、話を変えて誤魔化してた。
まぁ、ティルラちゃんの成長を見るための事だから、深く追求するのは止めておこう。
やる事がなくなって暇になったわけだが、そこでレオが今朝眠そうだった事を思い出した俺。
部屋で寝るのもいいのかもしれないが、折角だからと、日向ぼっこをする事を提案してみた。
すると、レオとリーザはもちろんの事ながら、ティルラちゃんとシェリー、さらにクレアさんも一緒にという事になった。
裏庭に出て、レオが日を浴びながら大きなあくびをし、丸まって寝始めた所に、リーザとティルラちゃんが体をくっつけるようにして、レオの毛に包まれながら日を浴び始める。
何故か、インドア派で日中は部屋にいるばかりのアンネさんも、いつの間にか一緒に寝ているが……これはあまり気にしない方がいい気がするな、うん。
……髪の日焼けとか、大丈夫だろうか……いや、俺が気にする事でもないか。
さらにシェリーも、丸くなったレオの背中に乗って、そこで丸くなって気持ち良さそうに寝息を立て始めた。
今日は、レオによるシェリーのダイエット運動もお休みのようだ。
ティルラちゃんと同じく、明日に備えてるのかも……と思ったが、レオが昼寝したいからというのが大きい気がする。
丸まったレオのところに集まって、日を浴びながら幸せそうに寝るリーザやティルラちゃんを見て、こちらは日陰でテーブルを用意してもらい、クレアさんと一緒にお茶を飲みながら、微笑ましく見守る。
「そういえば、今日はあまり忙しくないんですか?」
「ある程度目途が付きましたので。それに、私もたまにはのんびりしたいですから」
「そうですか……そうですよね」
スラムに関係する事で、忙しくしていたクレアさん。
半分くらいは俺のせいのような気もするが、そこは気にしないでおこう。
謝っても、クレアさんの事だから気にしないでと言うだけだろうしな。
その他にも、薬草畑の事や、共同運営する事など、最近忙しかったクレアさんだから、たまにはのんびりするのもいいと思う。
……その代わり、エッケンハルトさんがセバスチャンさんに連行されて、忙しくしてるわけだが……それも気にしない。
おかげで、気持ち良さそうに寝ているレオやリーザ、ティルラちゃんやシェリーを落ち着いて見られるわけだしな。
女の子達が、身を寄せ合って幸せそうに寝る姿は、平和そのものだ。
エッケンハルトさんといると、つい何かやるような話になってしまうしなぁ……。
それに、クレアさんとこうして一緒にのんびりするのも、悪くない。
「私は剣を扱ったりといった事はできませんが……ティルラはお父様に教えられる事で、使えるようになったんですね……」
「そうですね。剣を使う事も楽しくやっていますし、真面目に取り組んでます。同時に鍛錬し始めましたけど、今は実際に戦った事があるという経験だけで、一歩先を行っている気がしますが……追い抜かれないように必死ですよ」
「ふふふ……タクミさんを追い越すティルラですね。見たいような、見たくないような……少し複雑です」
幸せそうに寝ているティルラちゃんを見ながら、話すクレアさん。
微笑んでいるのは確かなのだが、その奥には少しだけ寂しさがあるように感じた。
自分ができない事を、妹のティルラちゃんができるようになっていく事で、自分の手を離れるように感じているのかもしれない。
勉強をしろと、クレアさんが厳しく言う事はあるし、ティルラちゃんはそれを不満そうにする事もある。
けど、お互いが信頼し合っていて、仲の良い姉妹である事は間違いないからな。
姉離れ……という程かはわからないが、成長して行くティルラちゃんを見て、嬉しくも寂しいという、複雑な感情なんだろう、近い思いは俺にも覚えがある――。
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