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第457話 クレアさんと二人で話しました
第457話 クレアさんと二人で話しました
「もしかしたら、エッケンハルトさんも近い気持ちなのかもしれませんね。クレアさんの成長も見守っているんでしょうし。まぁ、俺やクレアさんの年齢では、あまり感じる事は多くないかもしれませんが……俺にも少し覚えがあります」
「お父様は……見守るのなら、あんなにお見合い話を持って来なくてもと思いますが……あれは私が原因だったので、なんとも言えませんね……。タクミさんにも、似たような事があったのですか? 以前、兄妹はいないと仰っていましたが」
エッケンハルトさんは、俺の倍くらい生きていて、人生経験も豊富だし、実際クレアさんを育てるという事を経験している。
それに、現在進行形でティルラちゃんもだな。
クレアさんのように、見守っていた相手が成長する姿を見て、同じように寂しく感じたり、嬉しく感じたりもしたんだろうなぁ。
セバスチャンさんやクレアさんに説教されてる姿からは、想像できないが……まぁ、それもエッケンハルトさんなりの、遊びの一つなのかもしれない。
「以前、レオを拾った事は話しましたよね?」
「はい。確か、雨の日に小さかったレオ様を保護したのだとか……」
「えぇ。しばらくは元気がなかったので、外に出さずに診ていたのですが……元気になってからは、外に連れ出したりもしてました。そこで、レオを見た子供達に大人気になりましてね?」
「ふふふ、小さなレオ様は想像がつきませんが、子供達に人気というのは簡単に想像つきますね。孤児院でもそうでしたし、カレスの店でも。そして、今ここでもそうですから」
レオ自身が、最初から子供好きだったかと聞かれると、それはよくわからない。
だけど、小さかった時……まだ子犬だった時に、子供達と楽しそうに尻尾を振りながら遊んでいたレオだから、子供が好きになったのかもしれない。
その時の事を思い出しながら話すと、寝入って鼻をスピスピさせてるレオを見て、クレアさんが微笑む。
この世界に来て、体が大きくなったとしても、優しいレオの子供好きは変わらない。
カレスさんの店で子供達が集まって来たり、孤児院でも、屋敷にいてもティルラちゃんを含めた子供達には大人気だ。
それに、クレアさんは見ていないが、ランジ村でも大人気だった。
最強のシルバーフェンリルと言われている魔物であっても、内面の優しさは、もしかしたら子供達にはすぐ伝わるのかもしれないな。
さすがに、全ての子供達が……というわけじゃないけどな。
「子供達に大人気になったレオは、あまり想像できないかもしれませんが……小さい体ながらに、飛び跳ねたり走り回ったりと、楽しそうに遊んでいましたね」
「それは……走り回るというのは、なんとなく想像できます。ですが、飛び回るというのは……ちょっと見てみたいですね?」
「ははっ、確かにそうですね。今の大きさで飛び跳ねたら、色々と大変そうですけど……。まぁ、そうやって子供達と遊んでいたレオなんですが……」
昔の事を思い出すようにしながら、懐かしい話をクレアさんにする。
レオがまだ子犬だった頃、近所の子供達とよく遊んでいた時の事だ。
あの頃は、まだ俺も学生だったから、バイトはしていたがある程度時間に余裕があった。
だから、毎日とは言わないが、定期的に外に散歩へ連れ出して、近所の子供達と遊ばせたりもしてた。
そうして数年が経ち、俺が就職して働き始め、時間がなくなってからだったな……。
忙しい仕事の合間を縫って、レオを外に連れ出した時だ。
子犬だった頃から、レオと一緒に遊んでいた子供のうち一人の男の子と、久しぶりに会った。
その子は、初めて見た時は小学生だったが、その頃には中学生になっていて、大分成長したんだなと思った事を覚えてる。
レオも男の子も、しばらく会えなくともお互いの事を覚えていて、最初は喜んでいた。
けど、すぐに別の場所から男の子を呼ぶ声がして、そちらへ意識を向けた男の子は、そのまますぐに駆け去って行った。
それを見送るレオは、鼻を鳴らして寂しそうにしていたが、今思うと少し嬉しそうにしていたように思う。
いや、俺がそう感じるだけかもしれないが。
中学生の男の子は多感な時期だし、友達と遊んだり他の事に興味を持ったりして、昔少しだけ一緒に遊んだ犬の事よりも、そちらが優先になる事もあるだろう。
その子とは、レオと一緒に遊んでいたというだけの関係だったし、お互いの名前もよく知らないくらいだったが、なんとなく弟が成長したような気がして、俺も寂しく感じた。
あぁ、子供はいつか成長して、いつまでも同じところにはいないんだな……と、感傷に浸ったもんだ。
クレアさんが思うティルラちゃんの事とは、少し違うかもしれないが、成長を見るのは、嬉しくも寂しいものなんだなと思う。
「そんな事があったんですね。……成長を見られるのは喜ぶべき事なんでしょうけど、やはり寂しいものなのかもしれませんね」
「そうですね。ですが、それは見ている側の感情ですからね。成長している本人は、その実感を喜ぶだけでいいと思いますよ。ティルラちゃんに気遣われても、嫌でしょう?」
「それは当然ですね。場合にもよりますが……姉として、妹に気遣われないようにしないといけませんから」
「ははは、妹に対する……姉としてのプライドですね」
俺は兄弟がいないから、よくわからないが……兄や姉というものは、どれだけ親しくとも少しくらいはプライドを持っている事が多いと聞く。
……というより、学生の頃の知り合いに、弟の成績が良くて親に比べられるのが嫌だと言いながら、兄のプライドを力説していた奴がいたっけな。
兄を越えられる弟などいない! とか言いながら、必死に勉強しているそいつを、微笑ましく眺めてたなぁ。
「もちろん、私もティルラに追い越されないように頑張ります。姉として、ティルラに胸を張れない自分にはなりたくありませんから。……剣の腕は……もう負けていますけど」
「あはははは、そうですね。まぁ、クレアさんはクレアさんらしく、ティルラちゃんはティルラちゃんらしく、それぞれの得意な事で頑張ればいいんじゃないかと思いますよ」
「はい、そう思います。ですが……私らしくというのは、タクミさんからはどう思われているのですか?」
「え?」
クレアさんは剣の鍛錬をしてこなかったため、既にその分野ではティルラちゃんに負けている。
姉として妹に負けないと考える事は大事なのかもしれないが、それぞれ考え方もやり方も違う人間なんだから、得意な事を頑張ればいいと思って、クレアさんに笑いながら言う。
すると、何やら答えづらいというか……微妙に難しい質問をされてしまった……。
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