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第374話 クレアさんもヤキソバもどきを気に入ったようでした
第374話 クレアさんもヤキソバもどきを気に入ったようでした
「っ! 美味しいです、タクミさん!」
「ははは、そうですね」
「見た目や匂いは珍しいですけど、こんなに美味しいだなんて思っていませんでした!」
一口二口と、ヤキソバを食べたクレアさんは、目を見開いて興奮した様子だ。
俺にとっては物足りないと感じる物でも、クレアさんにとってソースは初めてだろうからな、そうなるのも無理はないかもしれない。
見れば、ライラさん達も驚いたり、喜んだりしてるようで、ヤキソバを勧めた甲斐があったな。
リーザは一心不乱に食べてるし、レオ以前食べてたから驚く様子は見れない。
あ、レオ……そうだった、ヤキソバを食べさせたらこうなるのは当然の事なのに、クレアさん達に食べて欲しくて忘れてた。
俺は、レオの汚れた口元を見て、屋敷に帰ったら風呂に入れる事を決めながら、自分のヤキソバを食べて行った。
「はぁ……美味しかったです。ヘレーナの作る料理も美味しいですけど、街にもこんなに美味しい物があるんですね」
「ははは、ヘレーナさんが知ったら、悔しがりそうですけどね」
作った料理で、美味しいと言わせる事が、生き甲斐のようにも見えるヘレーナさんだから、街にはこんなに美味しい物があると知れば、悔しがるかもしれない。
いや、もしかしたらもっと美味しい物をと、闘志を燃やす可能性もあるな……。
「でもさすがに、一つでは量が足りませんね」
「……そうですね」
ヤキソバは全部食べ切ったが、元々一つの量が少なくされてるのかなんなのか、さすがにそれだけで満腹になると言う程ではない。
「そう言えば、さっきライラさんが串焼きを……ライラさん?」
「はい、どう致しましたか?」
「いえ……」
いつの間にか大量の串焼きを買っていたライラさんの事を思い出し、そちらに顔を向けると、ライラさんはレオの前にしゃがんで、空になったヤキソバの器に串から肉を外して食べさせていた。
誰かが欲しいと言ったわけじゃないのに、ライラさんが買って来ていたのは不思議だったが、レオに上げるためだったのか……。
俺達がヤキソバを食べる間に、レオがほとんど食べてしまったのか、既にライラさんの手には串焼きがほとんどない。
ライラさんの横で、一緒にしゃがんでいたリーザを見ると、そちらもモグモグと口を動かしていたから、おこぼれに預かって食べてたみたいだ。
順調に、レオとリーザが餌付けされてる気もするが、ライラさんに懐く分には何も問題はないな。
それに、レオは俺達が店に入っている時に、外でおとなしくしてたから、そのご褒美としてたらふく食べるのもいいだろう。
「まぁ、いいか。美味しい物はまだまだあるしな」
「まだ、他にもお勧めがあるんですか?」
「以前、エッケンハルトさんと来た時に食べた物で良ければ、まだまだ美味しい物はいっぱいありますよ」
ライラさんとレオの方を見ながら、仕方ないと呟くと、クレアさんがそれに反応して聞かれた。
エッケンハルトさんと来た時には、色んな物を食べて歩いたから、他にも美味しい物があるのは知ってる。
それらをクレアさんに紹介しようと、レオが食べ終わるのを待って、通りを移動した。
「クレアお嬢様、タクミ様、こちらです」
ヤキソバだけで満腹にならなかったため、次なる美味しい物を求めて通りを歩いていたが、クレアさんの事を考えて立ったまま食べるのではなく、どこか落ち着ける所を探して食べる事に決まった。
通りから外れて、ライラさんに案内されたのは、エッケンハルトさんと来た時に訪れた、オープンカフェ。
ライラさんは孤児院出身だから、人の少ない穴場のカフェを知ってるとの事だったが、皆考えることは一緒なのかもしれないな。
エッケンハルトさんやクレアさんを、人の多い所案内するのは躊躇われるし、レオやリーザもいる。
目立たないようにしつつも、広く場所の取れる店となると、同じ場所になるのも仕方ないだろうなぁ。
「お待たせしました、皆様」
大通りを外れる時に、ニコラさんとヨハンナさんに頼んで、俺お勧めの屋台の場所を教えて買ってきてもらう事にした。
あらかじめ、このカフェに来る事をライラさんから聞いており、さっきのように買ってから話をする時間がなければ、ある程度は温かいままだろうと考えてだ。
少し冷めてしまうのは仕方ないが、ニコラさん達が走って持って来てくれたので、まだ美味しいままだろう。
「これらは……また初めて見ますが、どのような物なのですか?」
「えっとですね……」
ニコラさん達が持って来てくれたのは、焼き団子とうどんもどきだ。
団子の方は、薄力粉を使ってるからか、俺が知ってる団子とは少し違うし、餡子もない。
うどんの方も、パスタ麺を使ってるからか、少し違う感じもするが……それでも昆布出汁を使ってるようで、味に文句はない。
物足りないというのは、ヤキソバと一緒で、既に知ってた事だしな。
クレアさんに、持って来てもらった物を説明しつつ、ニコラさん達が走ってうどんを持って来た事に少し驚いている。
汁物なのに……ほとんど汁をこぼす事なく持ってくるなんて……これも、貴族の使用人には重要なスキルなのか?
いや、単純にあまり体と持っている物を揺らさないようにして、動いてただけだろうな。
鍛えられてるからできる事か……凄いな。
「はぁ……どれも美味しい物でした。タクミさん、ありがとうございます」
「お礼なら、美味しい物を作った屋台に、ですね」
カフェでお茶を頼んで、ゆっくりしながらクレアさんと話す。
リーザはレオの背中に乗ってるし、そのレオの方は伏せの体勢で口を大きく開けて、あくびをしている。
ライラさんに大量に食べ物を用意されたから、満足してるんだろうが、ちょっと食べ過ぎじゃないかな?
「そうですね。それにしても、初めて食べた物ばかりでした。タクミさんは知っていたのですか?」
「えぇまぁ。以前エッケンハルトさんと来た時に見つけまして、その時食べて味を確かめました。それに……俺の出身地で、食べられてた物でもあります。完全に同じ物ではありませんけど」
クレアさんにさっきの屋台で買った物の事を聞かれて、頷きながら答える。
さすがに、出身地という部分は少し小さくだけどな。
外で異世界がどうとか話すわけにはいかない。
気を付けながら、元々の料理を知っている事、使われている物が違ったり、足りない物があったりで、完全に同じ物ではない事も説明しておいた。
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