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第329話 さらに新しい魔法の使い方を教えてもらいました
第329話 さらに新しい魔法の使い方を教えてもらいました
リーザの喉が渇いたら、すぐに用意してもらおうと、ちらりと視線を離れた場所にいるライラさんへ向ける。
こちらの話を聞いていたのだろう、すぐに頷いてくれたライラさん。
これで、リーザの方は大丈夫と安心し、最後に風の魔法へと取りかかる。
「……ウィンドエレメンタル・エア」
「風が気持ちいいね」
「そうね、リーザちゃん」
俺が手の平をかざし、風の魔法を発動。
これも問題なく発動させる事ができた。
そよ風程度の風に吹かれて、気持ち良さそうに目を細めるリーザとクレアさん。
日も高くなって、動いたら暑いだろうな……というくらいだから、ゆっくりと吹く風が気持ちいいんだろう。
「全部、発動しましたね」
「はい。さすがはタクミさんです。一度見ただけで、全て発動させる事ができましたね」
「ははは、前もってクレアさんが見せてくれましたからね。呪文も短くて覚えやすいですし、これくらいは……」
褒めてくれるクレアさんに笑いかけながら、難しい魔法ではなかった事に、ほんの少しだけ安心した。
それとは別に、もうちょっと派手な魔法が使いたいなぁ……と思う部分もあった。
やっぱり、日本の漫画やアニメで見るような、派手な魔法って使ってみたいものだからな。
とはいえ、今はまだ魔法初心者な俺だから、基礎を大事にして、少しずつ幅を広げて行った方がいいだろう。
焦って大きな魔法を覚えても、使いこなせるかわからないしな。
使う機会も、ほとんどないだろうし。
「ちょっと物足りなかったですかね?」
「いえ、そんな事はないですよ」
そんな事を考えていたのを、クレアさんに見抜かれたのか、物足りなかったのかと聞かれる。
俺、物足りないような顔をしてたのか?
「では、少しだけ難易度の高い魔法に、挑戦しましょう」
「難易度の高い……クレアさんはさっきの魔法までしか、知らないのでは?」
「魔法自体は、先程までの魔法しか知りません。ですが、それを組み合わせる事は知っています」
「組み合わせる。魔法をですか?」
魔法を組み合わせる。
クレアさんが、知っていると言っていた魔法は4つ。
それらの魔法を組み合わせるという事だろうか?
途端に難しそうな響きを聞いて、気を引き締める事にした。
「ふふふ、そんなに警戒しなくても大丈夫ですよ。組み合わせると言っても、元々が基礎の魔法です。タクミ様なら、すぐに使えるようになると思います」
俺が気を引き締め、次にやる事へ備えた事がわかったのか、微笑んだクレアさん。
やっぱり、俺の表情って読みやすいのかな?
「それでは……水と火を組み合わせてみましょう」
「水と火……」
「はい。これらを組み合わせる事で、霧を出す事ができます」
霧か……水と火の魔法という事だから、水を火の熱で蒸発させて、という事か?
水蒸気の事かもしれないな。
「いきます。……ウォーター・ファイア・エレメンタルミックス・ミスト!」
先程よりも、少し気合の入った表情をさせ、手を頭上へ掲げたクレアさんが、呪文を唱える。
エレメンタルミックス……か、魔法を混ぜるという事なんだろうが、呪文が長くなったな。
これが、セバスチャンさんが言っていた、効果の高い魔法程呪文が長くなるという事の一因なのかもな。
「手から煙が出てる!」
「いや、あれは水蒸気……霧だね」
「ふふふ、その通りです」
頭上に掲げた手のひらから、次々と霧が発生されて、広がる。
魔力をあまり使っていないのか、霧自体はそこまで広がる事なく、風に吹かれて消えて行った。
簡単に考えると、水と火の魔法が同時に発動し、火の熱で水が蒸発。
その状態で手の平から出て来た水蒸気が、すぐに大気によって冷やされて霧になった……のかな?
いや、魔法なんだから、もっと違う現象が起きてるのかもしれない。
昼の暖かい気温で、霧になるかどうか、俺にはわからないしな……。
「ふぅ……何とか失敗せずにできました」
「クレアさんでも、失敗とかするんですか?」
「もちろん、しますよ。それに、魔法は得意分野というわけではありませんからね。タクミさんの前で失敗すると考えると……ちょっと緊張しました」
霧の発生を止めて、ほっと息を吐くクレアさん。
クレアさんでも、失敗を気にするんだなぁ……と思って声をかけた。
すると、恥ずかしそうに笑いながら、緊張したとの本音が聞けた。
その笑顔は、凄く魅力的に見えて、ドキッとしたが、今は魔法の講義中だ……おかしなことを考える時間じゃないからな。
ともかく、俺相手に緊張とかしなくてもいいのに……と考えて、意識を逸らした。
「えぇと、魔法の組み合わせですが、これにはまず、発動場所に集中させる魔力を二つに分ける必要があります」
「二つにですか?」
「はい。通常は一か所に集めた魔力に対し、呪文で属性と動作を決めて発動するのですが……これは二つに分けた魔力を同時に変換、発動させるのです」
途端に、難度が上がったような気がする。
二つに……か。
んーと、体内の魔力を手の平に集めて……それをこねるようにしながら、二つに分ければいいのかな?
何となく、団子とか練り物を作ってるような事を、頭の中で思い浮かべた。
一つに集中した魔力の塊を半分にし、それを個別にしてはっきりと分ける。
なんとなく、さっきクレアさんがしていたように、手を頭上に掲げ、その手の中で小さな球形を二つ作るように意識して、魔力を集める。
魔力を集める作業にも、大分慣れたな……なんて思いながら、手に集中している魔力のうち、右を火の魔法用、左を水の魔法用と意識した。
「……ウォーター・ファイア・エレメンタルミックス・ミスト!」
「え!?」
そのまま、先程クレアさんが唱えた呪文を復唱。
集めていた魔力を変換、動作決定をして発動させる。
目を閉じて集中していたからわからないが、クレアさんの方から驚いた声が聞こえた。
俺がいきなり魔法の実践に移ったから、驚いたのかな?
魔法が発動したのか、手の平に集まっていた魔力がなくなるような感じがして、俺は目を開けた。
成功しているのか、それとも失敗して魔力が霧散しただけなのか……。
驚いた表情でこちらを見ているクレアさんの視線を追い、自分が掲げている手の先へ顔を向けた。
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