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第328話 各属性魔法を教えてもらいました
第328話 各属性魔法を教えてもらいました
「……ライトエレメンタル・シャイン」
「ナイフが光ったよ!」
「……成功、ですね。まさか一度失敗しただけで、成功させるなんて。さすが、タクミさんですね」
魔法を発動させると、今度は確かにナイフの刃が光を放っていた。
それを見ていたリーザは、手を上げて喜び、クレアさんの方は少し驚いているようだ。
「成功、ですか?」
「はい。一度失敗し、口頭で説明を受けただけで、成功させるのには驚きましたが……間違いなく成功していますよ」
「そうですか、良かった」
クレアさんの説明が、わかりやすかったからかな?
「私は失敗してばかりで、すぐには成功させられませんでした」
「クレアさんが?」
「えぇ。物に魔力を通す……という感覚を中々意識する事が、できなかったのです。タクミさんを見ていると、自分の才能の無さに呆れますね」
「いやいや、クレアさんの才能がない……というわけじゃないと思います。クレアさんが説明してくれた事が、理解しやすかったおかげです」
「ふふふ。タクミさんは、セバスチャンも言っていましたが、魔力に関する感覚が鋭いのですね」
「そう、なんですかね?」
以前にも、セバスチャンさんに教えられた時、感覚が鋭いとか、才能があるとか、そういう風な事を言っていた気がする。
本当にそうなのかはわからないが、クレアさんに褒められてちょっと嬉しい。
「では、そんなタクミさんに、新しい魔法をお教えします」
「はい、お願いします」
笑っていた顔を引き締めて、クレアさんが俺に真剣な眼差しを向ける。
俺も気を引き締めた。
何故か隣でリーザも真剣な表情になってるが、リーザが習うわけじゃないんだけどな?
とにかく、新しい魔法か……光を放つ魔法は、使い方次第で相手の目を眩ませたりと、発動まであまり時間がかからない事もあって、応用をする事もできたが、クレアさんから教えられる魔法もそういう使い方ができるのだろうか?
「教える魔法は、水と風、あとは火ですね。……私も、これくらいしか使えないのですが」
「そうなんですか?」
「えぇ。私は、本来守られる立場にありますからね。表立って魔法を覚え、戦えるようになるよりも、領内の事を勉強した方がいいと考えたのです」
「成る程……」
クレアさんには、フィリップさんを始めとした、護衛の人達がいるからな。
女性は守られて戦わない者……とまでは考えていないが、クレアさんが魔法よりも貴族としての勉強を優先するのなら、そうする事が正しいと思える。
まぁ、結構好奇心が強い所や、お転婆な部分があるから、ちょっとだけ意外だったけどな。
この世界では、魔法が珍しいものじゃないんだから、俺みたいに魔法と聞いてワクワクするような事はないんだろうと納得しておいた。
クレアさんよりも好奇心旺盛なティルラちゃんも、魔法より剣を使って体を動かしたいみたいだしな。
「ではまず、火の魔法ですね。これはタクミさんも見た事があるかと思います。……ファイアエレメンタル・キャンドル」
そう言うと、クレアさんは人差し指を立て、その先に小さな火を灯して見せた。
確かこれは、最初に魔法の説明を受けた時、セバスチャンさんが使って見せてくれた魔法だ。
ライター程度の火を灯して、これで薪に火を付けたりするものだな。
気軽なのはライターの方だろうが、こっちは正真正銘、種も仕掛けもない魔法だ……それだけでちょっとワクワクする。
「次に……ウォーターエレメンタル・ウォッシュ」
「水、ですね」
すぐに灯した火を消したクレアさんは、次に手の平から水を出して見せた。
これは、森の探索時、物を洗う時に水を出してたものだな。
確か、リーザを連れ帰った時、レオが使った魔法と違い、周囲の水分を集めるため、飲むのには適してないとか。
確かに、今呼吸している空気中の水分だけならいいが、土に含まれている水分やらも集めるようだから、飲みたいとは思えないな……何が混ざってるかわからないし。
以前に見た時と同じように、物を洗剤で洗う時くらいしか使えないかもな。
「最後に……ウィンドエレメンタル・エア」
今度は風の魔法らしい。
クレアさんが俺に向けた手の平から、ほんの少しの風が吹いて来た。
薬を調合する時に使えそうな魔法だが、レオが使うよりも少し弱い気がした。
このあたりは、込める魔力によって違うのかな?
風の魔法は、ちょっと応用して何かに使うのは、難しいかもしれないな。
「以上が、基礎属性による魔法になります。光の魔法と同じで、魔力もあまり使いませんし、呪文も簡素です。ナイフに魔法を宿す事のできたタクミさんなら、問題なく使えると思いますよ」
「そうですかね? とりあえず、使ってみます」
クレアさんに言われて、魔力を集めるために意識を集中する。
魔法に大事なのは、魔力を意識して使用する事と、それを変換する呪文だ。
まずは、火の魔法から……。
「……ファイアエレメンタル・キャンドル」
「火が出た!」
クレアさんと同じように、右手の人差し指に魔力を移動させ、呪文を唱える。
すると、ボッという音と共に、小さな火が灯った。
さっきクレアさんが使ったのより、火が大きいかな?
クレアさんが目の前で使って見せてくれたおかげで、魔力の移動だけでなく、変換や魔法の動作も簡単に決定させる事ができた。
魔力と呪文だけでなく、そういった意識も重要だと聞いていたからな。
もし、何も見た事なく、いきなり使って見せろと呪文を教えられたら、発動するのも難しかったかもしれないな。
横で、俺の魔法が成功する事に喜んでるリーザを見ながら、次の魔法へと取りかかった。
「では次に……ウォーターエレメンタル・ウォッシュ」
「水が出たよ! 飲んでいいの?」
「これは……飲まない方がいいかな。喉が渇いたのかい?」
「ううん、まだ大丈夫」
「そうか。喉が渇いたら、すぐに言うんだよ?」
「うん!」
水の魔法は、クレアさんの時と同じく、水道の蛇口をひねったくらいの勢いで地面に流れて行く。
手の平から水を流しつつ、手を伸ばそうとしているリーザを止める。
レオが使った魔法は飲める水だったが、これは違うからな。
毒が混ざってるわけではないと思うが、できるだけ飲まない方がいいだろう。
お腹を壊したりしちゃ、いけないからな。
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