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第273話 綺麗な色のワインを飲んでもらいました
第273話 綺麗な色のワインを飲んでもらいました
レオの足を、ゲルダさんが持って来てくれた雑巾で綺麗に土や砂を拭きとってから、改めて食堂へ向かう。
ゲルダさんは雑巾を持ったまま、エッケンハルトさん達がいる食堂へは行けないため、俺やレオとは別行動となった。
「レオ、今度から外から入る時は、誰かに雑巾を用意してもらうんだぞ? 俺がいたら、誰かに頼むから」
「ワフ!」
食堂に向かう道すがら、レオに言い聞かせる。
これで、廊下の掃除が大変になる事は少なくなると思う。
まぁ、完全というわけじゃないけども……多少は許して欲しい。
「あ、タクミ様。こちらにいましたか」
「ん? あ、ライラさん」
「ワフ?」
食堂までもう少しという所で、後ろから声をかけられた。
振り向くと、そこにはライラさんがいた。
「ミリナに指示していた薬の調合ですが」
「どうでしたか?」
「あれから2度に分けて調合し、最初に作られた物と同じ物ができたのを確認しております。今、ミリナがヘレーナの所へ持って行っております」
「そうですか、ありがとうございます。ライラさんもお疲れ様です」
「いえ、私は仰いで風を送っていただけですので……。ミリナを労ってあげて下さい」
「はい、それはもちろん」
ミリナちゃんは、頼んでいた調合をちゃんと終わらせてくれたようだ。
ライラさんに言われるまでも無く、会ったらちゃんと労っておかないとな。
食堂に向かう途中だったライラさんと一緒に、廊下を歩いて食堂へ。
「では、頂こう」
「はい」
「頂きます」
「頂きますわ」
「はい!」
「ワフ」
「キャゥ!」
食堂へ辿り着き、テーブルへとついて、エッケンハルトさんの合図で皆食べ始める。
エッケンハルトさんがいるためか、今日の料理も肉が多めだ。
レオやシェリーは喜ぶだろうし、俺も嬉しいんだけど、クレアさんやアンネさんには少し重たいかな?
と思ってそちらを見ると、あまり気にせず食べてるようだ。
ティルラちゃんは、俺と一緒に運動しているから、慣れて来たのもあって食欲旺盛だ。
いっぱい動いて、いっぱい食べる……健康的でいいな。
「んぐ……それでタクミ殿。これを説明して欲しいのだが?」
「あぁ、すみません。説明させて頂きます」
肉に齧り付きながら、エッケンハルトさんが料理と一緒に用意されてるワイングラスが気になるようだ。
グラスの中には、昼に確認した時と同じ、ピンク色の綺麗なロゼワインが注がれている。
……改めて見ても、やっぱり綺麗な色だなぁ。
説明という言葉に、後ろで控えていたセバスチャンさんの目が光った気がしたが、俺が説明するとなって少し落胆して肩を落としている。
まぁ……今回は仕方ないかな。
「えーっと、ラモギを入れてみたワインですが、今用意されてる物のように、色が変わりました。病の方は、レオに確認をしたところ、ある程度以上のラモギを入れれば解消されるようです」
「ある程度か……どのくらいだ?」
「一人分の治療に使うラモギの、約半分ですね。それより少ない量のラモギでは、病は解消されていなかったようです。そうだよな、レオ?」
「ワフ!」
俺が説明を開始してから、クレアさんやアンネさんも、食事の手を止めて聞く体勢に入っている。
二人共、目の前に置かれたロゼワインの事を興味深そうに見ながらだが。
ちなみに、ティルラちゃんとレオ、シェリーの方はブドウジュースにした物が用意されていて、さっきからそれぞれ美味しそうに飲んでいる。
「ふむ、成る程な。しかし色が通常のワインとは違うようだが?」
「はい、それはラモギを混ぜたためだと思われます。セバスチャンさん、確か……ラモギを水に浸たら、色が出るんでしたっけ?」
「はい。ラモギが水に溶けた結果、紫色になるのが通常と言われています。ラモギの成分がそうしているのか、水が変質したためなのかは、わかっておりませんが……これを見ると、ラモギの成分が原因のようですな」
色を気にしていたエッケンハルトさんに説明しながら、セバスチャンさんに話を振ると、目を輝かせて説明してくれた。
……よっぽど説明したかったんだな。
エッケンハルトさんを始め、クレアさんもアンネさんも興味深そうに、ロゼワインの注がれたグラスを見ている。
「綺麗ですね……」
「ええ。通常のワインも綺麗ですが、透き通っていて特に綺麗ですわ」
「女性に人気の出そうな色合いだな。確かに綺麗な色だ、これはこれで良さそうだ。それで、味の方はどうだ?」
「味の方は……はっきりとは言えないのですが、ランジ村の物よりも少しだけ変わっていますね」
「そうなのか?」
「はい。俺自身が、ランジ村のワインを飲みはしましたが……あまりお酒には詳しくないので、何とも言えないのですが、村で飲んだ物よりも甘く感じました。まぁ、ラモギを混ぜているので、じっくり味わってみると、ほのかに苦みも感じるのですが……」
「苦みか……成る程な。では、まずは飲んでみるとしよう」
「はい」
「こんな綺麗な物、飲むのももったいないように思いますが……」
鮮やかなピンク色がグラスに入って透き通って見える。
綺麗なロゼワインを見て、感嘆の息を漏らしているクレアさんとアンネさん。
エッケンハルトさんも言ってるが、思った通り女性に気に入られる色のようだ。
味の確認をしたい……というよりも、お酒を飲みたくてうずうずしているエッケンハルトさんに、俺が感じた事を説明し、飲んでもらう。
クレアさんは、見た目の綺麗さに少し躊躇していたようだが、他の皆が飲み始めたのを見て、自分もとグラスに口を付けた。
「……甘い! これ程甘く飲みやすい物は初めてです!」
「ですわね! こんなに美味しいなんて! 綺麗な色合いとフルーティな飲み口、それでいてしっかりワインのコクもありますわ!」
「ふむ、確かに美味いな。タクミ殿が言っていたように、ほのかに苦みも感じるが……それがまた甘さを引き立てている」
「はい。気になる人は気になるかもしれませんが……俺は、ランジ村で飲んだ物よりも美味しく飲めたと思います」
「そうか。これは良い物を作れたようだな」
ロゼワインを飲んだ皆は、目を見張って美味しさに驚いている。
エッケンハルトさんは、苦みにも気付いたようだが、それも一つの味として気に入ったようだ。
クレアさんとアンネさんは、甘さやフルーティな事に感動して、あまり苦みを気にしていない様子。
ティルラちゃんやレオ、シェリーはそもそもワインではなくジュースなので、我関せずと甘いジュースを飲んで嬉しそうにしていた。
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