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第147話 女の子達は仲良くレオとお遊びしました
第147話 女の子達は仲良くレオとお遊びしました
「タクミ様、クレアお嬢様から聞きました」
「あぁ、セバスチャンさん」
ラモギの薬作成を終えようとした所に、クレアさんから事情を聞いたらしいセバスチャンさんが、裏庭に来た。
「ギフトの過剰使用にならないよう、お気を付け下さい」
「はい。まだ余裕はある気もしますが……無理はしないようにしますよ。ミリナちゃん、これで今日は終わりだ」
「わかりました」
セバスチャンさんの言葉に答えながら、ミリナちゃんにラモギを渡す。
それを布で包んだのを確認し、今日の作業は終了だ。
「タクミさん、鍛錬終わりました!」
「お疲れ様、ティルラちゃん。これ、今日の薬草だよ。ちゃんと食べて疲れを取ってね」
「はい、ありがとうございます!」
「師匠、いつのまにそんな物まで……」
鍛錬が終わったティルラちゃんに、筋肉疲労を回復させる薬草を渡す。
俺のラモギ栽培を見ていたミリナちゃんが、驚いた様子だがラモギを作る片手間に、別の薬草を作るくらいは出来るようになって来た。
まぁ、作り慣れた薬草だから出来る事だけどな。
「ワフワフ」
「レオ?」
薬草の栽培等で、屈んでいた腰を伸ばしていたらレオが戻って来た。
ハンネスさんやロザリーちゃんと一緒なんじゃ無かったのか?
あ、ロザリーちゃんを背中に乗せてるな……遊ばせるためかな。
「レオ様ー」
「キャゥー」
「ワフワフ」
ティルラちゃんとシェリーが、裏庭に来たレオを見て嬉しそうに掛けて行く。
ロザリーちゃんも一緒だけど、ティルラちゃんならすぐに親しくなるだろう。
向こうも、人見知りをするようには見えなかったしな。
ティルラちゃんがレオに抱き着いたり、シェリーも含めて皆を乗せて走ったりするのを、ミリナちゃんと眺めながら夕食までの時間を過ごした。
予想通り、ティルラちゃんとロザリーちゃんはすぐに仲良くなった。
レオという、共通の遊び相手がいたからというのも大きいのかもしれない。
「……ミリナちゃん。一緒に遊んで来ても良いんだよ?」
「いえ、私は別に……」
レオ達の方を見ながら、ソワソワとしていたミリナちゃんに一緒に遊ぶよう勧めてみたが、否定された。
けど、その言葉も表情も一緒に遊びたいのはすぐにわかる反応だ。
そう言えば、孤児院でもミリナちゃんは俺と話してたせいで、レオと遊んでなかったな。
この屋敷に来てからも、レオと接する機会はあったが勉強だなんだで、遊んでる時間が無かったしな。
「ほら、レオ達も人が増えたら嬉しいだろうから」
「で、でも……」
躊躇するミリナちゃんの背中を押しながら、レオの方へ押す。
「レオ、ちょっと良いか?」
「ワフ?」
「どうしたのですか、タクミさん?」
「どうかしましたか?」
「キャゥ?」
ミリナちゃんを押しながら、レオを呼ぶ。
一緒に来た他の皆も何があったのかと声を掛けて来る。
「ミリナちゃんも混ぜてあげてくれないか?」
「ワフーワフー!」
「良いですよ。ミリナ、一緒に遊びましょう!」
「ミリナ……さん? 皆で一緒だと楽しいです」
「キャゥキャゥ!」
「……はい……!」
俺が皆に聞くと、いの一番にレオが嬉しそうに鳴き、それに続いて他の皆もミリナちゃんを歓迎するように声を掛けた。
そんな反応を見て、ようやく頷いたミリナちゃんはレオ達の方へ駆けて行った。
「タクミ様、よろしいので?」
「まぁ、勉強や使用人見習いで忙しそうでしたからね。たまには皆と遊ぶ事も良いと思いますよ」
俺達の様子を見守っていたセバスチャンさんに、そう答えながら作ったラモギを包んだ物を渡す。
「ランジ村のラモギです。明日追加でまた作る予定ですが、今日の分はこれだけですね」
「畏まりました」
ラモギの薬を持って、屋敷の中へ帰って行くセバスチャンさんを見送り、俺は休むようにその場へ座って朗らかにレオ達が遊ぶ様子を見守った。
夕食の時間になり、外も暗くなってきたためレオとの遊びは終了。
よほど楽しかったのか、ミリナちゃんは残念そうな顔をしていた。
また近いうちに遊ばせてあげようと思う。
「私共も一緒に……良いのでしょうか?」
食堂にて、同じテーブルについたハンネスさんが、目の前に置かれた料理を見ながら聞いている。
「良いのですよ。ここでは公爵家だからと、格式ばった事をするつもりはありません。明日までゆっくり過ごして下さい」
「……ありがとうございます」
「ありがとうございます!」
クレアさんの返答を聞いても、ハンネスさんは緊張している。
公爵家の屋敷で、ご令嬢と一緒に食事をするなんて、ハンネスさんは恐れ多いと考えているのかもしれない。
付近の領主なのだから、わからないでもない。
ロザリーちゃんの方は、レオと遊んで色々慣れたのか、元気よくお礼を言って料理を食べ始めた。
クレアさんもそれを微笑んで見ている。
「美味しいです!」
「これ、ロザリー」
「良いのですよ。美味しい料理を食べて、美味しいと言うのは大事な事です。ね、ヘレーナ?」
「はい。料理人にとってその言葉は何よりの励みになります」
料理を食べたロザリーちゃんが、満面の笑みで声を上げた事をハンネスさんが注意する。
クレアさんはそんなハンネスさんに、ロザリーちゃんを注意しなくても大丈夫だと伝えた。
ヘレーナさんも含め、皆美味しそうに食べるロザリーちゃんを見て微笑ましそうだ。
子供の素直な感情表現は、見ていて微笑ましいな。
「それでは、今日はゆっくり休むのですよ?」
「わざわざ部屋までご用意下さり、ありがとうございます」
「おやすみなさい、クレア様」
食後、ハンネスさんとロザリーちゃんは用意された部屋で休むため、メイドさんに案内されて食堂を出る。
「タクミ様、少々お時間を頂いてもよろしいでしょうか?」
「どうかしたんですか?」
ハンネスさん達が食堂を出るのを見送って、剣の素振りを始めようと立ち上がったところで、セバスチャンさんに呼び止められた。
「今回のランジ村へ行く件ですが、タクミ様とレオ様だけでの行動となるかと思われます」
「……そうですね」
セバスチャンさんの言葉に、俺は考えながら答える。
クレアさん達は薬草があるとは言え、病気が蔓延しているらしいランジ村に行く事は出来ないだろう。
それに、セバスチャンさんも含めて例の店の事があるから、忙しいだろうしな。
情報を集める事や、店の監視も含めて屋敷を離れない方が良いと思う。
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