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第131話 女の子に語ってしまいました
第131話 女の子に語ってしまいました
「貴方が薬師様ですか?」
「はい?」
庭を眺めながら、淹れてもらったお茶を飲んでのんびりしていた時、ふいに後ろから声を掛けられた。
「君は?」
振り向くと、そこには孤児院の子供の一人だろう。
ボサボサの髪をそのまま伸ばし、簡素な服を着た、15、6くらいの女の子がいた。
「ミリナ、どうしたんですか?」
「院長先生、すみません。薬師様にお礼を言いたくて……」
ミリナと呼ばれたその子は、俺を見て嬉しそうに微笑んだ後、ペコリとお辞儀をした。
「薬師様、ありがとうございました。おかげで元気になれました」
「どういたしまして。そんなに改まってお礼を言わなくても良いんだよ? 子供達の元気な姿を見られるだけで十分だ」
礼儀正しくお礼をするミリナちゃんに、そう言って俺はアンナさんにこの子の事を聞く。
「ミリナは、孤児院に今いる子供達の中で最年長の子です。と言っても、もう18……成人してから随分経っているのですけど……」
「院長先生、私は人の役に立つ仕事がしたいのです!」
「……こう言って、仕事があるのも蹴ってまで、まだ孤児院にいるのです」
困ったような顔でミリナちゃんを見るアンナさん。
……人の役に立つ仕事ね……。
「ミリナちゃん、私が以前来た時もそう言って、使用人になる事を断ったんですよね」
クレアさんは苦笑しながらミリナちゃんを見ている。
使用人も、十分人の役に立つ仕事だと思うけどなぁ。
俺がどれだけ、ライラさんやゲルダさん達にお世話になっている事か……。
「院長先生やこの孤児院の皆には、私を拾って育ててくれた事を感謝しています。だからこそ私も人の役に立つ事をしたいのです。……薬師様は凄いです。こんな簡単に孤児院の皆を助ける事が出来るなんて……」
そう言って、俺を尊敬するような目で見るミリナちゃん……なんだか、最初にティルラちゃんと会った時に同じように見られてた気がするなぁ。
「ミリナちゃん、人の役に立ちたいという事だけど、どういう事をしたいんだい?」
「……それは……」
ミリナちゃんに質問をしたが、考え込むばかりで明確な答えは帰って来ない。
予想だけど、漠然と人の役に立つ事をしたいと思うだけで、どういう事をしたら良いかまではわからないんじゃないかと思う。
そういう事もあるよなぁ……俺も、こういう事をしたいと考えて、でもどうしたら良いかわからない……何て事もあった。
「ミリナちゃん。例えばだけど……大通りに野菜を売ってる露店があるよね?」
「はい」
「あの野菜を売ってる人達は、誰かの役に立って無いと思うかい? もし野菜を売る人がいなくなったら、誰も買えなくなって困ってしまうよ?」
「でも……あれは商売です……」
商売だから、お金との交換で成り立つ物で、物を売って利益を得るから、人に役に立ってる事と違うんだと考えてるんだろう。
「商売でも、それを売る事で喜ぶ人がいる。売ってくれる人がいる事で、農家でなくても野菜を食べる事が出来る。それは十分に人の役に立ってるんじゃないのかな?」
「それは……確かに」
人の役に立つという事だけを考えると……どうしても、困っている誰かを助けたり、国に貢献する、と言った事が頭に浮かぶだろう。
でも、そうしたいと考えてすぐ、困っている人がいたり、危機に瀕してる人がいるわけじゃない。
結局は、本人が何をしたいか……それを決めて実行すれば、人の役に立つ事が出来ると、俺は思う。
「ミリナちゃんは、どんな事をしたいんだい? どんな事で人を喜ばせてあげたいと思うんだい?」
「……えっと……私は……」
今ミリナちゃんの頭の中で色々な考えが浮かんでいるんだろう。
悩んでいる間、ミリナちゃんは色んな表情を見せている。
「……薬師様に病を治してもらえて嬉しかったです。それに、孤児院に拾ってもらった事も……」
「うん、そうだね」
「でも……私には同じ事は出来ません……」
「それはどうして?」
「孤児院を自分でやっているわけではありませんし、薬の知識もありません」
「それなら、そういった事をするために勉強すれば良いんだよ。やりたい事を考えて、実行するために自分には何が足りないか、足りないものを補うにはどうすれば良いか。そうすれば自ずと出来るようになって行くものだよ」
まぁ、どうしても出来ない事というのはあるけれど、それをこの年の子に教えるのはちょっと躊躇うね。
世の中は厳しいと現実を突き詰める事は、良い事とは限らないと思うから。
それが駄目だと言ってるわけじゃないけどな、言わないといけない相手もいるだろうし。
「勉強……薬師様! 私に薬の事を教えて下さい!」
「え? 俺?」
「ミリナ、タクミ様に失礼でしょう。これだけ優秀な方なのですから、きっと忙しい方なのよ」
ミリナちゃんは、悩んでいた俯いていた顔を上げ、俺を真っ直ぐ見て告げて来た。
……俺に付いて薬の勉強かぁ……俺自身薬の知識が豊富という訳じゃ無いからなぁ……『雑草栽培』があるおかげだし、そもそも薬師と言うのも能力を隠すためだし……。
クレアさんに助けを求めるように顔を向けると、ニコニコ微笑んで俺を見ている。
あ、これは助けてくれないやつだ……むしろ、俺がどう答えるか期待してる雰囲気だな……。
「いえ、俺はそんなに忙しくは無いんですが……ミリナちゃん、どうして薬の事を知りたいんだい?」
「今回、私もそうですけど、孤児院の皆が病に罹っても何も出来ませんでした。それを薬師様は、すぐに病の対処を考え付いて、薬で皆の病を治してくれました。今ではほとんどの人達があんな笑顔になっています!」
熱のこもったミリナちゃんの視線を受けて、一度レオ達と遊んでる子供達を見る。
そこには笑顔ではしゃぎまわっている子供達の姿があった。
ミリナちゃんの言う通り、あの笑顔のために働きたいと思うのなら、悪くは無いのかな……。
「ミリナちゃんの言いたい事はわかったよ。確かに子供達が笑顔になるのは素晴らしい事だ」
「じゃあ!」
「でもちょっと待ってね。俺はクレアさんの所でお世話になってる身だから、俺一人では決められないよ」
「あら、私に振るのですか、タクミさん?」
ミリナちゃんはこの数分で、俺に師事する事を決めたのだろう……俺を見る目が期待に満ちている。
でも、俺は今屋敷で暮らしてる。
この孤児院にいるミリナちゃんに教えるのは難しい事だと思う。
ミリナちゃんが一人で屋敷に来るのは危ないだろうし、忙しいという程じゃないが、俺も鍛錬や薬草を卸す事を考えたら、毎日ここまで来れるわけじゃ無いからな。
とりあえず、クレアさんと相談しない事には決められない。
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