第210話 「「双子のアンドリューとインザンギ」」
一体、いつから、僕たちは幻想の中にいたのか?
いや、それよりも……そんな事よりも、一体、いつから彼らは……敵だったのか?
彼らは名を名乗る。
「双子のアンドリュー」
「双子のインザンザンギ」
今まで十二使徒と同様の名乗り上げ。
仲間であったはずの最強探索者2名は―———自分たちは敵だと伝えてきた。
「なるほど、道理で」と言ったのはドラゴンだった。
「道理で動きが鈍すぎて、体が思う通りに動かないと思いました。私の油断しやすい体質やサクラさんの『勇気の祝福』は幻術への弱点になりますからね」
『勇気の祝福』————ドラゴンからの祝福により恐怖への鈍化。
性格や人格にも影響がある……そんな話だったな。僕自身、すっかり忘れていた。
僕やドラゴンは幻術耐性が低いと弱点があるのだが――――
逆にオントやカイムは?
二名は僕の視線から目を逸らした。どうやら、彼らは素で油断したらしい。
オントは誤魔化すように口笛を鳴らす。
そんな僕らを見る最強探索者2人は―———
「「ふっ、幻術でも我らの想像する最強のドラゴン像を弱体化と思うとは……封印したかいがありました」」
「一体、どこから幻術……いや、それよりも、どこから貴方たちは裏切っていたのか?」
「「どこから? あえて言えば最初からですかね?」」
「最初から?」
「「今、『教会』の信者はどこにでもいて、誰もがその影響下にあるのです。そして、その信仰心は人を不可能の領域まで引き上げるのです」」
それだけだった。それだけ言うと唐突に戦闘が始まった。
今まで2人が見せた戦術。
前衛のインザンギが蛇行しながら前進。後衛のアンドリューが魔法で援護。
そのコンビネーションが今度は敵にではなく僕らに向かって来る。
『最強の探索者』
その二つ名の通り、隙のない動きだ。だが————
『龍の足枷』
『龍の足枷』
ムッ……声が被った。
インザンギの前進も、アンドリューも援護も無効化する人類最強の武器。
『龍の足枷』が不可侵の壁として出現させる。
声が被ったのは、僕だけではなく、隣にいたカイムも同時に『龍の足枷』を具現化させたからだ。
足を止めたインザンギを無視して、後衛のアンドリューを狙い『龍の足枷』の柄を投げつける。
鎖のついた柄は、その名を示すように—————龍の姿を表すように蛇行しながらアンドリューを襲う。
アンドリューは魔力を発動して防御壁を展開―———すぐに破棄。 ヘッドスライディングのように頭から地面を滑って回避。
それは『龍の足枷』が接触と同時にアンドリューの防御壁は砕け散ったからだ。
破棄して、すぐに逃げたのは良い判断だ。『龍の足枷』が2つなければだ。
僕から少し遅れたカイムの投擲。 彼もまた柄の部分を投げていた。
時間差攻撃の波状攻撃。 回避は許さない。
一撃で魔物を粉砕する攻撃をアンドリューがまともに受けた。
「アンドリュー!」
インザンギは叫び声で相棒の名前を呼ぶ。
だが、既に彼の目前には1つの影が迫っていた。
「アンタ隙だらけだぜ? 戦場でも自分よりも相棒を優先するのかい?」
オム家の鬼子 オム・オント。
彼は無手ではあるが、彼の長い手足は凶器だ。
インザンギが振り下ろす長剣よりも早く、彼の腕はインザンギのアゴを捉える。
まるで大型魔物の突進を喰らったようにインザンギの体は宙を舞った。
アンドリューとインザンギ。
彼らは2人は『最強の探索者』であり、『最強』ではなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます