第141話 村の果て



 10歳くらいの男の子だ。少年が止まったの一瞬だった。


 少年は、対面した僕に酷く驚いた様子で、物陰に隠れた。


 隠れたまま、じっーとこちらをのぞいている。


 「やれやれ、嫌われたものだ」と僕はため息をつきながら、ポケットをあさる。


 なにか、気を引くようなものでもあれば……ポケットの中には硬貨が1つだけだった。


 「よし、これを使って……」


 僕は少年に見えるように手の甲を見せる。右手だ。


 親指と人差し指の間に硬貨を挟んでるのを見せた。そして、そのまま―――


 硬貨を人差し指の上に倒すと、微調整で人差し指と中指で挟んで立たす。


 それを連続して左手に硬貨を移動させる。


 奇術のテックニックの1つ、コインロールだ。


 種も仕掛けもなくテックニックで観客の死角をつく技術。


 左手の小指まで移動させると、上に硬貨を投げる。


 落下のタイミングを合わせて、両手を素早く何度も交差させて―――


 「はい、消えた!」


 どや顔で見せて奇術に少年は、体を乗り出してみていた。 


 「お兄ちゃん、すげぇ……って、そこ」


 少年は僕の靴に落下した硬貨を指差していた。


 「アハ、バレたか」


 「そりゃ、簡単にわかるよ」



 ・・・

 ・・・・・・

 ・・・・・・・・・



 「オレの名前はカツシ」


 少年は名乗った。互いに自己紹介を終えた。


 僕は目的を伝えると―――


 「へぇ~ 村を結界を取り除くためだって?村長もバカな事を考えるもんだ」


 「結界?」と尋ね直す。


 「そりゃ、この村に魔物が入って来ないのは結界があるからだろ?」


 「確かに、そう考えるのは普通だけど……結論を出すのは早いというか、別の可能性も調査しないと」


 「大人はいつもめんどくさい事を考えるんだね」


 「まぁね、保証が必要なのさ」


 「保障?」


 「誰も責任を取りたくないから、責任を取らないための保障が必要なのさ」


 「ふぅ~ やっぱり、大人はめんどくさいね」


 「まぁ、僕は大人って年齢じゃないけどね」


 2人して笑った。


 しかし、結界のアイテムか。僕は地面を見る。


 「何だこりゃ!」


 僕の呟きに隣を歩いてたカツシ少年は「?」と表情を浮かべていた。


 結論から言うと―――


 地面から魔力の流れを掴もうとした。でも、できなかった。


 魔力が地面から察知できなかったのではない。


 この村の魔力濃度が高すぎらのだ。 空間に大量の魔力が溢れていて、思わず魔力酔いしそうになる。


 「中々、愉快な村だね、こりゃ……」


 当たり前だが、僕の言葉の真意は伝わらなかったのだろう。


 カツシ少年は僕の言葉を否定した。


 「愉快なんて、この村のどこにもないよ。皆、死んだような表情して毎日の繰り返しさ」


 「詩人だね。とても10歳の言葉とは思えないよ」 


 「本当の事だよ。サクラお兄ちゃんだって村民を見たでしょ?外の世界に興味がない。見ようともしない。だけら、みんなにはお兄ちゃんの事が見えないんだよ」


 「見えないって、そんな……」


 ゾクリと寒気が走った。


 「いや、たとえ話だよ。なんでお兄ちゃんまで死人みたいな顔してんの?」


 「コイツ!?」


 グリグリとコブシをカツシの頭に押し付ける。


 「痛っいたたたたい!ごめんよ、お兄ちゃん!」


 それから、直ぐ―――


 「ここが村の出入り口の1つだよ」


 村の端までたどり着いた。

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