少女には殺意がよく似合う

第82話 プロローグ 暗闇の牢獄


 目が覚める。周囲は暗闇……


 (どこ?ここは?)


 血の匂い?……いや、錆びた鉄の臭いだ。


 体を動かせば、ジャラジャラと金属のこすれる音。


 手には手錠。 足には足枷。 僕は拘束されている。


 (そうか。僕は捕まって)


 自分に何が起きたのか、それを思い出した。


 そのまま、地面の僅かな揺れに身を任せ。


 ただ時間が経過していくのを待ち続ける。


 やがて――――


 「出ろ!」と怒鳴るような声がした。


 暗闇だった空間に光が入り込む。 今まで闇で見えなかった扉が開いていく。

 外の光景は圧巻だった。


 左右の二列に分かれた騎士たち。全員が剣を抜き、その先を僕へ向けていた。


 100人はいるだろうか? 


 「出ろ!」と再び、怒鳴り声。


 僕は外に出た。


 振り返れば黒い箱。それを巨大な馬がひいていた。


 僕がいた場所は馬車であり、動く牢屋だった。


 前に向き直る。 


 二列に並んだ騎士たち。どうやら、その間を通れを言うことなのだろう。


 僕は歩きだす。


 もしかしたら、サヲリさんの姉であるミドリさんもどこかにいるかもしれない。


 しかし、深々と被った鎧兜で顔は隠れて、個人の判別は難しい。


 仮にミドリさんがいるとわかったところで……


 そして、到着。


 僕の目前には白く、巨大な壁がある。 見上げても、その全貌を窺い知る事はできない巨大さ。


 そこは城だ。 


 『シュット城』


 この国の絶対的支配者が君臨する場所。 そして、国の中心部。


 初めて来た……

 その入り口には人が立っていた。


 見た事がある人だ。 有名人……と言っても間違いじゃない。


 長い白い髪と髭。細長い目が特徴的。


 そして、白い服。 胸の左右には天秤のエンブレムが描かれている。


 法務大臣 ジッガ・ヤン


 そんな大物が待ち構えていた。



 ・・・


 ・・・・・・


 ・・・・・・・・・


 広い空間に椅子が2つ。


 「さぁ、座りたまえ」 


 僕とジッガ・ヤンは向かい合って座る。


 2人だけだ。周囲に人はいない。


 どこかに護衛の人間がいるはずだが、どうやって隠れているか? 検討もつかなかった。


 

 「それでは伺おう。あの日―――  君の身に何が起きたのか?」


 僕は覚悟を決め、あの日の出来事を話し始めた。

  

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