鬼人族への融資計画

 小倉との再会を終えての翌日、少し遅めに起き上がる、昨日の酒もあって大分寝てたみたいだな。今日の朝飯は何かなと朝ご飯を求めて長机のある今に入ってみれば、座っていたのは。


「おはようございます、清孝さん」

「あ、おはよう父さんのお友達……誰だっけ?」

「きよたかさんだよ、モミジにぃに」

「「おはよー」」

「おはようおとさん」

「おはよう、他の上の子達は?」


 イルマさんと5歳以下の妹弟とエルだけ、それが気になったので話を聞けば。

今日は小倉が久々に休みらしく上のお兄さんお姉さんは皆で勉強だそうだ。

ちなみに朝ご飯は既に用意してくれてたみたいで焼き立てのトーストと牛乳そして

昨日の残り物カレーであった、一晩寝かせたカレーが美味しいのってなんでだろな。


「勉強なんてやってられねぇぜ、ハギ行こうぜ!」

「引っ張らないでってば、はぁ捕まったら怒るよな、スピードアップ!」

「ボタン! ハギ! 今日は大人しく勉強するって約束でしょう」

「だって勉強つまんねーだもん! それに俺は明日っていったぜ、そんでその明日がいつの明日かは言ってねーし! 少なくとも今日じゃねぇ!」

「またよくわからない屁理屈を!」

「うーっわ、さすがボタン兄さん、屁理屈だけなら家族一だ」

「また、あの二人は……いつもの事なのでお気になさらず」

「いつもあんな調子なので? あの二人は」

「ええ、勉強嫌いのボタンがああやってハギに魔法を使わせて逃げようとするの」

「一人では逃げられないので?」

「ボタンは要領の良い知恵物ですが魔法の幅は並です、それを補うためにああやっていつもハギを巻き込んでるのです、ハギは真面目な子ですが流されやすいのですよ」


 朝ご飯も食べ終えて居間でイルマさんと喋りながら子供達と戯れていると廊下からボタンとハギが走って来てその後ろからマツが追いかける、勉強が嫌で逃走中なようで、ボタンは自分一人では逃げれないと分かっており、弟を利用して逃げようとするのだった実際足の速さをあげる魔法であろう物を使い逃げていく、とうとう二人は逃げ切り着物のマツの方が音を上げてその場にへたり込んでしまう。お疲れ様。


「二人が嫌がって逃げるのは想定済みだよお疲れ様マツ、それとおはよう清孝君」

「おっす小倉、ほっといていいのか?」

「いつも通り、サラワティさんの所に行ったんだろう、なら平気」

「サラワティ?」


 その後ろから小倉が悠長に歩いてきて挨拶をしてくる。俺は二人を逃がしていいのかと尋ねれば、サラワティという青鬼種の女性がいるそうで二人の魔法の師匠だとか自分が勉強を教えるよりその人に魔法を教わった方が後々の為になるだとか。


「お父様はお二人に甘すぎですわ」

「そうはいっても、ボタン悪知恵は働くんだもの、ハギの魔法も合わさったら無理」

「またそれですわ、ボタンだけでは逃げれないのだから、ハギを抑えましょう、ハギは真面目な子ですもの、こっちについてくれるはずですわ」

「いいのいいの、今日は後は自習って言っておいて、清孝君、昨日の話をしよう」

「もう、お父様ったら、分かりましたわ」


 マツは頬を膨らませながらも小倉のお願いを聞いて妹弟達の元へと戻っていく。

そして小倉はそのまま俺の元に歩き、自室へと俺を連れて行こうとする、もうちょい遊んでたかったんだがな、ま、話をするとしようかね。


「昨日君はいったよな? 俺が出そうって」

「ああ、確かにいったぞ、船を買う金、俺が全部用意しよう」

 

 あれだけの遊び金があるのだ、多少融資したところで痛くは無いだろう。

本当に融資できるのか疑うので通帳を小倉に見せてやる。

 年中無休でお国の為に自分の身一つ文字通り命懸けで稼いだ金だ。

そんな事を口に出せば、昨日と同じように労いの言葉をかけてからこれだけのジルがあれば購入も出来るだろうとも言う。


「まぁ正式な手続きは帝都の銀行でする必要があるだろうがな」

「それもだけどこの融資の話を鬼人族全体で会議し、船が売ってる場所なんかも探して、買えたとしても何を売り出すかと色々決める物が多いからすぐとはいかない」

「そうだな、船はジャーミーかアーミテジならいいのがあると思うぞ」

「へぇ、よくそんなの知ってるな、どんな理由で何があるんで?」

「軍用船がある」

「はぁ?」


 旅立つ前に聞いた騎士団長の軍縮の話が本当なら東部の海軍基地がある、ジャーミー領と帝国の真北にある同じく海軍基地のあるアーミテジ領には処分を待つ軍用船がある筈だ、交渉次第で安く買える可能性はあるかもしれない、そうじゃなくても融資した金でそこにいるだろう船大工や職を失った海兵を雇い入れれば時間はかかるかもだが船を造る事は出来るだろう。


「ははっ……もっと早くに君に相談、そうじゃなくても外の人にでも相談してみればいい解決策が出たかも知れなかったね」

「それと商談相手だが最初はヤミーにしろ、領主と一ついい企業を紹介する、ハッチという男を訪ねろ、後ヤミーに細川がいてな土産に米持って手紙を渡して欲しいが」

「わかった、細川君には僕の部下に頼んでおく、それと領主に渡りがつくなら嬉しい

ハッチという男は知らないけど、清孝君の紹介なら悪い奴ではないだろう」


 多分だが売り出すものは食料や香辛料そして米だろう、細川に日本米じゃなくとも米が手に入ったことを知らせてやりたいし、何より美食の街だ新しい食材と調味料は売れる可能性が高い。

ハッチの家は食料の運送屋だその手の仕事なら情報を広げるにはかなり有用な企業のはず。早速、三枚ほど紙を用意してもらい一筆したためる


「本当君には向こうの世界でもこの世界でも手を借りる事になるね」

「頼れ頼れ、人生は助け合いらしいぞ、ユーディ曰くな」

「そっか、うん、そうだったね、いつだって助け合って来た、だからここまで遠くに来れたんだ、ありがとう、だけどさすがに融資については鬼人族全体の会議をして心が決まってからまた話をしたいと思うんだけど」

「ふむ、どれくらいで話はつくと思う?」

「今は種蒔きや植え付け春野菜の収穫で忙しい時期だからね、定例会議以外の緊急会議を開けるのはそれが終わった後、その頃には雨の時期だから湿地帯から出るのが難しい夏の収穫が終わった夏の終わりごろそれまでには、話がつくと思う、いやつかせる」


 さすがに大金の受け取りを小倉と俺だけで済ませるわけにはいかないと言う事で。

会議で決め終わったらまた俺と話をしたいという、話がつくのはかなり間が開くようで夏が終わる頃にはと答えが返ってくるのでその頃には一度帝都に帰る事にすると約束する、さて、俺の手紙が書き終わった頃に昼御飯だと呼ばれるのでいくとするか。

今日の昼ごはんは小麦粉から作った麺で出来たカレー味のにゅうめんだった。

ここに来てからカレー味ばっかだな、美味いけど。

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