友を訪ねて、湿地帯③
「ユーディ、清孝さん、起きてください、朝ですよ」
「んあ、おお、もう朝か、マオー起きろ、朝だってよ」
「ああ……おはようございます、居間を貸してもらい申し訳ないです」
「いえいえ、朝ご飯作りますので、顔洗ってきてくださいな」
鬼人族の過去話を聞いた翌日、ローサさんの声で起こされ、洗面所で顔を洗うように言われる、エルはまだ眠たそうにしてたので寝かせたままのようなので、とりあえず放置して洗面所でユーディと一緒に顔を洗う事に。
「マオー、尋ね人についてそういや、聞いてなかったな」
「ああ、昨日の話にも挙がってただろ、小倉和夫、そいつと友達なんだ」
「それなら早くそういえよ、にーちゃんの集落はこっからすぐだったはずだぜ、途中までなら案内してやれる」
「なら、頼もうか」
昨日は言いそびれていたので改めて誰を探してるか言えば、集落の途中までの案内をしてくれると言ってくれる、道が大方分かれば後はすぐだろう。
顔を洗い終わってタオルを借りて拭いていると、エルもようやく起きたようだ、まだ眠いのか目をこすっていた。
「おはよう、ユーディのあにき、おとさん」
「おはよう! よく眠れたか!」
「おはよう、顔洗うんだろう」
「うん、お布団ありがとう、うんお顔洗う…………届かないよ」
「俺が持ち上げてやるさ、それ!」
「おおっ、ありがとうユーディのあにき!」
それを覚ますためにも顔を洗おうとするが。
赤鬼種の背丈に合わせた洗面台はエルには少々高く届かなかったようでそれを見かねたユーディが持ち上げてやれば無事に顔を洗う事が出来る。
三人仲良く顔も洗い終わって、朝ご飯にしようと居間に戻れば既に用意されていた。ちなみに今日のご飯は昨日のナンとここに来てから相当数食べてるカレーだった。
「さてと、お二人ともお世話になりました、そろそろ出発します」
「ローサお姉さん、元気でねー」
「はい、いってらっしゃい、ユーディ二人をちゃんと案内するのよ」
「わぁってるって、ほれ、こっちだぜついてきな」
朝ご飯を食べ終えてから早速、ユーディの案内の元、出発を始める。
ユーディが言うにはここ等辺は湿原も無く歩きやすい土地だと。
大雑把に教えてもらったが、あの川を境にこちらは湖や沼の多い湖沼地帯。
緑鬼が住んでる側は湿原が点在する湿原地帯となってるそうな。
「そういや、ここらへんで作ってる作物って何があるんだ?」
「あー、麦もそうだが、後は帝国の野菜と早々変わらんぞ、あ、でもコメは違うか」
「おい、ユーディ、お前今なんていった?」
「あん? 野菜は帝国のとそう変わらんって」
「もうちょい先だ!」
「ユーディのあにき、コメって言った! おとさんの食べたかった奴!」
「それだ! よく覚えてたなエル、そう米だ! この湿地帯には米があるのか!?」
「あるも何も、コメなんて名前がつく前から生ってたもん食ってたぜ」
ユーディが言うにはここ等辺では野生で少量ながら自生していたようで昔から食べられていたが、小倉が来た時に米と名付けて栽培を始めて、まだ数は少ないが作られており、ここ等辺よりももっと湖や沼なんかの水源に近い所では主食になってるとか。
「ははっ、細川との約束は思いのほか、早く成りそうだ」
「よかったね、おとさん」
「よくわからんがよかったなマオー、こっから真っすぐいけば小倉のにーちゃんの住んでる集落だ、一本道だし迷わないだろ、湖にも近いから米もあるはずだぜ、俺はここらで戻る、これ以上先言ってたら畑仕事の手伝いに遅れちまう」
「助かったよ、畑仕事頑張ってくれ」
そんな話をしながら歩いていけば到着したのは舗装されている街道だった。
ふむ、ユーディの集落と小倉のいる集落が交流がある証拠か。
とにも礼を言ってからこの道を進む事にする。両脇は木々に囲まれており。
時折鳥の声などが聞こえてくる。しばらく歩くと森が切れる。
そこにあったのは。
「これは水田か?」
「おおー、畑? でも水で沈んじゃってるー」
「これはこういう畑なのさ、水田って言って米を育てるな」
「でも、何も生えてないねー」
「おそらく、田植えをまだしていないのだろうな」
「ふ~ん、あ、女の子がいるよ、大きい子と小さい子!」
「ふむ、あの姿、丁度いい小倉の事を聞いてみるんだ、エル」
「は~い!」
一本道田んぼを進んでいれば二人の少女を見つける、肌の色は他の赤鬼に違わず
赤色であり、一人目のエルが大きいといった少女は15くらいだろうか?
もう一人の方の妹さんであろうまだ3つくらいの幼女と仲良さげに喋っていた。
特徴的なのは二人とも着物を着ていたという所だ、もしやだが……。
エルに道を聞いてもらうように頼む事に。
「こんにちはー、何してるの?」
「あら、初めまして、貴方方は人間さん? お父様のお知り合い?」
「こ、こんにちは」
「よもや小倉を知ってるのか? 俺は清孝魔央と言うんだが」
「私エル、よろしくね!」
「貴方が清孝様? お父様から聞いてます、とてもお強くて優しいお方と、私、小倉和夫の娘の一人でマツと言います、こちらは末の妹のヤナギ」
「は、初めまして、ヤナギです」
「そうか、それで聞きたいんだが小倉はいるか?」
「お父様は会議の為に出かけておりますわ、夕方まで帰ってこないかと」
「ならそれまでどうしようかね、ここらで時間を潰せそうな所は知ってるか?」
「それでしたら、我が家に来られては? お父様が常日頃お話する清孝様なら家に上げても構わないでしょう」
「ならそうさせてもらおう、しかし君は礼儀正しいいい子だな、その年で珍しい」
「ありがとう御座います、それではこちらに、ヤナギお家に帰りましょうね」
「う、うん」
実に丁寧な言葉遣いで自己紹介をしてくれるマツと名乗る少女。
案の定、服装で予想できたが小倉の娘であった、嫁貰って更に娘までいるとは。
その後ろから顔だけを覗かせるヤナギ、まだ小さいので人見知りという奴だろう。
道すがら聞かせて貰えば、マツは長女で今年12歳になる、落ち着きようからもう少し上と思ったがそこまで上ではないようだ、しかも聞くところによれば下に11人もの弟妹がいるそうであいつ何人こさえてんだよ!? 更にもう一人、嫁が身ごもってるとか。32年生きてきたが、多分この一報ほど驚く事はなかったろう。
だからこそ、長女がこんな落ち着いた雰囲気の女性に育ったのかね。
そしてそんな当の小倉は鬼人族3種族合同で会議を行い更なる発展を目指しておりその為のプロジェクトや計画も随時進行中でいつも忙しいそうだとか。
「今は何を話し合ってるんだ」
「えっと、なんでも「ぼーえき」とか言うのをしたいと仰ってました」
「ほほう、貿易か」
「おとさん、ぼーえきって何?」
「個人規模でなく国規模の大きな買い物かな、複雑な説明は俺には出来んぞ」
「計画は難航しているそうで、いつも大変そうにしておりますわ」
「ととさま、いつもたいへんそう、おやすみしてないの」
「そうか、でも娘と息子が11人もいるんだ、それにもう一人生まれるんだろ、頑張り時って奴なんだろう」
「ええ、お母様と子供の為なら苦にならないと常日頃口癖のように仰っております、さて、つきましたよ我が家でございます」
小倉が貿易をしようと話をしながら、歩いていれば小倉の家についた。
さて、ここまでだいぶかかったがもう一息、合うまではゆっくりさせてもらおう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます