第18話 12月21日

もうすぐだ、やっと形になる

その時に聞こう


ただいま。

俺がドアを開けるともうサヤは先に帰ってきているみたいだった。


いつもの「おかえりー」がない

お風呂かな?

部屋の手前にある浴室を覗くが電気はついていない


ガチャ。リビングの部屋を開けると


なんの音もなくサヤもいなかった。


荷物を置き、ネクタイを緩めながら、サヤの部屋へ行く


サヤー?

俺が部屋を覗くと

「ちょ、勝手に入ってこないでよ!」

と怒りながらすぐにドアを閉められた。


俺は何故かぼーっとして、何も言わずリビングに戻った。


着替え終わり、風呂のスイッチを押して、キッチンへ向かう。


今日はカレーだった。

サヤが作ったのだろう、じゃがいものカットがだいぶデカい。


「あのさ」


カレーの鍋を火にかけようとした時に後ろからサヤが言った


ん?

と俺が返す


「なんか、ハル最近冷たいよね」


そ、そうか?ちょっと最近忙しくて年末だし


「そんなんじゃない。なんかよそよそしいというか」


そんなことないよ


「じゃあさ、最近いつ一緒に出かけた?お風呂入った?寝た?」


だいぶ前…だな


「ほら、避けてるじゃん私の事。帰り遅い時も多いし、色々あるのわかるけどさ、不安にならない訳じゃないし」


ごめん、でも別に言えない付き合いをしてるとかそんなんじゃない


部屋が感じたことの無い空気になる

俺は何故かこの間の織田さんの電話の話が頭に浮かんでしまった。


サヤだって、俺になにか隠してないか?

言った後すぐに後悔した

こんなこと聞いても何も解決しないのに


「私?なんで?隠し事なんて何一つしてない」


じゃあさ、この間〇〇通りに誰といた?


「なんで?」


サヤの事見たって人がいて、男の人と歩いてたって


「いいじゃん誰といたって、そうやってすぐ疑うんだ!ハルは、私が聞いても答えなかったら疑われても仕方がないのに、誤魔化してばっかりでさぁ!」


サヤはそう言い終わると部屋に戻り、カバンを手に部屋を出ていった


バタン!

扉が閉まる音がいつもより大きく聞こえた



俺、何してんだ。なんで正直に話さなかったんだ

そりゃそうだ、サヤが怒るのもわかる

聞き方も悪かったし。



私、何してんだろ、ハルだって忙しいのに

あんな聞き方したら疑ってるって思われちゃうのに

正直に言えばよかったのに




ハルは広いリビング

サヤは寒い公園でそう思った

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