第15話 Aセット

ガチャガチャ

ただいまー


玄関でハルの声がした。

私はおかえりーと声をかけながらハルの所へ向かう


いつもなら、抱きしめるなり、頭を撫でるなりするハルが、何もせず私を避けて部屋に入る。


椅子に座り「はー」と大きくため息をつく


どうしたの?と私は少し怖かったけど声をかけた


しばらく黙った後、「俺、もうしんどい」

とハルがぼそっと言った


え?な、何が?聞くよ?悩みがあるなら言って?

私は何が何だか分からないままそう聞いた


「もう全てがしんどいんだよ、何もかも!」

ハルが机を叩き立ち上がった


私は怖くなりハルから、離れた


ハルがこっちに近づいてくる


ハルは私の肩を掴みながら「サヤ!もうサヤとの関係も疲れたんだよ!」と私に言った


私は涙が止まらなかった、視線が低くなり椅子のあしが見える。

床を見ながら泣いた

なんで?私、何も聞いてないし、ずっと我慢してたのに…


床が涙で濡れる






「サヤ?サヤ?」

私はハルに肩を揺さぶられて、目を覚ました


時計を見るともう夕方の5時だった

「なんで泣いてんの?嫌な夢でも見た?」

ハルは私の顔を見ながら言った


夢、だったんだ。

そう分かった瞬間また泣いてしまった


「え、また泣いてるし」

そう言うハルを私は抱きしめて言った


おかえり


「ただいま。」


「なんか今日はサヤ疲れてるみたいだし、今日はご飯俺が作ろっか」

私の頭を撫でながら、ハルが言う


じゃあさ!私、久々にAセット食べたい!

やっと笑顔になれた私はハルに言った


私の言うAセットとは

・炊き込みご飯

・肉じゃが

・豚汁

・卵焼き


の事である

ハルが作る料理の中でこれが一番美味しいのだ


「わかった、ちょっと時間かかるから先風呂でも入ってなよ」

具材を探しながらハルが返す


私、何を気にしてたんだろ

お風呂につかり真っ白の天井を見ながら思った


毎日起きたら、大事な人が隣で寝てて起きても一緒に笑いあって、悩み事があっても話せて、幸せな時間をこんなにも共有できるのに。

私がワガママなのがいけないんだ。

ハルにだって色々あるし、私にもある


ハルから話してくれた時きちんと聞こう


お風呂のドアが開きハルが入ってきた

「ひと段落して、あとご飯炊きあがるの待つだけだから俺も入っていい?」



私は1度立ち上がり、ハルを湯船に入れてその上から入り直した


ハルが後ろから抱きしめてくれた


温かい、このぬくもりが幸せなんだ

私はそう思った。





私は大好きなAセットを食べなからふとカレンダーの赤マルに気がついた。

え!来週じゃん!!!

まだ何も買ってないどうしよ。


そう思いながらチラッとハルを見る

ハルは卵焼きを食べながら「んー、ちょっと辛いかな」と言っていた


よぉーし。反撃開始だ!

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