第12話 風、吹く

私達が、サーキットに着くとコースではもう、決勝前の練習走行が始まっていた。


「サヤちゃん、ハルキくん」


後ろから私たちに織田さんが声をかけてきた


あー織田さんおはよー!昨日はごめんねー


ハルも、すいませんと、謝っていた


「いいよいいよ、全然!楽しかったし!トシさんのピットに荷物置くといいよ」


そう言われ3人でピットに向かった

ハルは荷物を置くと、「ちょっと、××の人に呼ばれてるから行ってくるわ、サヤ、織田さんとここにいて?」


うんわかったー!行ってらっしゃーい


私が織田さんと話していると、トシちゃんがマシンに跨って返ってきた


ヘルメットを脱いで、すぐに私に声をかけてくれた

「サヤちゃん、おはよう。昨日、ハルに襲われなかったか?」


トシちゃんーおはよー!やだなー、ハル真面目なんだもん

と私は笑いながら返した


しばらく3人で話している時にふと、コースを映すモニターに目がいった


え、あのヘルメット…

私がモニターに釘付けになっていると


「ハルキ君ね、今から走るよ、あれ来年の××の新型マシンなんだ、今日元々、トシさんが走る予定だったんだけど××の社長がハルキ君来てるなら走って欲しいって」

織田さんもモニターを見ながら言ってきた


え、うそ、また見れるの?ハルが走っているの

そう思うと私の心臓は急激に早く鼓動をうち始めた


「コースサイドで見るか?」

トシちゃんが私たちに声をかける



ハルが1周目を走り始める

全くブランクを感じさせないスムーズなライディングだった。


最後のコーナーを立ち上がり、私たちの目の前のストレートを走り抜けた

爆音と、すごい風を引き連れて


一瞬で通り過ぎまた、コーナーを曲がっていく


「ハルキ君、あれ本気でしょ」

織田さんがトシちゃんに声をかける

「ありゃー、多分280km/hは出てるな」

笑いながらトシちゃんが返す


速い。と思うと同時に少し心配の気持ちも出てきた


2周目また、ハルが帰ってくる。

次で最終周だ。


モニターに映るハルを少し心配しながら見つめる


最後のコーナーを立ち上がりストレートに入る


ハルはウィリーしながら私たちの前を駆け抜けた


カッコイイ、あれが私の愛する人、私を愛してくれてる人なんだ


「ハルキ君気合い入ってたね」

織田さんは撮った写真を見せながら私に言ってきた


1周目のバイクに伏せて走る写真と、最後のウィリーの写真だった



織田さん!この写真めっちゃカッコイイじゃん!

ねぇ!送って!スマホにー!!




俺がピットに帰ってくると、3人が待っていた


マシンを降りると、「ハルキ、飛ばしすぎだ」

笑いながら親父に言われた


サヤが近寄ってきて、飛びついてきた

サヤ、まだヘルメットも外してないのに


俺がそう言うと


「おかえり!とってもカッコよかったよ!」


と笑顔でサヤが返した


そりゃどうも、朝から汗だくで練習したかいがあったと思った。


ヘルメットを外し、テーブルに置くと

「ほら、そこのマシンの横に立って」

と織田さんに言われた


何枚か撮ったあと、「いいよ」と織田さんが言った

俺は撮り終わったのかと思い離れると、

「違う違う、仕事用は終わったけど、お客さんの分は撮ってない」


ん?俺がそう思っていると横にサヤが立った


あぁ、そういうことか


サヤがぎゅっと手を握ってこちらを見て言った

「お写真いいですか?」


もちろんですよと俺は笑顔で返す


織田さんが何枚かシャッターを切る


「ねぇ、織田さんあと何枚か撮って!」


サヤが声をかける


織田さんは頷いて答えた



「ねぇ、ハルお姫様抱っこして?」


サヤが俺を見上げながら言った


え、え。今?、ここで?


俺はそう返した


「うん。レーシングスーツ着てるハル珍しいし、せっかくだからさ!」


俺は、親父をなんとなく見た


腕を組みながら頷いてる


まぁ親父にもバレてるしいいか


俺はサヤを抱き上げ、織田さんのカメラを見た


カメラから、サヤに視線を移すと、キスされた


パシャパシャ


お、おいここはダメだろ。そ、そこ何撮ってるですか!


照れながら織田さんに言った。


「いやあついねー、ねぇ?トシさん」


「ハルお前、もったいないくらい、サヤちゃんに愛されてんな」


俺は顔がすごく熱くなった


親父と俺が話している時にサヤを見ると織田さんと撮った写真を見て、すごく楽しそうにしていた



まぁそういうことなんだわ、親父


「いいんじゃないか、サヤちゃんなら、」


親父はそう言ってくれた。






私は何を気にしてたんだろう、

ハルと撮った写真を見ながら思った

いいよね?私だけのハルなんだから。

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