キャラクターの練習

水嶋 穂太郎

第1話 いいやつ

 っつたく、おれのどこがいいやつだっつーんだ。


 友人とあぐらをかいて学校内の中庭で会話していた時だ。きぃきぃうるせえ声が聞こえてきやがった。おれはそいつらに向かって一喝してやる。


「おら、女子ども! こっち見てんじゃねーぞ!」


 立ち止まって、ぎょぎょっと驚く女子ども。


 すると、友人はため息をつきやがった。

 なんだよ。


「ケンスケって女子にモテるよね、うらやま」

「あ? リュウタ、ぶっ殺すぞ? クソアマどものことなんざ考えたくもねえ」

「とかなんとか言うけどさあ……」

「わりぃ、ちょっと外すわ」


 そう言って、おれは友人から離れて女子どもに叫ぶ。


「おい、そこの茶髪! つやつやの髪してんだから黒髪のほうがぜってーいいぞ!」「そこの前髪で目隠しはもっと自信もちやがれ! でかくて宝石みてえな眼を見せたほうが男にもてるぞ!」「化粧してんのはなにが目的だ、なんにもしてねえ女がいちばん女らしいに決まってる!」


 なあ? おれって嫌なやつだろ? うぜえだろ?

 ところが、だ。


「きゃー、ケンスケくんありがとね!」

「ケ、ケンスケさん……あ、ありがとうございます……」

「ケンスケが言うなら。ま、まあ、考えてみてあげてもいいわ」


 なに言ってんだ、この女どもは。

 感謝なんざされることないんだが?


 おれは不機嫌になり、友人の前に再び戻って、どっこらしょと座った。


「なあ、おれってクソみてえなやつだよなあ? クズみてえだよなあ?」

「そう思ってる間はこうして楽しく話せる時間が取れそうでうれしいよ」

「なに言ってんの、おまえ。そういや、おれ以外のやつと話さなくていいのか? 男どももおまえと離れろ離れろうざっくてよお……っつたくおれと気の合うのはリュウタくらいなもんだぜ!」

「ケンスケってやっぱいいやつだなあと思うなあ」

「はあ? 保健室いくか?」

「そういう問題じゃないから、ケンスケはケンスケのままでいなよ」


 おれは断じていいやつじゃない。

 なのに、なんなんだ、この温度差みてえなやつは……。



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※談話

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※一喝

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