地震も風も偶然であり、起きた出来事に本当は何の意味もないのだろう。けれどそんな偶然に理由を見出すのが人であり、心であり、思い出である。宮森篠さんの作品は、そういった人の感情、心の移り変わりを丁寧に描き出す。悲しい過去と向き合うことをやめていた人間が、何かを切っ掛けに夢の続きへと進み出す。これはほんの少しだけ寂しくて、けれど優しくて希望に満ちた、未来に向かうための物語だった。