第零話 異世界ハクスラはキャラメイキングから・その二

 その世界では人はどういう能力を持ち得るのか、そのサンプルもさっき出た情報領域ウィンドウで見る事が出来たのでざっと目を通す。


 ふむ、腕力敏捷性などの基本能力に加えて、特殊技能スキルも習得していけるみたい――良い感じね!


 後、自分の肉体を決める前に確認しておくべき事は……。


「ねえファリーリー、その異世界迷宮では冒険の仲間とかも出来たりする?」


「うーん、仲間については期待しない方が良いと思いますよ。あの世界の住民は戦闘が苦手なんです」


 成程、私の一人ソロプレイなのね。


 でも所持品とか自分のスキルとかを管理するウェイトが大きめなハクスラでは、その方が逆に良いかもね。


 パーティー・プレイが主となる展開の場合は、自分に足りない能力を仲間に補って貰うって考え方も出来たりするけど……。


 でもそれはそれで『仲間有りき』っていう縛りを自分に設ける事にもなっちゃうから、まあ気楽では無くなってしまう。


 こっちも仲間に合わせた能力強化をしたりしなきゃいけなくなるとかだと、一気に複雑さが跳ね上がるって訳。……正直、ハクスラでは面倒臭い。


「ただ、貴女の冒険をサポートする使い魔的な存在を、一体獲得する事は出来るらしいですよー」


 ほうほう! それは悪くないわね。


 それ位の緩い仲間要素だったら相手に変に気を遣う事も無いし、使い魔だったらその能力強化カスタマイズも私主導でやれるもの。


「分かったわ。なら改めて肉体を選ばせて貰うわね」


 これからのハクスラ人生を生きる事になる私の新たな肉体――この選択を誤る訳にはいかない。


 ……え、何? アンタ達今なんか言った?


 『AだA! ちびっこサイッキョ!』ですって?


 いやいや、そういうのが好きな紳士達が多いのは私も知ってるし、その気持ちを無下にする気は無いわ。


 でも落ち着いてよく考えて? 見た目は低身長でも中身は二十七歳の私なのよ?


 所謂萌え的なふわふわした感じの喋り方とか出来ないし、そういうの期待されても逆に痛々しい事になっちゃうわよ、きっと。


 え、『ツンデレちびっこの方向でもアリ!』って?――だからデレねえっての!


 まったく……。ここは純粋にさ、能力的な特徴で決めましょっ?


 Aのちびっこは敏捷性と器用さに秀でる……。


 これはきっと『軽めの武器を操って手数の多さで攻め』たり、『弓系の武器で遠距離攻撃するのも得意』なタイプね。


 馴れれば『身を隠して』の『狙撃』や『隠密行動』なんかも出来るのかも。


 バトルスタイルとしては逆に『玄人チック』よね。『見た目の可愛らしさ』とは裏腹に。


 Bの普通の身長の肉体は見るからにオーソドックスな普通の『美少女』。


 可も無く不可も無く、『なんでも扱える』けど目立った特徴は無い。


 ふぅん。でもゲームじゃこういうキャラが、一番プレイヤーの個性を出し易かったりもするのよねー。


 例えばさ――『敢えて防具は弱めに武器だけを強く』して、『瀕死時に攻撃力増強ボーナスが付く常在パッシブスキル』を狙って発動させ敵を一網打尽にする……とか。


 短時間攻略タイムアタックが好きな人は、割とよく使う手よね。


 キャラが無個性な分、このタイプはそういう特化型『やりこみプレイ』にだって染め易い。


 勿論、基本に忠実なプレイをしても良し。冒険で得るアイテムで『プレイ方針を変えてく』なんてのもアリね。


 最後にC、高身長でヘヴィな『イケメンおねいさん』。


 これはね……ゲーマーの私が満を持して言ってあげる、『ロマン』よ。


 この肉体での冒険はきっと『ロマン』になるに違いないわ。


 重量制限無視が成せる『重装備』、『一撃一撃が重い巨大武器』に『がっちがちの鎧と大盾』。


 装備出来る物が多く、その恩恵が如実に現れる……それだけに装備アイテムの『収集し甲斐』が有るでしょう。


 『重い武器は攻撃速度が遅い』? 『鎧着てるとピンチ時に逃走し難い』? ふっ、貴公……『高みを目指す』なら先ず『自らに枷を嵌め』賜えよ……。


 確かに一見『どんな武器防具でも使える』初心者向けだと思わせておいて、実はプレイが『安定するのが一番遅い』のがこのタイプだと、私もそう予感してるわ。


 でも辛い道のりを経て装備が充実したその日には、一気に『華』となれるのもこのタイプ――それを夢見て冒険するのが『ロマン』なのよ。


 さて。以上の私の見解を踏まえた上で、良かったらアンタ達の意見も聞かせてみてくれないかしら?


 ABCのタイプの中で、『このタイプが良い』ってのがあれば『応援の情報領域ウィンドウ』の中に『書き込んで』ほしいの。


 私はそれを見て、肉体選びの参考にする。


 勿論、無理強いはしないわ。『書き込み』が無かったとしても、後でちゃんと私の考えで選ぶから。


========


(※サラの意向により、彼女の物語の『見守り人』である貴方達の意見を応援コメントにて求めます)


(『A』『B』『C』のどれか一つ選んでください。もし複数選ばれている場合は無効票となります)


(或る程度まとまった数の票が無いと公正さに欠ける為、どのタイプであれ3票以上集まった時点で初めて、サラの選択の優先順位に反映される事とします)


(ニホン時間の9/2の23:59まで受付致します)


(受付を終了しました)


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 肉体の特徴が載ってる情報領域ウィンドウも改めて開いておくわね。


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 A・身長、百五十センチ。体格、軽量級。敏捷性、器用さに秀でる。(※軽量級は鉄製などの重い武器防具装備に大きな制限を受けるが、危険時に身を隠し易い)


 B・身長、百六十七センチ。体格、中量級。集中力が高め、他は標準的。(※集中力は魔道具マジックアイテム使用時の効果ボーナスに影響する能力)


 C・身長、百八十三センチ。体格、重量級。腕力、耐久力に秀でる。(※重量級は鉄製などの重い武器防具装備に制限を受けないが、危険時に身を隠し難い)


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 どのタイプでも私は問題無く生きられるプレイ出来る自信が有るから、本当に気楽に選んで頂戴ね!

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