ユウジへの支払い
さてやねんけど、帰り道はユウジと一緒やねん。家が近所やからそうなるし、今までも帰りが一緒やった事は何回かあるねん。ほいでも今日の帰り道は特別。ウチはドキドキが高まるのをどうしようもなかってん。それも楽しい方やないで。
今日のユウジも完璧に仕事をこなしてくれたと思てる。ユウジがおらんかったら絶対に勝てへんかった。ユウジの仕事への評価は誰がどう見ても百点満点かそれ以上や。ただやねんけど、ついにユウジにはボランティアでの助っ人を『うん』と言わすことが出来へんかったんや。
つまりは今日のユウジの助っ人仕事には報酬が必要ってこと。ユウジへの報酬は仕事が終われば即座に、いつもニコニコ現金払いが鉄則。これもよう知ってるし、これを渋った奴がどんな目に遭ってるかも、またよう知ってる。
ほいでもって今回の報酬はカネやない。ウチの体やねん。ユウジも他の部員がおるうちは言い出さへんかったけど、帰り道の最後は二人っきり。このまま、
「バイバイ、また明日」
これで済まされへんのはわかってる。ユウジはウチの体をどうする気やろ。どうするったって、いくらバージンのウチでも、男がウチの体に求めることはわかってる。わかってるけど、まさかここで押し倒したりはないやろ。さすがに人目があるから、どこかに連れ込まれるぐらいしか考えられへん。
連れ込まれた後やけど、ウチのファースト・キスを奪ったぐらいで終りはないやろな。ファースト・キスも大事なもんやけど、この状況で、それで終わりはあり得へんわ。ほんじゃ、ウチの裸だけ見て満足してくれるとか。
ユウジがウチの裸見て、やる気をなくしてくれたらそれもあり得るけど、それはそれで何となく嫌やな。やらんで済むのは嬉しいけど、女のプライドを踏みにじられるようなもんやんか。そこまで行ったんやったら、抱かれん方が女の恥みたいなもんにも思える。アカン、アカンなに考えてるんやろ。
うん、うん、ちょっと待てよ。ロック研の交渉の時にはウチの体のことを『価値ない』とか『売れ残り』って酷評しとったやん。嫌な事が頭をグルグル回り出してもた。たしかに報酬はウチの体やけど、ユウジが抱くと限定されてる契約やないやん。
それを言い出したら、抱くのも一回限りって契約になってないやんか。ユウジの成功報酬は平気で足元見るから、追加報酬を請求する事なんていくらでもあるのは知ってるねん。野球部の助っ人契約は、ああいう状況で結んでもたから、ユウジの出方によったら、ウチの体を永遠に自由にするってされかねへん。
そしたら、ユウジはウチを他の男に次々と売り飛ばすかもしれへん。自分が抱く気はなくても、これでもウチは現役女子高生やから、オッサン連中の買い手が、なんぼでもつくと計算しやがったかもしれへん。幼馴染のウチにそこまで極悪非道なことをせえへんと信じたいけど、ユウジの成功報酬へのこだわりというか、成功報酬であるカネへの執着が汚いぐらい猛烈なのは、長年の付き合いでよう知ってる。
ただユウジは犯罪どころか不良行為にも手を出さへんのも知ってるから、売春まがいのことは可能性は低い気もする。それでも、ユウジがウチの体が飽きるまで、何度でも好きな時に求め続けられるぐらいはありえるわ。なんちゅうか無償の愛人契約みたいなもんかな。これも愛人やったらウソでも外形上は愛されてるけど、今度の場合は性欲処理契約みたいなもんやんか。これも、相当どころやないぐらい嫌や。
そうなると一番ラッキーなケースで、うちのバージンだけ奪って満足してもらうことになる。当然やけどファースト・キッスもセットの『ついで』で奪われる。でもさぁ、でもさぁ、一番ラッキーっていうても、それだけでホンマに怖いねん。
さっきから足の震えが止まらへんねん。いやこれは体の震えや。ウチだって、どんな事をされるかぐらいは知識としてはあるねん。ほいでもな、知識があっても、実際にされると思うだけで怖くて、怖くてしょうがないねん。
試合が終わってから、何度も、何度も覚悟を決めるように自分で言い聞かせたんやけど、やっぱりアカン。こんなもん覚悟ぐらいでどうにかなるもんやないわ。頭に浮かぶのは、死ぬほど恥しい思いをせなあかんのと、かなり痛い目に耐えなあかんのと、本当に愛する人のために大切に取っておきたかったバージンが喪われてしまうこと。もちろんついでのオマケみたいにファースト・キスもな。
そりゃ、今からでも交番にでも駆け込んだら今日は逃げれるかもしれへんけど、ウチも女や、ユウジは依頼を完璧にこなしてくれたんやから、ウチも逃げんと応えなあかんわ。ええい、もうヤケクソや! 女は度胸だ! 口に出すぞ、
「ユウジ、報酬を支払わせてもらうわ」
自分の声が情けないぐらい震えとる。ションベンちびりそうや。いや、もうちびってる。ちびってるどころやないかもしれへん。これじゃ、裸にされる時にションベンちびったパンティも見られてまう。もう最悪や、
「カオル、なに言うてんねん。まだ依頼された仕事は終ってへんで」
「えっ?」
「オレはお前の夢を請け負ったんや」
「夢ってもしかして」
「甲子園に決まってるやろ。今日は単なる仕事始めや」
「ホントに!」
「カオルの甲子園は間違いなく、このオレが請け負った」
そういってユウジは帰っていきました。あのユウジがウチのために甲子園を請け負ってくれた。ついにユウジのスイッチは入ったんや。まあタダやないけど本当に甲子園に連れて行ってくれたら、ファースト・キスでもバージンでも、もうなんでもあげる。
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