部員募集
部員募集は予想通り大苦戦。進学校だから部活動はどこも低調で、体育会系なんてさらに低調なんだけど、一つだけ活発なところがあるんだ。それはサッカー部。世間も野球人気よりサッカー人気の方が上回ってるなんて抜かしやがるから、悔しいったらありゃしない。ウチに言わせればあんな球蹴りのどこがおもしろいのやら。
ボヤいてもしょうがないけど、サッカー部は強いんだよな。とくに二年に坂元って優秀なMFがいて、強豪校にも良い試合をやるんだよ。そういえば新人戦で強豪に勝ってたもんな。だからわざわざうちの高校にサッカーをやるために入ってくるのがいるぐらい。
この坂元がなかなかのイケメンで追っかけグループまで出来てやがるんだ。さらにだよ、その追っかけグループに二年の写真部の加納志織がいるんだよね。そうあの女神様だよ。だから女神の加納志織の追っかけもそっちについて行くし、サッカー部にも加納に見てもらいたいから入るってミーハーもいる始末なんだ。それも結構いるんだよね。
なんてったって、加納が被写体としても坂元を追っかけてるもんだから、部活動としての加納がサッカー部の練習に良くいるんだよね。試合なんかもそう。まあそれでなんか賞まで取ってるんだから文句も言いにくいんだけど。加納はサッカー部の顔みたいな感じになってるんだ。
そんなんもあってサッカー部は大勢力で大人気で予算もグランドも、サッカー部が大きく使っていて野球部なんて端っこでやってる始末なんだ。まあ四人しかいないんじゃ、さすがのウチも文句を言えないってところなんだけど、ホント悔しい。
で部員募集なんだけど、ウチも頑張って勧誘したんだけど、なんとか無理やり強引に引きずり込んだのが二人。とりあえず野球経験者なのが救いだけど、これ以上はどうにもならんかった。
でもこれじゃ部員がまだ六人だよ。駿介叔父さんの条件に全然足りないの。後は入りたがらない奴を引っ張り込むしかないのよね。まあ、引っ張り込んだ二人も、入りたがっていたとはとっても言いにくいけど、それはこの際だから目を瞑っとく。
それでもね、耳よりの情報を聞きこんだんだ。今年の一年になかなかのピッチャーがいるそうなんだ。新入部員から聞いたんだが県大会まで進んだエース。名前は古城明っていうんだそうだが、こいつをなんとか引っ張り込みたい、いや引っ張り込んでやるんだ。たぶんそいつなら駿介叔父さんのピッチャーの条件を満たすと思うんだよね。
ただ高校に入ったら野球はやめて勉強に専念するとか言ってるらしいのよね。うちの学校そういう奴多いんだよ。だから引っ張り込むにも作戦が必要ってところなんだ。
ウチの魅力でなんとかしたいんだけど、これも悔しいけど女神の加納みたいにはいかないんだよ。ウチだってブスじゃないつもりだけど、ウチが精一杯営業スマイルで頑張っても、加納が顔出していたサッカー部に地引網のようにさらわれちゃったからね。
しっかしサッカー部も汚いよな。タダでも人気があるのに加納まで使いやがって。加納は写真部だよ。それなのにサッカー部の勧誘にまで顔出しやがるんだ。そういえば加納がいるお蔭で廃部寸前だった写真部が今じゃ文化会一の大勢力だもんな。悔しいけど加納がいるだけで男が幾らでも集まるんだよ。
でも女の魅力で騙すのは作戦としてありだ。サッカー部だって写真部の加納を使ってるんだから、野球部だって外部の女を使って悪い理由はないってところ。内部で調達できへんのは結果が示してるし。
さすがに加納はサッカー部の顔で定着してるから使えないとして、他は誰になるかだけど、うんと、うんと、とりあえず三年にはいないな。それぐらい加納は女のウチから見ても抜けてるからな。
二年なら・・・小島か! 陸上部のハイ・ジャンパーの小島知江なら加納に対抗できるかもしれん。そうだよな加納が女神なら、小島は天使のコトリだからな。加納とはタイプが違うけど人気は匹敵するもんがある。
まあ陸上部だから加納みたいに野球部の常設の顔にするのは無理やけど、古城を引っ張り込むぐらいは協力してもらおう。小島だって同じグランドで顔を合わしてるんだから知らない仲じゃないし、
「お~い、小島」
「なんですかリンドウ先輩」
「ちょっと頼みがあるんやけど・・・」
小島は詐欺みたいだからとかなり嫌がったけど、なんとか無理やり説き伏せて協力を取り付けた。そいで古城のところに行って入部勧誘やったんだ。あれやこれやと嫌がる小島になんとか言わせたのは、
「一緒にがんばろう」
これだけだったけど、さすがは天使の小島の威力は抜群で手もなく引っかかってくれた。男はやっぱりこの手に弱い。なんでウチやったらあかんのかは、悔しいけど考えんことにしとく。
さて古城よ、悪いけどサインしたからにはこのウチが逃がさんからな。騙したのは悪いと思ってるけど、アンタの世話はウチがちゃんとしたる。ウチでも女やから、天使の小島よりちょっと、いやだいぶ落ちるけど我慢してくれ。とりあえず世話するだけやったら誰にも負けへんからな。
よっしゃ、これで七人。しかもピッチャー付。ちょっと条件に足らんけど、駿介叔父のところに交渉に行ってきた。駿介叔父はピッチャーが確保できた点を評価してくれた。なんだかんだと言ってもウチに甘いし、根が野球バカだし。
人数の点は引き続き努力して必ず確保すると粘りに粘り、とにもかくにも練習を一度見に来てくれることになったんだ。見に来れば必ず駿介叔父は引き受けてくれるはず。いいや見に来たら必ず『うん』と言わせたる。
そうなるとGMとしてウチの次の仕事はフォア・シーズンズの説得。そりゃ、この四人を引っ張り込めたら一挙に部員は十一人になるし、駿介叔父の条件の経験者の頭数も増える。ファイトが湧いてきたぞ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます