第67話*

 あなたが刃物を手にして吸血鬼に向かって突進しようとした機先を制して、相手は発砲する。弾は幸か不幸かあなたの手首に嵌めていた腕時計を弾き飛ばした。しまった。これでもう、あなたは吸血鬼に血を吸われた場合、吸血鬼に転化するかどうかは、この目の前の吸血鬼の気分次第となってしまった。


 単なる餌として人生を終えるのも屈辱だが、ハンターだったあなたが吸血鬼に堕ちるというのはそれ以上に望ましくない。あなたと対峙する吸血鬼はハンターと知ったうえで麾下に加えるつもりでいる。


「勇敢だが、愚かとしかいいようがないな」

「諦めが悪いのが俺のモットーでね」

「それでもいいが、この状況では痛めつけられて我が配下になるか、痛い思いをせずに配下になるかの2択だと思うがね」

「そうでもないぜ」


 あなたは勝ち目がないことを認めて決断をする。手の中にある刃物が傷つけるのは何も敵だけではない。あなたに死をもたらすこともできるのだ。しかも、銀や加護のある刃物での傷は転化を防ぐ効果も期待できる。あなたが覚悟を決めた時に、スマートフォンが独特のリズムの振動を伝えてきた。


⇒第34話に進む

https://kakuyomu.jp/works/1177354054890935249/episodes/1177354054890935917

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