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「言うなれば――」
――固唾を呑む音、二人分。
「――急性ねこみみ症候群、だね」
「………………」
「………………」
そ ん な ふ ざ け た
病 名 が あ る か 。
「うわぁ、怪訝マックス」
「ほんとだ――
ふにふにふにふにふにふにふに……
「お、少し落ち着くかな。話続けるよ?」
「あ、はぁい」
ふにふにふにふにふにふに……
「ぶっちゃけ医学では説明不可能な現象です」
ふにふにふにふに……
「……ですが、
「お願いしまーす」
ふにふにふに………
「簡単に言うとね、――残留思念のアレ的なソレだね」
ふにふ………………………
「めちゃくちゃファジー!!!」
「曖昧もこもこですねぇ」
「モコリンコだねぇ」
二人とも「ねー」じゃないが!!?
「……さっちゃんは納得していないようだね?」
「――では、直球になるけど……佐東さん、
――最近、仔猫の『死』に関わったかな」
「いえ、特には……」
「…………それ、僕だ」
「おや」
「――あ」
思い当たりが生じたのだろう。……彼女はとても聡明だから。
「……にゃんこ、保護してて、……良くならなくて、……昨日、埋めてきた。……帰りに――偶然、佐東に会った」
挨拶を交わして、泣いて枯れた声は『風邪』で誤魔化して。
……この反応じゃ、腫れた目元も見られていたんだろうな。
「……ひとまず、さっちゃんの心のケアは置いといて」
「ヤブ医者……」
……変に同情を示されるよりは幾分マシかもだが。
「……
ふにふにふにふにふにふに……
「……ほらアレ、誰かが座った後の椅子ってあったかいでしょ? その熱みたいなもの――で、伝わるかな?」
「……子ねこちゃんの熱?」
……ふにふにふにふに
「うん。幽霊――まではいかないけど……なんだろうね。――まあ、さっちゃんはよくやったってことだよ」
……ふにふにふにふに
「えっと――あの、なんで
「うーん、なにかの拍子にスッと入れ替わっちゃったのかもね。……さっちゃん立ち去るとき、急に駆け出したりしてたかい?」
「……してました。……子ねこちゃん――熱ですけど、……置いてかれちゃったんですね」
ふに…………
「……見失ってしまったから、さっちゃん
「あ、はい。……なるほど、半年の積み重ねだぁ。……えっと、身長も――子ねこちゃんに引っ張られた、みたいなことですか?」
……ふにふに
「そうだね。わりかしシュレディンガーな状態かな」
――待て。
今『シュレディンガー』と聞こえたんだが――!
「……大丈夫だよ? 佐東さんはちゃんと生きてるから、明らかに
結構な罵倒表現だと思うんだが。
「それで、肝心の治療法だけど……」
「……
いやいやそんなまさかまさか。
「えー…………ズバリ『放置』。以上っ」
「ほうち」「放置」
いやいやいや。
「誰かが座った後の椅子、わざわざ冷やす?」
「しないですねぇ」「しないけども」
「でしょ? よほど佐東さんが困っていたら別だけど」
「ないですねぇ」「無さそうだけども」
「三日くらいで引くんじゃないかな? まあ、なにかあればまた連絡して――ってことで」
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