Phantom pain

永本雅

Phantom pain

小さくお早うと君は呟く

終わる日が近くても変わらず君は呟いていた

春が過ぎて空は青く

星が静かに夢を告げる


昔、君と約束した

かぼそい小指と蕾の花と

きっと明日からはまた笑うから

今日だけ隠れて泣く僕を

そっと笑って許して欲しい


夏が君を嫌って

花火が散って

夢で消えない君の顔が

また流れていく

青空の短冊が白く烟った

終わらなかった夢も

忘れたくなかった傷も

もう一度寝てしまえばまた薄れるのかな

群青に溶けた笑顔は

「またあした」


白紙のままに過ごしていた古い交換日記

窓からぼくらをまだ眺めてる

君との時間が昔々になっても

はじめましてこんにちは

また笑うから


空に消えた星と花火ともしもの時間は

僕がおじいさんでもまだ見つからないよ

君が幸せになれると呟いたのが

今でも涙流す夜に聴こえる

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

Phantom pain 永本雅 @kosumisiori

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る