第7話 初仕事、という未知の領域への第一歩

 数日後、俺とシレーネちゃんは再びハンターギルドへと来ていた。もちろん仕事をするためだ。

 

 俺たちの目的はあくまで消えた三女神や星神について調べ、その復活の手立てを探ること。

 

 人間たちが加護である天技を使えていることから、星神が全てこの世界から消え失せたという訳ではない可能性が高いから、まずはそちらの優先度が高めだ。

 

 しかしそのための旅をするためにも資金がどうしても必要になるから、ハンターとして各地で稼ぎながら世界を救うための旅をしようということになっている。

 

 ……ちなみに、この数日の間の宿代や食事代については、シレーネちゃんが持っていた宝石を売って賄った。

 

 「おや、先日の。仕事ですね?」

 

 受け付けに向かうと今日も眼鏡男が担当していたようだ。

 

 「えっと、魔獣退治の依頼とか、そういうのを探してる」

 「できれば期間の短いものがいいです」

 

 シレーネちゃんが補足してくれる。確かにこの街で生計をたてようって訳ではないんだから短期間でないと困るな。

 

 「今ある依頼は街の代表会議からで、大外壁警備と壁外巡回ですね。警備の方は長期契約になるので、その条件ですと巡回の方になりますが、どうしますか?」

 

 代表会議というのは、この街のいわゆる統治機関になるらしい。その時々の有力者五名が会議で意思決定をして、この街は運営されているということだった。

 

 「壁外巡回というのは具体的には何をするのでしょう?」

 

 シレーネちゃんが軽く首を傾げて尋ねる。肩を滑り落ちる金色の髪が、光を反射してきらと輝いた。

 

 「一定の範囲を見回って、少数の魔獣であればその場で討伐、多数が見つかれば偵察した後にギルドまで報告、という仕事ですね。そして偵察報告がギルドに既にある場合は、チームを編成しての大規模討伐をお願いする場合もあります」

 「場合もってことは、今はその一定範囲の巡回だけってことか?」

 「そうですね、実際にお願いする範囲は相談して決めることになりますが」

 

 ふむ、要するに選択肢は無いみたいだな。

 

 シレーネちゃんの方を見ると、向こうもこちらを振り向いたところで、目が合うと小さく頷いた。

 

 「それじゃあ……」

 「ちょいと待ってくれ、アタシたちと一緒にチームを組まないかい?」

 

 そこで急に後ろから声が掛かる。誰かが近づいてきたのは気付いていたけど、アーセルだった。

 

 「しかし、アーセルさん、もう人数は足りているでしょう。応援派遣にこれ以上の報酬は出ないと思われますが……」

 「さっきも言ったけど、どうにも嫌な予感が消えなくてねぇ……、この二人分くらいなら取り分減って文句がでても、アタシが黙らせるさ」

 

 応援? どこかへ増援のチームを送る仕事で、必要人数に関して揉めてるって感じか。

 

 「どういったお仕事なのですか?」

 「うん? ああ、今言ったように応援派遣だよ。外にある森に猪型の魔獣が多数発生してるってんで、ベテランハンターがリーダーになって十人送り込んだんだけどね。……、完了予定は昨日だったけど帰還しないし、伝令も無い、だから応援として新たに十人派遣されるんだよ。予定が遅れることなんてざらにあるし、大抵はこういう応援派遣は無駄足になるから元々少額報酬で、万が一何かあった場合だけ追加報酬がでるんだよ」

 

 なるほどなぁ、俺たちを連れていって予想通り無駄足だったら、少ない報酬がさらに少なくなる。けれどアーセルとしては今回に限って嫌な予感がするから少しでも人数を増やして安全をとりたい、と。

 

 「他の連中から文句が出ないようにしてくれるっていうんなら、俺たちとしては問題ないよ」

 「はい、そうですね。私もミカさまと同意見です」

 「……そうですか。ではミカ様とシレーネさんも二の森への応援派遣チームへと編成という事で登録しておきます。無事に帰還後、皆さんで完了報告していただけることを切に願います」

 「お、おう」

 

 しれっと“様”呼びされて面食らった。そういえば俺はなんか偉い家系の出身だってことになっていたんだった。

 

 後半の大仰な言い回しにも驚いたけど、これはそれだけハンターの、とりわけ“外”へでる仕事が危険だということだろう。

 

 「受けてくれてありがとう。じゃあ、今回のチームの皆に紹介したらすぐに出発したいんだけど、準備は大丈夫かい?」

 「ええ、元々すぐ出るつもりで準備してきましたから、ですよね? ミカさま」

 「ああ、こっちは大丈夫だよ」

 

 言ってすぐに出入口へと向かって歩き出したアーセルに、俺とシレーネちゃんは離れずについていった。

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