猫だってお化けになる



「にゃーん」


いつの間にか黒猫が俺の方に近づいて来ていた。


真照はメモを書くのに夢中だし、俺は猫でも撫でるとするかな。


そう思って手を伸ばそうとすると。


「待ちなさい、万!」


メモを取り終えたらしい真照が俺を突き飛ばした。


「痛っ!?」


思わず尻もちをつく。いきなり何なんだ!


真照に非難の目を向ける。だが、真照は気にも留めない。声は焦っていたのか少し震えている。


「良くみてみなさい、万。これ…本当に猫かしら?」

「はい?」


真照は何を言っているんだ?


可愛らしいとがった耳。思わずもふもふしたくなる様な毛皮。野生を感じさせる鋭い双眸。ゆらゆら揺れる尻尾。速く動いているのか2本に見える。「にゃーん」と鳴く小さな口。鋭い牙。


どっからどう見たって猫だろう。


「普通だな?」

「違うわよ!もっと良く見てみなさい!」


良く見ろと言われてもなぁ…。


もう一度良く見てみる。


可愛らしいとがった耳。思わずもふもふしたくなる様な毛皮。野生を感じさせる鋭い双眸。ゆらゆら揺れる尻尾。速く動いているのか2本に見える。「にゃーん」と鳴…。ん?にほん?


「ああぁぁぁぁあ!!尻尾が、尻尾が2本あるぅぅううう!!!」

「ようやく気づいたの?猫又って言うのよ!気をつけなさい!」


真照が呆れた様な目を向けて来るがそれ所じゃ無い!


こいつ、お化けだぁあああ!!


危ない!思わず触る所だった!


汚い。流石汚い。


俺が驚いて後ずさりすると、猫(?)は『チッ、バレたか』とでも言う様に変身を解いた。


猫(?)はどんどん大きくなっていく。尻尾からは火を出し、牙は鋭くなっていく。


そして、俺と同じ位の大きさで止まった。


「「「ニ"ャァァアアア!!??」」」


路地裏にいた猫達は驚き、急いで逃げて行った。俺も逃げたい。ちなみにミケは俺が捕まえた。危なかった。


「どっ、どどど、どうすんだよ真照!?」

「大丈夫よ。あたしが何とかするって最初に言ったでしょ?」


確かに言ったが!


「じゃあ、どうすんだよ?」

「こうすんのよっ!!」


真照が取り出したのはーー鏡!?


鏡と言っても手鏡じゃないな。盾みたいに大きい丸い鏡だ。持ち手は後ろの真ん中に有るみたいで、真照はそこを握っている。


と言うかそんな大きさの鏡、真照は持って無かったと思うんだが。バックに入る大きさでも無い。


しかし、鏡でどう戦うと言うのか。投げるのか?いや、投げるんだったら鏡よりももっと良い物が有るはずだ。しかもこの大きさなら投げるよりも殴った方がダメージが入るはず。なら何故?


俺が結論を出すよりも速く、真照は動いた。


「消えなさい!!」


と、真照が鏡を前に構えて猫又の方へ向けるとーー


眩い白い光が鏡に集まり、ビームとなって猫又に直撃した。


「ええぇぇぇえええ!!!???」

「ニャァァアアアア!!!???」


これには俺も猫又もびっくり。


猫又は跡形も無く消えた。


☆☆☆


ミケを保護した俺達は依頼主にミケを届けていた。


「助かりました!ありがとうございます!」

「いやー、それ程でも有るわよー?」


真照は嬉しそうだ。おだてに弱いのかもしれない。


「あのー、大丈夫ですか?」

「あぁ、はい…。あはははは」


逆に俺は目が死んでいた。行きとは逆になったな。


「所で…。あなたもあたし達の部活に入らない?」

「いえ、いいです」


ズバっと断られたな。


「うぅ…。如何して誰もあたしの部活に入ってくれないのよーーー!!!」


真照の悲しい叫びが街に響き渡った。


カラスが「アホー」と鳴いていた。

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