魔法使いと人造人間
瓦偶人
魔法使いと人造人間
プロローグ 偉大なる発明家にして魔法使い、その名は・・・・・・
ある時、世にも偉大な発明家によって、一つの奇怪な製品が誕生することになった。
その製品の形状は、巨大であり、牛乳瓶のような丸っこい形をしている他、訳の分からない、記号とも文字とも判別のつかない模様が描かれている。
原始の時代の甕棺墓にも似ている形をとりながら、妙に真新しい鉄の様な表面をしているため、ある種のちぐはぐさを感じる点が、この製品の奇妙さというか、不気味さを際立たせていた。
「ぐぅわふふふっ」
そんな製品を前に、潰されるヒキガエルの断末魔の様な笑い声をあげる、満足げな様子の人物がいた。こちらも負けず劣らずの奇妙な人物で、妖怪絵巻に紛れ込んでも分からないような異形の容貌をしている。まるで日本昔話に出てくる、鬼や天狗であるが、何を隠そう、彼こそこの奇怪な製品の生みの親であった。
「素晴らしい! おキヨ、おまえもそう思うじゃろう?」
「ハイ、御主人サマ」
彼は少し離れた場所に佇んでいた、一人の少女に声をかけた。
すぐさま彼女はそれに応えたが、その表情にも、発せられた声にも感情らしいものはまるでない。
しかし、彼の方は、そんなことは気にもしていない様だった。思い通りの反応が返ってきたことによって、さらに上機嫌になったらしく、饒舌になる。
「そうじゃろう、そうじゃろう。太古の葦原より化生し、魔道と神秘に通じ、常世の果実によって、幾千年の時を生きる、まつろわぬものとは儂のこと。神代はすでに遠く、儂も今は一介の小市民にすぎんが・・・・・・、しかし!
「ハイ、御主人サマ」
「はーっはっはっはっは。こりゃ笑いが止まらんわい」
高笑いを辺りに響かせ、意気盛んな様子の彼だったが、家の呼び鈴が邪魔をした。
「誰じゃ、こんな時間に。全く非常識な奴じゃわい」
呼び鈴に急かされるように、彼は扉を開け、来訪者を出迎える。
その先には、彼の住むオンボロ賃貸住宅の隣人である若い女性が腕組みをして立っていた。
身だしなみは整っておらず、気持ちよく寝ていたところを騒音で叩き起こされ、這々の体でやって来たかのような粗放さであった。
その時の、すこぶる虫の居所が悪そうな隣人と相対すれば、誰でも物怖じしそうなものだったが、彼はそんな隣人の様子など気にも留めなかったばかりか、全身から迷惑そうな雰囲気を漂わせていた。
どうも、そうした彼の態度が、隣人の怒りをより高めたらしい。
重く、低い溜息を一つはいて、隣人は口を開いた。
「・・・・・・
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