第2コーナー「世界崩壊からの逃走」

『逃げろ。巻き込まれれば死ぬぞ』

 また声がした。意味深いみしんな言葉が脳内でささやかれる。

「巻き込まれる? 何を言って……」

 声の主に説明を求めようとしたが、それ以上言葉を続けられなかった。

 俺は口をあんぐりとひらき、そのまま動きを止めてしまった。

 何故なぜなら、突如とつじょとして地平線の向こうに見えていた大地に大きな亀裂きれつが走ったからだ。地面が崩れていき、深い闇の底へとまれていくのが見えた。

 そんな世界の崩落ほうらくが──闇が──徐々にこちらへと浸食しんしょくしてきたので、気が気ではなくなってしまった。

「え……はぁぁああっ!?」

 最早もはや悠長ゆうちょうに正体の知れぬ声の主とおしゃべりをしている事態ではない。


 ──巻き込まれれば死ぬ。


 先程の、声の主の言葉が頭をぎった。

 もしもこのまま大地の崩壊に巻き込まれれば、非力な俺など一溜ひとたまりもないだろう。崖下がけしたに落ちれば、恐らく生きて帰ってくることは不可能であろう。


 世界の崩壊から、俺は強制的に逃げなければならなくなってしまった。──生きるために、俺は走り出した。

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