『そろって人間観察』

 さぁ仕事、というタイミングで男性職員さんから声が掛かった。


「〇〇から怒られたって聞いたけど、何かあった?」


 同じAB型の女性ひとが、私に怒られたと……なにか言うたっけ? 必死に思い出す。あぁ、もしかして。


「お昼を食べるメンバーが基本的には同じで、そのうちの1人がよく食べる子で。AB型ちゃんは、自分が入らない分をあげようとするんだよね」


「あぁ、なるほどね。どんなに聞いても分からなかったから」


 説明苦手、小説やってて良かったと思った。言いたいことが出てくる。

 それダメじゃない? ってやさしーく言っても、「怒ってますか」とスパーンて返しがくる。で、男性職員さんとAB型ちゃんとの間で、きちんと出来ていれば100点だね。そのようなやり取りをしているらしく、食事での振る舞いを気にしてたようだ。仕事の振る舞いで良いと思うんだけどね。なんでも完璧にしたい子。



 珍しく懇願されて、AB型ちゃんと流れ作業。

 一緒にするのは久しぶり、お互い黙々とするから出荷できる商品がたくさん出来上がる。


「あっ、不良品みっけ。ほら」

 毛束がなく、ぽっかりと穴。ちょっと会話でもしようと言ってみる。


「不良なぁ!」


 ここまでは良かったのに、近くで同じ商品してる子から取ったりするから問題が起こる。穴埋めするためにやるんだよなぁー。取られた側は何事かと思い、席を立った。不良品だから探し出して、A品にされるのは困る。職員さんも加わり止めに入る。


 ミニオンの帽子の男性ひと、きっちりしてて良いけど、仕方ないか、という気持ちも欲しいね。男性職員さんへ蹴りを入れようとしたのか、わずかに膝が上がる。


「こら、八つ当たりすんな」


 皮肉にも周囲からは笑いが。ミニオンくんは、「ざんねーん」と、ひとこと。何回か探しに来たので、納得いってないんだと思った。その様子を見てAB型ちゃんは、「ダメっ!」と強めのひとこと。


 面倒みの良い女性ひとがいる。目の前の展開をずっと見ていて、ぽつりと言った。「大人しく座ったな、AB型ちゃんには強く出れやんのや」

 的確、と思った。細かく見すぎてやりづらいと感じることもあるけど、話して一致する部分が出てきたりもするから、彼女の世話焼きは長所な気がする。



 観察力があったのかは知らないけど、何を思ってその行動なのかと敏感になってる。ここまで周りに目を向けたことが無かったから、プラスの方向ではあると思うけど。帰宅後に、なにも考えたくない、そう思うのは作業よりも周りを見すぎて疲れてるんだろうなぁ。



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