p.30 悪気は無いさ、たぶん…

 車一台がやっと通れる幅の道。周りは田んぼ。小学生が二人、歩いていた。あっちへ行き、こっちへ行き。そうしながら、自分との距離が埋まっていく。


 何かを見つけたようで立ち止まる、一人はしゃがんだ。越してしまうなら今か? だが、片方が行ってしまうと、もう一人も続いて動く。……お前たち、どっち側に行きたいのだ。というか、通れるスペースを下さい。


 そういや、登れるモノなら登ったっけ。普段目にする風景から少し高いだけだ。それでも新鮮だったように思う。バランスを保ち、端まで歩き、いぇーい!とジャンプ。教科書で重くなっているはずのランドセルも背中から離れて浮いた。


 着地。…と数秒後に腰へランドセルが当たる。激痛のなか、バカな事をしたなと二度とやるか、そう誓った帰り道だった。


 …──たぶん、今もやると新鮮かもしれない。上がれていた高さなのに、掛け声が必要なのか…とか…………、やめよう。



 先輩と話していると、そのうち年齢に関する話題に変わる。「笑ってるけどね、あなたもそうなるのよ!?」と少しふくれた。


「あ、じゃあ勉強のために教えてください」


 よく傷口に塩ぬってくる、と言われたなぁ。聞いたのをまとめて、じゃあこういう事ですね!って言っただけなんだよ。悪気は無いんだ。たまに狙って言うけどな。

 周囲とどう接してるか見て、突っ込んでも返してくれるというデータがあってやるのだ。あと、表情や場の空気。という時にぼそっと言って、ドーンと笑いがきたら最高だ。……まるでお笑い芸人…。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る