第2話 主人を失った庭

あの日とは、阪神大震災のことだ

おしゃれな街を襲ったあの日からだ

阪神沿線の下町では、多くの木造住宅が倒壊した

2階建ての建物は軒並み1階が押しつぶされ

傾いた部屋がいびつな形を残して

乱立していた

耳が痛くなるような寒空に人々は

押し出され

呆然と立ち尽くすだけであった

ただ立ち尽くす

ただそれだけ


寒いはずの空気が、生ぬるく

鬱蒼と湿った空気が流れ、土ぼこりが朝日にあたり

キラキラと輝いているようだった


この時多くの庭たちは主人を失ったのだった

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