可哀想な王様

じゅり a.k.a ネルソン提督

第1話 ナポレオン兄弟姉妹恋愛事情

先日ツイッターで「ナポレオン ー獅子の時代ー」(長谷川哲也・著)ネタで盛り上がっていたら、登場人物の複雑な愛人関係について話が及びました。私の乏しい知識でも、ツイッターではとても語りきれなかったので、簡単に解説させて頂く事になりました。お目汚し失礼致します。タレイランなど政治家たちや元帥たち、他国の王侯については、もっとずっと詳しい方がいらっしゃると思いますので、基本ボナパルト家兄弟姉妹に的を絞りました。私は長く単行本派で「大陸軍戦報」を読む機会が余りなかったので、話がカブッてたら申し訳ありませんm(_ _)m






☆ナポレオン


ナポ様の妻、愛人については改めて列挙する必要はないですね(^-^;)

ちょっと珍しいケースとして、デュシャテル夫人の話を。ジョゼフィーヌの侍女をしていた彼女は頭が良く機知に富み、ナポレオンが彼女に目をつけ、宝石などをプレゼントしたりて気を引こうとしても、決して受け取ろうとはしませんでした。焦らされたナポ様はすっかり彼女に夢中になりますが、実は彼女の狙いは別のところにありました。単なる愛人ではなく、"公妾"の地位狙いだったのです。古くはアニエス・ソレルやディアーヌ・ド・ポワティエが有名です。時代下ってルイ15世を例に取ると、ポンパドゥール夫人やデュ・バリー夫人。公然と公の場にも出られる立場で、政治にも口を出す権力を持つことができたのです。


もっともスタール夫人のようなタイプを嫌ったナポ様は彼女の本当の望みに気づいてすっかりドン引いてしまったのですが。




☆ジョゼフ


ジョゼフ兄貴の愛人は、「世界帝王事典」によると3人。女癖が悪かったみたいで、ナポ様は「ジョゼフに気を許すな」と幼妻マリー・ルイーズに手紙で諌めたりしています。ナポレオン失脚後は長くアメリカに亡命、その後ジュリー・クラリーと再会、残りの生涯を彼女と過ごしました。





☆リュシアン


唯一女性関係にはマトモな人……と言いたいところですが、若き日の彼について奇妙なエピソードが残されてます。といっても2chで読んだ話ですので、話半分にお願いします。バラスがバイセクだったことは「獅子の時代」11巻ビクトル対談でも触れられていますが、実はサン・ジュストに気がありまして、一時期リュシアンにサンちゃんの服装をさせて連れ歩いていたというのです。ひょっとして「俺が楽しい場所に連れていってやる ははははは」の後は二人で楽しく暮らしてたとかw ないかw

その後、スペイン大使だった時代に、宰相ゴドイとの情事で悪名高き王妃マリア・ルイザと関係ができてしまったようです。 大使を辞して帰国する際は多額の宝石類を貰ったそうです。全くもう…。




☆エリザ


ボナパルト三姉妹の長女に当たる彼女、容貌が地味なのも相まって余り浮いた話を読んだことがなくてマトモな人だと思っていたのですが……。何とポリーヌと一緒にバイオリンの鬼才パガニーニ(18世紀版スティーヴ・ヴァイとでも説明しますか ^-^;)にちょっかいかけてました。ブルータスお前もか。



☆ルイ


ルイについては余り知らないのですが、「世界帝王事典」によると記録されている愛人は2人。1人はエミリー・ルイーズ・ド・ボアルネとありますが、ジョゼフィーヌの姪の一人でしょうか? この人も若い頃から女癖の悪い放蕩者で、梅毒にもかかりました。根性を叩き直すために(?)ナポ様は彼をエジプト遠征に同行させました。



ジョゼフィーヌの姪といえば、バーデン大公妃シュテファニー・ド・ボーアルネについても一言。これはどこで読んだか忘れてしまったのですが、皇帝になったナポ様がボーアルネ家の親族を庇護下に置いたとき、彼女はどうもナポ様に惚れちゃったらしく、皆で遊んでいるときふざけたフリをしてナポ様に抱きついちゃったりと逆セクハラを行うようになっちゃいました。厄介払いの意味もあったのか、結局シュテファニーは、ナポ様の養女としてフランス皇女という称号を与えられて、バーデン大公家と政略結婚させられてしまった、という話があります。



☆ポリーヌ


彼女のご乱行は数えきれませんので、またマイナーどころを。ローティーンの頃から人目を引く美貌の持ち主だった彼女は、ジュノーに惚れられた一年後の16歳の頃、親子ほどにも年齢が離れた革命家ルイ=マリ・スタニスラ・フレロン(ジャコバン派→テルミドール派)と恋に落ちました。結婚も考えていたようですが、ボナパルト家の猛反対で引き離され、反動で(?)すっかり遊び好きの女の子に。また、これは有名な話かと思いますが、後年エルバ島にナポ様を訪ねた彼女は、兄と近親相姦関係に陥ったという噂も……。



話がズレますが、ステキカット陛下ことロシア皇帝アレクサンドル1世も、美貌の妹エカテリーナを普通の兄妹愛を超えるレベルでむちゃくちゃ可愛がってました。ちなみに後にナポレオンからエカテリーナを嫁に欲しいという打診があったとき、自信家だったエカテリーナ自身は内心まんざらでもなかったらしいのですが、ステキカット陛下は彼女をさっさとオルデンブルク大公と結婚させてしまいましたとさ。



☆カロリーヌ


ミュラと結婚後、何とあのジュノーと不倫しました……(;´∀`) 次は何とあのメッテルニヒの愛人に。そうかと思えばハプスブルク家のフェルディナンド大公(皇帝フランツ2世の弟)とも恋愛関係に。彼女の場合、凄いなと思うのは、ポリーヌちゃんのように欲望の赴くままに恋をするのではなく、完全に政治的な思惑で男を選んでいること。ミュラの死後、まだ若く美しかった彼女はミュラの元副官と再婚します。ちなみにミュラとの次男リュシアンがアメリカに移住したため、カロリーヌとミュラ家の記念館は、フロリダに建てられています。http://www.exploresouthernhistory.com/belleview.html


で、あの可憐なルゥルゥことロールちゃんはさぞや悲しんだかというと、そういうことはなく、彼女もすっかりメッテルニヒに篭絡されて愛人に納まってました。若くイケメンだったメッテルニヒは身体を使ってスパイ活動に励んでいたのです。



☆ジェローム


末子の彼は他の兄弟姉妹と違って経済的に恵まれた環境で育ったため、これまた救いようのない浪費家の放蕩者に……。アメリカ人女性と結婚しますが、ナポ様は彼を政略結婚の駒として使おうと考えていたため大激怒、強引に離婚させちゃいました。その後はヴュルテンベルク王女カトリーヌと結婚。この結婚で、マティルド王女が生まれています。一時期あのナポレオン3世の婚約者だった人です。カトリーヌが死ぬと、長年の愛妾だったジュスティーヌ・ペルソリと3度目の結婚を……orz でもそのおかげでボナパルト家の血は後世に伝えられました。現在のボナパルト家当主はジェローム系の方です。


<<参考文献>>

Wikipedia世界帝王事典 http://reichsarchiv.jp/2ch世界史板「ナポレオンとヴェルサイユ展」目録 2005年別冊歴史読本35「皇帝ナポレオンのすべて」2009年歴史読本ワールド 90年10月号「特集ナポレオン」「ナポレオン もう一人の皇妃」アラン・パーマー著 2003年「アレクサンドル1世―ナポレオンを敗走させた男」アンリ・トロワイヤ著 2003年

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