第16話 さぁ、ダンジョン攻略だ
私の秘密兵器を見て、なんかやさぐれてるイオリさんは置いといてゴブリンの巣の奥を見ると、壁を削ったあとがある。よく見ると、この広間は三角状の形状で先に伸びているが先端部はあちらこちら削った跡がある。何か意図して進んでいたのだろうか?
「うーん、ちょっと離れててね。」
どがーん
そういうと、削った後のある壁にむかって、火魔法で爆破する妙齢の女性 。
シュール
つか、あぶねぇ人だな崩落とかしたらどうすんの?強い振動のと共に、壁のもろくなった部分が崩れている。私が胡乱な目でイオリさんを見ているとお構いなしに魔法を続け始める。
「よいしょ~!」
一瞬で、10発以上の火の玉というには鋭い砲弾のようなものが壁にぶつかって爆発する。その振動で本当に崩落しそうなほどの揺れと天井から微量な石。やばい
「ちょ!ちょっと何やってるんですかイオリさん」
さすがに放置できずに止めに入る。横目には腰を抜かす木梨君と琴音ちゃん。おい小僧お前の仕事だぞ!?
「え?ダメかしら続きを掘ってるんだけど?」
ダメじゃない?
「多分、この先がダンジョンに続いてると思うのよね。」
根拠は何ですか?
「そんなことありえるんですか?」
「え?まぁ、一応マッピングしながらきたから、おおよそだけど、昂暉の調べたダンジョンの一階層の場所と被るかなって?また、この洞窟を出てからダンジョン向かうと一時間くらいかかるし。いいかなぁって?」
あいまいな理由だな、マッピングってそんな完璧なの?ジト目で威圧する私。。
「わかった!最後にする。」
「するな!」
私の制止もむなしく、イオリさんは一瞬で火力を挙げた火の玉を壁に放つ
じゅごー ずどごーん
衝撃に備えて伏せていた顔をあげた。思ったような振動と音は来ず、かなり離れた場所で音が聞こえる。先ほどまであった岩壁は大人がかかがめば入れるサイズの穴が開いて向こう側が見える。
「うわぁ。。。って熱い!」
私は予期していなかった熱気に思わずのけぞり、数歩下がる。そして、その光景をもう一度冷静に見て私の背筋が凍る。
私はイオリさんの能力を見誤っていたかもしれない。
燃やす、爆発するが火魔法のイメージだったが、目の前の光景は溶かすだった。しかも、断面は同じ固いもので突き抜けたような砕かれた形跡はなく、焼けただれ溶けて赤く発光している。岩石が溶けるような熱は、私の記憶では摂氏1000度以上だ。でなければ、こんな事は起きない。しかも、一瞬で貫通したのだ質量的なことを考えれば蒸発した岩石があるって事だろうか?2000度?一瞬で冷めたことを考えれば瞬間的にはもっと高温だろうか?物理は苦手だ。だからファンタージで考えることにする、魔法で言えばメテオだ。お、しっくりくる。
メテオで、もう一つ思いついた。この火力を実現するのにかかった時間だ。私の見立てでは精々2秒だろうか?かかってない気がする。私の知るゲームではメテオは時間がかかる。儀式が必要パターンもある気がする。
ゴブリンの穴に来てから、実は危険な場面があったと思う。だが、どの場面でもイオリさんの反応は鈍く、大丈夫だろうか?と少し不安に思うこともあったが、この人にはこの程度の戦場は、のんびりと散歩しに来た公園みたいに緊張感のない場所なのだろう。一瞬で状況を打開できる自信があるからぼんやりしていたのだ。
私が現状とイオリさんの実力の一端を正確に把握、真っ青な顔で呆けていると
「あちゃーやりすぎたかな。それっと」
目の前の惨状とは似つかわしくない軽い声で、ポケットから取り出したガラス球を貫通した穴に放り投げる。
じゅごー
同時に、経験した事のないほどの勢いで熱気、そう蒸気があたり一面を覆う。一瞬熱いと思ったあとには体を覆う温かさのみが残った。
「ごめんなさい、ごめんなさい、マジックシールド張るの忘れてたわ。大丈夫?火傷はない?」
そういうと、なにが起きたか理解の追い付かない三人に向かってにこやかな笑顔で投げかけてきた。なにか、汚名返上しました!と言わんばかりの笑顔に見えるのは気のせいだろうか。気のせいということにしておこう。
「なんですか、今のは」
「えっと、ちょっと本気出した火の魔法かな?」
なんで、この人は活躍したいのに、自分の能力を隠すのだろう?もう、女ってやつは。って私もだった。
それから数分すると、さっきの蒸気はおさまって穴の中から水がしたたり落ちている。一体どれほどの水が内包した球だったのだろうか?いや、もうこれ以上は考えても仕方がないと思い直し現状を動かすことにする。
「それで、この穴の向こうに向かうんですか?」
「ちょっと、怖いですね。」
怯えたウサギのようだった二匹の年下ズも、さすがに蒸気が収まる頃には気分を持ち直して立ち上がっている。ただ、今あった出来事に関しては忘れることにしたらしく二人とも触れてこない。どの程度、理解しているのか少し気になるが、先に進まないので今は無視することにする。
「大丈夫よ!多分、ダンジョンだし!」
むしろ、ダンジョンを横穴から入ることが怖いのだが、もうここで何を言っても仕方がないと思い、私は率先して穴に入る。
「まぁ、そうですね。せっかく繋がってますし、一旦確認だけでもしましょうか?」
私はそういうとお腹の高さにある横穴に手をかける。冷たい感触を期待して触れた水はまだ温かく、ぬるくなったお風呂くらいの温度はある。
「あ、でも念のため私が先に行くわ」
そういうって、私の肩をつかんだイオリさんが水に手をかけると、「じゅぉ」とさっきよりも弱い音で横穴の水が蒸発する。すでにマジックシールドが切れており、さっきよりも熱く感じ、思わずのけぞり穴から離れる。
「あ、やっぱり壊れちゃった。また、もらわないと。」
そういうと、横穴を進んでいたイオリさんが割れたガラス球をポケットに戻していた。
それから10分くらい、思ったよりも長く待機していると横穴の向こうから声がかかる。
「ごめーん少し現場が混沌としてたから周りをチェックしてたの!一応安全みたいだからこっちに来てね!」
「わかりました!」
育ちの良い琴音ちゃんは居の一番に返事をして、横穴に入る。実はすぐにでも行きたかったのだろうか先頭を行く。木梨君が自分に目線を向けるので頷いて先を促す。
なぜか、殿になって進むが、横穴の状況にまた驚愕する。大理石のようにつるつるで、なめらかな凹凸は川をそのまま凍らせたような表面にみえる。天井はつららのように垂れてきたまま固まった形状になり、ちょっとした自然遺産のような様相だ。さらに、穴は思っていたよりも長く10mぐらいの横穴になっていた。
これって、普通に貫通できる厚さじゃないよねぇ。
そして、向こうにたどりつき穴から這い出ると、そこはもっと驚くべき状況になっていた。
円形ではあるが、せいぜい学校の体育館程度の広間では、その奥に直径5m程度のマグマだまりができている。中央にはおそらくボス的なのがいたのか地面には人型のような跡が消し炭のようにうっすら残っている。そう、うっすらだ、しかも掠れてる。
証拠隠滅した人がいるのだろう。やるなら、もっと丁寧にやりなさいよ。
先についた二人も気付いているようだが苦笑いのまま無言を通している。
「ささ、なんか熱い部屋みたいね。あははは、汗かいちゃうから先に行こう」
よし見なかったことにしよう。
そして、その混沌とした部屋をでると、ゴブリンの穴とはまた違う様子に驚く。不規則なようで計算されて作られた岩壁に等間隔の灯籠がならび通路をてらす。地面も歩きやすく平らで人の手が入ったのを感じる。それは、ゴブリンの穴で光の確保まともにできず、まっすぐ歩くのも困難な天然洞窟を攻略した後だったため余計にその整然さが目につく。
「なんかきちんと整備された洞窟ですね。」
木梨君の的確な指摘に私も同意する。
「そうね、この辺はダンジョンマスターの趣味かしらね?」
「そもそもダンジョンマスターって何ですか?」
同じく、わたしも思っていた真っ当な疑問だ。
「えっと、その前にいったん休憩しながらにしようか?」
そういうと、一本道の先に木造の空間が現れた。さすがにベットはないが、椅子や机が置いてあり寝室や客間のようなスペースがあった。
「な、なんですか、これ?」
「セーフティーゾーンね。今日はここで野宿にしましょう?休憩も簡単にしかとってなかったし、ご飯の準備してその場でダンジョンって何か説明するね」
そういうと、イオリさんは新人トリオほっておいて、袋から食材を取り出し食事の準備を始める。その光景を見ながら私は思う。
初のダンジョン探索は開始5分で休憩に入ることになった。たぶん、入り口から入らないからだよね。
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