1話

戦いは終わった。町は焼け焦げ、辺りには

何も残っていなかった。俺は腹部から血を流し横たわっていた1人の女を抱いていた。

「大丈夫だもう、終わったんだよ。」

俺は彼女にそう話しかけた。

「えぇ、そうね…」

彼女はとても穏やかな顔をしていた。彼女の

こんな顔を見たのは、これが初めてかもしれない。

「腹を抑えてろよ。治療薬を投与するから

少しの間我慢してくれよ。」

ベルトのポーチから一つだけ残った治癒薬を

取り出す。これで助かる。そう思った時だった。俺の右頬に冷たい感触が広がる。

「もういいのよ。大丈夫。」

何を言うんだ。そう思ったとき彼女の目から

涙がポロポロと流れ出ていた。

「悲しいことを言うようだけど…ね。

ほら、星が綺麗よ。」

彼女はそう言ってゆっくりと片腕を伸ばし

空を指差す。

「あぁ確かに綺麗だ。」

確かに空は綺麗だ。先程の戦いまで空は、

星一つ見えない暗黒に包まれていたというのに今は空一面、ダイヤモンドの、ような輝きを放っている。

「あなたに渡したいものがあるの。」

そう言って彼女は血だらけのくしゃくしゃの

紙を渡してきた。それを受け取って、ズボンのポケットに入れる。

「この紙はなんだ。」

「ごめんね、汚くて…これはあなたの神具

に必要な無限弾の設計図よ。」

「これはもう必要ないだろう?戦いは終わったんだ。」

「ダメよ。これはあなたに絶対に、絶対に、

必要な、ものなの!」

彼女の顔は先程の穏やかな表情から、とても真剣な顔をしていた。

「約束して、世の中には沢山悪に苦しめられている人がいる。あなたの無限弾には、

人の心を浄化する作用もあるの…

あなたにはその人達を助けて欲しいの。」

彼女は片手で俺の手首をぎゅっと強く握った。

「わかったよ。その約束守ろう。それを俺の

使命にしよう。」

そう言うと、彼女は安心したのだろう。

「ありがとうジョーマン。あなたと出会えて良かった…」

そう言って彼女は俺の唇にキスをした。

長い時間経ったのであろうか、いや実は数分

しか経っていなかった。俺は彼女を抱きながらキスを続けていた。気づいた時には

彼女の体は硬くなり、とても冷たくなっていた。俺はキスをやめて、彼女を横たわらせる。

「ありがとう。アリア…君という人に出会えて、俺はとても幸せだったよ。」


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