43石 前夜配信決定とファンアート
43石 前夜配信決定とファンアート
マスターニンジャなるプレイヤーに持ってかれて配信が終了した後、3人ともなんだか力が抜けてしまったので、そのまま休むことにした。
そして翌日の朝。
何時ものようにダイニングに集まって話し合いを始める。
「昨日はなんだか力が抜けるというか……無駄に疲れた感じがしたな」
「そうだねぇ……」
「はい……」
3人で顔を見合わせながらため息をつく。
「途中までは完璧だったんだけどねぇ」
「そうですね。最後までは良い流れでした」
「うむ……それでエルミナ。あのマスターニンジャというプレイヤーについてなにか分かったか?」
「うん。調べておいたよぉ。といっても、かなり有名なプレイヤーだったからすぐに情報が出てきたけどぉ」
マスターニンジャ……やはり有名なプレイヤーだったか。
まぁあれで無名ということはないだろうが。
「マスターニンジャはパーティーサバイブ界隈では知らない人が居ないとまで言われているプレイヤーらしいよぉ」
「そこまでですか」
「うん。有名になったキッカケは昨日ふたりが身をもって体験したように、あのアクロバットな動きで相手を倒すプレイスタイルが動画サイトで評価されたことだねぇ」
なるほど。
確かにあの動きなら動画バエしそうだ。
「ということは、マスターニンジャは動画投稿者なのか」
「そう。ただ主な活動サイトはAiTubeじゃないけどねぇ。ちなみにマスターニンジャには同レベルの相方が居るらしいよぉ」
「それはまた……」
エルミナのマスターニンジャ相方発言にレイラがなんとも言えない表情を浮かべる。
「ちょっと待っててぇ」
そう言ってエルミナがダイニングを出ていくと、すぐにノートパソコンを抱えて戻ってくる。
エルミナはそのノートパソコンをテーブルの上に置いて操作した。
「ふたりとも、これ見てぇ」
レイラと一緒にノートパソコンの画面を覗き込む。
すると、画面にはパーティーサバイブの動画が再生されている。
動画内容は1対1のタイマンで、ふたりのプレイヤーがアクロバットな動きで激しく戦っていた。
「これは……マスターニンジャの動画か」
「そうだよぉ。青い忍者姿のプレイヤーがマスターニンジャで赤い忍者姿のプレイヤーが相方だねぇ」
「凄まじい戦いですね」
「うむ。これは昨日パーティーサバイブを始めたばかりの余とレイラでは勝てんな」
「そうですね。私では最低でも1週間は練習しないと同レベルまでいけなさそうです」
「1週間か」
「師匠が1週間でマスターニンジャレベルまでいけるなんてリスナーが知ったらまたネットが荒れそうだよねぇ」
確かに。
普通は信じられないだろうが、レイラが言うのだから真実だろう。
「ウルオメア様、練習しておきますか?」
「うーむ。今はいいだろう。次にパーティーサバイブを配信でやるとしてもまだ先だろうからな。たまに練習するくらいで良い」
「かしこまりました」
そう言ってレイラが軽く頭を下げる。
「でも、昨日の配信にマスターニンジャが来たのは良い傾向だよねぇ」
テーブルの上のノートパソコンを片付けながらエルミナがそう言った。
「そうだな。マスターニンジャほどの有名プレイヤーが余たちの配信をどこかで知って参加してきた影響は小さくないだろう」
「うんうん。普段活動しているサイトからわざわざこっちまで来てくれたってことは、ウーちゃんがそれだけ有名になったってことだからねぇ」
「そうですね。それにマスターニンジャが配信に参加したことで、マスターニンジャが普段活動している動画サイトからの視聴者が増えるかもしれません」
「結果的に昨日の配信は成功だったという訳か。最後のあれも無駄ではなかったのだな」
「はい」
「そうだねぇ」
マスターニンジャに感謝しても良いのだろうが、やめておこう。
それはマスターニンジャを返り討ちにしたときまで取っておく。
「じゃあ次の話だけどぉ。次の配信予定はどうするぅ?」
「ウルオメア様の公式生放送出演は金曜日でしたね」
「うむ」
「公式生放送前に配信するか、それとも公式生放送までは配信をお休みするかだねぇ」
「余としては配信した方が良いと思うが、どうだ?」
「同意見です」
「わたしもぉ」
全員同じ考えのようだ。
「やはり配信での告知は必要だろう。昨日の配信では最後のあれの所為で公式生放送の告知が出来てなかったからな」
「うんうん」
「だから、そうだな……公式生放送の前日に前夜配信として告知を含めた雑談配信を30分ほどやるのはどうだ?」
「良いと思います」
「異議なし!」
「なら、その予定で行動しよう」
「じゃあ、わたしは何時もみたいにサムネを作っておくねぇ。ウーちゃんは――」
「ツブヤイターの確認だろ。分かっている」
「あはは、そうだよねぇ」
「では、私は普段通り家事をしますね」
「頼む。では、行動開始だ」
「はぁい」
「はい」
レイラはダイニングに残り家事、エルミナは配信部屋に行き次の配信に向けた作業、そして余は何時ものようにリビングのソファーに寝転んでツブヤイター確認だ。
「さて、ツブヤイターの反応はどうなっているんだろうな」
そう口にしながらスマホを取り出して、ツブヤイターを開く。
そして、配信タグで検索。
すぐに大量のツブートが表示される。
とりあえず、上から順番に見ながらいいねを押していく。
ツブート内容で多いのは、やはり昨日の最後の戦い、つまりマスターニンジャについてだ。
前からパーティーサバイブを知っている勢からすると、本物のマスターニンジャが配信に現れたことに驚き、知らない勢からするとマスターニンジャは何者なのか気になるといった感じ。
次に多い話題はさけるイカに関してだな。
始めたばかりのパーティーサバイブで余を助けたことに対する賞賛のツブートもあれば、なんでアイツだけ目立っているんだというような嫉妬のツブートもある。
「文香は良くも悪くも目立つな」
まぁ今のところ嫉妬などに関しては文香の鉄のメンタルもあって、大した問題になっていないし放置で良いだろう。
その次に多い話題は公式生放送に関してか。
その中でも驚いたのは本当に余が公式生放送に出演するのか半信半疑な者が居ることだろう。
どうやら配信に余とレイラしか映っていないので、余の存在がリアルだという実感が湧かないらしい。
まぁ分からなくはないが。
「うん?」
そうしてツブートを見ていると、ひとつのツブートが目に留まる。
「これは余のイラストか」
そのツブートにはMFBGの装備を装着した余のイラストが配信タグとともに上げられていた。
配信タグが付いているし、イラストの内容から余のファンアートで間違いないだろう。
「まさかファンアートを描いてくれるとはな」
まぁ何時かは誰かが描くと思っていたが。
「それにしても、このイラストかなりのクオリティーだぞ」
イラストにあまり詳しくない余でも一目でクオリティーが高いと分かるイラストだ。
気になったので、このツブートをRTといいねしてからアカウントページに飛ぶ。
東京ダイヤ
趣味でイラスト描いてます。
最近のマイブームはファゴアット帝国放送局。
「東京ダイヤか。趣味であのレベルのイラストを描けるのは凄いな」
そういえば最近の絵師のレベルは凄いと耳にしたことがある。
コイツもその中のひとりという訳か。
「最初にファンアートを描いてくれたようだし、フォローしておくか」
余は東京ダイヤをフォローしてから、先ほどのツブートに『ファンアート嬉しいぞ。ありがとう』と返信しておく。
「ウーちゃん」
そこでエルミナがリビングに入ってくる。
「サムネ出来たから配信ページ作っておいたよぉ」
どうやらもうサムネが出来たようだ。
「相変わらず速いな」
「簡単なのしか作れないけどねぇ」
「いや、そんなことないぞ。エルミナのサムネはよく出来ていて分かりやすくて良い」
「ありがとぉ」
エルミナがにへらと笑ってそう言った。
そこでエルミナにも先ほどのファンアートを見せようと思いつく。
「エルミナ」
「なぁに?」
「ツブヤイターを先ほど見ていたらな、余のファンアートがあったのだ」
「うわぁもうファンアート来たんだぁ。もう少し先だと思ってたよぉ。見せて見せて」
「うむ。これだ」
余は先ほどのファンアートのツブートを表示してエルミナに見せる。
「わぁ結構凄いの来たねぇ」
「そうなのだ。これで趣味の範囲らしいぞ」
「凄い人が居るもんだねぇ」
「まったくだ」
そこでエルミナと顔を見合わせて笑う。
「あはは、わたしたちが言うのも変だよねぇ」
「ふふっそうだな」
この世界の人間からしてみれば余もエルミナも超人と言っていいレベルだろう。
まぁ余は一応神なのだが。
「じゃあ、わたしは配信部屋に戻るねぇ」
「うむ」
「ツブヤイターでの告知はよろしくねぇ」
そう言ってエルミナはリビングを出て行った。
「さて、エルミナに言われた通り配信告知をしてしまおう」
スマホで配信ページを確認してから、ツブヤイターを開いて文字を打っていく。
『昨日の配信はなんだか力が抜けたな。
あんなにパーティーサバイブが上手いプレイヤーが居るとは思わなかったぞ。
それはともかく次回の配信予定が決まった!
次回配信は今週の木曜21時!
公式生放送の前夜だ!
雑談をしつつ公式生放送に備えるぞ!
配信ページ:xxxxxxxxxxxxxxx』
「こんなところか」
内容を何度か確認してからツブートする。
すると、即座に大量のRTといいねに返信。
何時も通りだ。
「居るんだろうなぁ」
そう思いながら返信を見ると、当たり前のようにさけるイカが居た。
これも何時も通りだな。
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