2石 ウルオメアピックアップガチャ

2石 ウルオメアピックアップガチャ




 目が覚めるとタオ手はアップデート前のメンテナンス中だった。


「危ない危ない」


 アラームをセットせずに寝てしまっていた。

 まぁ別に期間が短い訳でもないから多少寝過ごしても大丈夫なんだが。


「今のうちに攻略wikiでも見ておさらいしとくか」


 スマホでタオ手の攻略wikiを開く。


 タオ手のストーリーは、平和になった世界に突如、異世界から謎の敵がやってくるというもの。

 ちなみに主人公はタオスではない。

 タオ手の主人公は平凡な少年だ。

 そこはやっぱりソシャゲっぽいよな。


 原作主人公のタオスはセミナ王国の姫と結婚して王となっている。

 ちなみにファゴアット帝国はウルオメアの妹がセミナ王国と協力して頑張ってるらしい。

 あとウルオメアは今のところ本編に登場していないとか。

 未だに神々に封印されているんだろうな。

 ただ、今回はタオ手が2周年なので特別にウルオメアを手に入れられるってことか。


 次は気になるタオ手のガチャ関連について。

 タオ手のガチャではキャラクターと装備と素材のどれかが排出されるようになっている。

 ただ、圧倒的に装備が出る確率が高い。

 10連して装備が8個素材2個出るのはタオ手界隈では常識だとか。

 しかし、運が良ければ逆にキャラクター9体とかもあり得るらしい。


 そしてキャラクターと装備のレアリティだが、下から【N】【R】【SR】【SSR】【UR】と上がっていく。

 もちろんレアリティが高いほどガチャから出にくくなっている。

 特にURなんて出る確率が1%もない。

 しかも、ガチャから出るURはひとつではないので欲しいキャラクターが出る確率は0.2%以下らしい。

 ちなみに素材にレアリティはない。


 そんな中、他のソシャゲで当たり前に出来るように、タオ手でも同じキャラクターを重ねることが出来る。

 しかも、タオ手では同じキャラクターを重ねるごとにイラストが変化して、最終的に5体重ねるとレアリティがアップするのだ。

 もちろんURもそれは変わらない。

 なんとURは【LR】という最高レアリティに変化するのだ。

 LRはURを5体重ねることでしか手に入れる方法はない。

 なので、タオ手信者たちは死ぬ気でピックアップガチャが来る度にピックアップされたキャラクターを5体揃えようと頑張るのだ。

 恐ろしい悪魔のシステムだ……まぁ昔の俺もタオ手信者たちと似たようなことしてたけど。


 だが、キャラクターのシステムはこれで終わりではない。

 一部のキャラクターには【神化】と【超越神化】というシステムが実装されている。

 簡単に説明すると要はキャラクターのレベル上限突破&強化だ。

 5体重ねたURキャラクターのレベルを上限まで上げて、ガチャから出る素材を使用することによって、神化という状態になりキャラクターの能力値が上がりレベルの上限が10上がる。

 そこから更に素材を使用することによって超越神化状態になってもう一段強化されるらしい。


 ちなみに神化というのは原作でタオスがウルオメアとの最終決戦でなった状態のことだ。

 超越神化はタオ手で作られた新しい設定だとか。


 そして、もちろん今回実装されるウルオメアのレアリティはURだし、超越神化まで出来るようになっていると公式サイトに記載されていた。


 なんとしてもウルオメアを手に入れたい。

 そして出来ればLRにして超越神化までしたいが……流石にガチャ100回でURのウルオメアを5体手に入れるのは無理だろう。


「はぁ……課金してぇ……」


 ネットには5体重ねるのに最低100万かかるのは当たり前だとか書いてあった。

 そんな金はない。

 俺のお小遣いは月5000円だ。

 それに親父によってスマホに課金出来ないようになっているから無理だな。


 そうやっているとタオ手のメンテナンス終了予定時間30分前になった。

 俺はツブヤイターを覗く。

 タオ手の公式ツブヤイターには色々情報が書いてある。

 なんでも今日の20時から2周年記念の公式生放送が放送されるらしい。

 ウルオメアを手に入れられたら見てみよう。


 今度はタオ手のタグで検索。

 『全力で待機中』『絶対手に入れる』『LRにするわ』というようなツブートがいくつも流れている。

 みんな俺と同じか。

 早くメンテ終わってくれ。


 俺はソファーに正座で待機した。

 そして、とうとうタオ手のメンテナンス終了時間がやってくる。

 即座に俺は最新のスマホの画面に表示されたタオ手のアプリをタップして起動した……がしかし。


「あれ?」


 何故かゲームを起動してもメンテナンス中の文字が出て進めない。


「何故だ!?」


 焦りながら俺はタオ手の公式ツブヤイターを開く。

 そこにはメンテナンス延長の文字が。


「ふぅ……良かった」


 俺のスマホがおかしくなったのかと焦ったわ。

 メンテナンス延長ツブートの返信には『ええんやで』『メンテが明けたらどうなる? 知らんのか メンテが始まる』といった何時もの呟きが大量にあった。

 どうやら焦ってたのは俺だけらしい。


「ソシャゲは数年ぶりだからな」


 知ってはいたが、慣れてなくて本当に焦った。


 それから10分後にメンテナンス終了のツブートが投下された。

 今度は焦らずにタオ手を起動する。

 すると、データのダウンロードが始まってすぐに終わった。

 俺はゆっくりとガチャ画面に切り替える。

 デカデカとウルオメアピックアップガチャと書いてあり、横にウルオメアの美麗なイラストが載っていた。

 それだけで俺の心がより一層ウルオメアを求め出す。


「ふぅー」


 俺は息を大きく吐いて興奮する心を落ち着かせる。


「いくぞ」


 ゆっくりと指を10連召喚のボタンに向けて近付ける。

 心を落ち着かせているのに、その指は震えていた。

 そして――俺は10連召喚ボタンをタップする。


 少しのロードを挟んで画面が召喚画面に切り替わった。

 初めて見る画面に心臓がバクバクと高鳴り始める。

 そして召喚画面の円形がキュイーンという音と共に虹色の光を帯びて回り始めた。


「え? 虹色ってまさか!?」


 画面が真っ白に光り輝いたあと、光が消える。

 そこには【ウルオメア・ファゴアット】が居た。


「え……」


 しばらくの間、呆然として――


「う、うおぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおお!!!」


 勝利の雄叫びを上げた。

 そして再びガチャ結果を見る。

 間違いなくそこにウルオメアが表示されていた。

 ウルオメア以外は装備と素材だがどうでもいい。


「よっしゃあ!!」


 俺は勝利したのだ!

 この過酷な戦いに!


「あ、そうだ」


 勝利したならやるべきことがある。

 俺はウルオメアが表示されているガチャ結果画面をスクショしてからツブヤイターを開く。

 そしてタオ手の公式ツブヤイターのツブートにさっきスクショした画像を載せて『ウルオメア持ってない奴、おりゅ?』と呟いた。


「よし!」


 一度はやってみたかったことをやったぞ。

 そしてタオ手の画面に戻ってくる。


「ふぅ……」


 それにしても……まさか10連一発でウルオメアが出るとはな。

 これは運を使い果たしたかも。


「……」


 こうなると更なる欲が出てくる。

 つまり――


「ウルオメアをLRにしたい」


 気が付けば俺は10連召喚ガチャのボタンを押していた。

 しかし、召喚画面は先ほどと違って虹色には輝かず……。


「ダメかぁ」


 流石に2回連続でウルオメアは出なかった。

 でも、俺はやめる気はない。

 再び10連召喚ボタンをタップする。


「こいこいこい!」


 召喚画面に切り替わって、そして虹色に輝く。


「マジか!」


 そしてガチャ結果画面にウルオメアが表示されていた――それも2体。


「……」


 言葉が出なかった。

 ただ、使命感が俺を動かす。

 ガチャ結果をスクショし、ツブヤイターに画面を切り替えて、さっきの自分のツブートにそのスクショを載せて返信した。


「ふぅ……」


 そうしてやっと実感が湧いた。

 まさか一回で2体もウルオメアが出るなんて、やばいよなぁ。

 でも、これでウルオメアが3体だ。

 あと2体でLRに……。


「やるしかねぇ!」


 あと70連出来る。

 この勢いならいけるはずだ!

 更に俺は10連召喚ボタンをタップする!


「……」


 無言で祈る。

 そして、召喚画面が虹色に輝いて――


「ウルオメアだ……」


 ガチャ結果画面にもう三度見たウルオメアが表示されていた。

 無言でスクショしてツブート。


「……今日の俺、運がありすぎるだろ」


 もうこれで4体目だ。

 LRまであと少し。


「ここまでくればもう楽だろ」


 だってもう4体出てるんだ。

 まだ60連出来るし、あと1体くらい出るだろ。


「ほい」


 そう軽く考えて10連召喚ボタンをタップ。

 残念ながら結果は装備と素材。


「まぁまだ50連回せるし」


 再び10連召喚。

 結果はまた装備と素材。


「40連あれば出るだろー」


 装備と素材。


「さ、30連あるし……」


 装備と素材。


「ぐああああああ!」


 ガチャ結果を見た俺はソファーに崩れ落ちる。

 まさか40連回してウルオメアが出ないなんて……。

 前半の豪運が嘘のようだ。

 もう20連しか回せない。

 これでウルオメアが出なかったら俺は……狂ってしまう!

 当初はウルオメア1体出れば良いと考えていたが、今ではウルオメアをLRにすることしか考えられない。


「やるしかない!」


 俺はソファーに座り直して両手を組んで祈る。


「ガチャ神よ。どうか俺に祝福を!」


 それっぽい神様に本気で祈りながら10連召喚ボタンをタップした。

 すぐに両手を再び組んで目を閉じる。


「来てくれ! ウルオメア来てくれぇぇぇぇぇぇ!!」


 召喚が終わった音がした。

 ウルオメアは来てくれたのだろうか。

 ゆっくりと片目を開いていく。

 ……ウルオメアが居た。

 見間違いではないか、両目でしっかり見る。

 間違いなくウルオメアだ。


「よっしゃああああああああああああああああ!!!」


 胸の奥から喜びの感情が溢れ出して、今日一番の雄叫びを上げる。

 やっとウルオメアが来てくれた!

 これで5体揃ったからウルオメアをLRに出来る!


「おっと、そうだった」


 俺はスクショを撮って、そのスクショに『5体揃いました^^』という言葉を添えて投下した。


「よし」


 満足した俺は早速ウルオメアをLRにしようとして、思い出す。


「そういえばウルオメアのステータス見てないな」


 ウルオメアのステータスを見てないことを思い出した俺は、まずステータスを見ようと決めた。

 ガチャ画面から所持キャラクター一覧に切り替える。


「おぉ!」


 そこにはウルオメアのアイコンが5体並んでいた。

 間違いなくウルオメアを5体揃えたんだと実感する。

 そして俺はウルオメアのアイコンをタップ。

 すると、ウルオメアのステータス画面に切り替わる。


名:ウルオメア・ファゴアット

Rare:UR

Lv:1/100

HP:5000 MP:10000

属性:【創】【滅】

【筋力:A+】【敏捷:A+】【器用:S】

【耐久:A】【魔力:S】【幸運:S】


「なるほどなるほど」


 俺は攻略wikiで見たステータスについて思い出しながら見る。


 名前はそのキャラクターの名前。

 Rareはキャラクターのレアリティ。

 ちゃんとURになっている。


 Lvはキャラクターレベル。

 要らない装備や素材やキャラクターを消費することによって上げられる。

 URのレベル上限は100だ。

 神化で110。

 超越神化で120。

 ちなみに他のレアリティのレベル上限はSSRが90、SRが80、Rが70、Nが60だ。


 HPとMPはそのまんま体力量と魔力量。

 属性はそのキャラクターが使う魔法の属性。

 属性は火、風、土、水、光、闇、創、滅の全部で8種類。

 原作では火、風、土、水を基本属性。

 光と闇を特殊属性。

 創と滅を希少属性と分類されていて、後半になるほど珍しく強力になっていく。

 ゲームでの相性は基本属性が火→風→土→水→火。

 特殊属性と希少属性は対になっている。


 そして、ウルオメアはなんと希少属性ふたつ持ちである。

 間違いなくチートキャラだ。

 その為、ウルオメアは通称【創滅女帝】と呼ばれている。


 次に筋力などのステータス。

 下から【C】【C+】【B】【B+】【A】【A+】【S】【S+】【EX】と上がっていく。

 EXなんて測定不能レベルで、そんなステータスを持っているキャラクターなんてあまり居ない。

 URのウルオメアでさえSが一番上だ。

 ちなみに耐久と魔力の数値によってHPとMPが決まっている。

 他のステータスの詳細な数値はマスクデータだ。


「それにしてもウルオメアは強いなぁ。やっぱり原作最強キャラなだけある」


 ちなみにNの王国下級兵士のステータスがこれ。


名:王国下級兵士

Rare:N

Lv:1/60

HP:3500 MP:3000

属性:【火】

【筋力:C+】【敏捷:C】【器用:C】

【耐久:C+】【魔力:C】【幸運:C】 


 流石に弱い。

 こうして見るとウルオメアのチート具合が分かる。

 でも、これはURのレベル1の状態だ。

 LRにしてレベルを上げて超越神化までしたらどれほど強くなるのだろうか。


「すごいワクワクするな!」


 早速、俺はウルオメアをLRにさせようとして画面を戻そうとすると――


『【ウルオメア・ファゴアット】になりますか? はい/いいえ』


 という確認画面が出てきた。


「なんだこれ?」


 もしかして編成のメインキャラクターにするのかの確認か?

 それにしても文が変だが。


「こういう誤字が残ってんだな」


 あとで不具合報告をしておこうと思いながら、どうせ編成に組み込むんだから『はい』を選択しておこうと考えた俺は『はい』をタップする。


『本当によろしいですか? はい/いいえ』


 再び確認画面が表示された。


「わざわざ二重に確認することか?」


 不思議に思いつつも再び『はい』をタップ。

 その瞬間、目の前が暗転した。

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