異世界転生した俺は最速クリアをしてしまうだろう

まだ未定

第1話 力の果て

ぼやけた視界が次第に鮮明になってゆく。おぼろげな闇に影を捉えた。

「やあ、君もまた力を求めに来たのかね。施術は成功したよ。後は目覚めを待つだけだ……」

影の穏やかな口調に誘われるまま俺はまた眠りについた。


意識が朦朧とする中目が覚めた時、周囲にはゴブリン100匹に囲まれていた。どうやら俺はここで死ぬらしい。恐怖に駆られた心からはそう思うしかなかった。そんな中1匹の小さなゴブリンが駆け寄ってきた。

「人間遊ぼ遊ぼ!」

乾いた手で触れられた時思わず身震いをした。

「あ、人間ごめんねごめんね。怖い怖い?」

まともな精神状態を保ってはいられなかった。ただこの状況をどう打破すれば良いのか、俺には全くどうしようもなかった。そこに更に別の大きなゴブリンが寄ってきた。そのゴブリンは何やら声を発した後急に手を出してきた。死を覚悟した刹那全てを思い出したのだ。記憶が戻ったところで体の自由が効くようになった。

俺は片手でゴブリンの手を止めた。そしてそのまま腕を捻り肩ごともぎ取る。片腕を無くした大きなゴブリンは泣くながらうずくまった。次々とゴブリン達のどよめきが聞こえる。

「俺は強い。」

誰にも聞こえないように囁いた。その確信が自信となり力として発現した。

「獄炎!」

俺の放った炎が地を這い、天へ舞い上がりゴブリンどもを1匹残らず焼却した。燃えたゴブリンの臭いが鼻についたが構わなかった。

「俺は強い。」

ただ俺はもう一度そう呟いた。


その後俺は人間に会いたい一心で長い旅に出た。だがその旅の道中一度も人間に出会わなかった。どうやら遺跡の壁画によると、この世界の人間は過去に滅んでしまったらしい。せめて言葉の分かる生き物がいればと思うが、もはや後悔など無意味であることは誰よりも理解している。最強とは空しいものである。ここで俺の物語は終焉を迎えた。


                                THE END



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

異世界転生した俺は最速クリアをしてしまうだろう まだ未定 @poyoooo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ